2009 年 10 月 18 日 のアーカイブ

五島のはなし(50)

音楽のジャンルに「GOTO-POP(五島ポップ)」
というものがあります。
あるのか?
って思うでしょう。
あるんです。
・・・僕もさっき知ったんですが。

五島人の五島弁による五島のためのバンド 
「ベベンコビッチオーケストラ」

以下、彼ら自身の紹介文(その下に僕の直訳文)↓

ポジティブバカなGOTO-POPをオラブ~バンド!!
あがんハートをもさる あがどんがソウルをカッパっぞぉ
~オージョ コージョすっぞな~

ポジティブバカな五島ポップを叫ぶバンド!!
君のハートを奪う、お前らのソウルを盗む、
~もうほんとにまいっちゃうぜ~

ぜひ聴いてみてください!
僕はほんとにハートを奪われて、まいっちゃいました。

*ベベンコビッチオーケストラのブログ
http://blog.goo.ne.jp/bebencobicci
*ベベンコビッチオーケストラの歌はこちら
http://www.youtube.com/user/bebencobicci

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薄組・熊埜御堂由香 09年10月18日放送

せつない時計


せつない時計

同じテンポで時を刻んでいたふたつの時計がズレはじめ
やがて、どちらかが先に止まる。
アーティスト、フェリックス・ゴンザレス・トレスの代表作、
「パーフェクト・ラバーズ」。

どんなに完璧な恋人たちも、ずっと一緒にはいられない。
時間の残酷さを、時計は告げる。

ありきたりな掛け時計なのに
止まった時計の隣で動き続ける姿はせつなくて
恋人に先立たれたトレスの心と重なる。

02-Felix3


旅する時間 気休めの薬 

自分の体重とぴったり同じ重量のキャンディが床に
散りばめられている。

フェリックス・ゴンザレス・トレスの
「気休めの薬」という作品だ。

来場者は、ひとりひとつ、キャンディを持ち帰ることができる。
そのキャンディがポケットの中で旅する時間も、
どこかの国で、誰かの口の中でとけていく時間も、
彼の作品の一部なのだ。

常に持ち去られ補充されるキャンディは
彼の作品を継続させようとする人々の意思によって
作者の死後も、活発に活動している。

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薄組・石橋涼子 09年10月18日放送

時を越える


時を越える アントニオ・ガウディ

 人は2つのタイプにわかれる。
 ことばの人と行動の人だ。
 私は後者に属する。

そう語ったのは、スペインの建築家
アントニオ・ガウディ。
そう、あのサグラダ・ファミリア教会の設計者。

幼いころから手先が器用だった彼は
自らの手で作りながら設計することを好んだ。
一方で、自らの考えを伝えたり、
他人の理解を得るために
文章や図面を書くことは大の苦手。

おかげで、着工から120年という膨大な時間の経つ
サグラダ・ファミリアは、今もまだ建築中だ。
なにしろ、ガウディ先生は
たった一枚のスケッチしか
ヒントを残してくれなかったのだから。

晩年、完成までの年月を聞かれるたびに、
彼はこう言ったのだった。

 神様は完成をお急ぎではないよ。

きっと、人は2つのタイプにわかれる。
時間に囚われる人と
時間を越える人。
そして、後者にだけ与えられるのが、
未来に遺せる創造力なのだろう。

400年前からの手紙


400年前からの手紙 俵屋宗達

琳派(りんぱ)の創始者であり、
国宝「風神雷神図」を描いた、俵屋宗達。

その生涯は
自伝もなく、日記もなく、謎に包まれている。
自筆で残されているのは筍のお礼状一通だけだ。

 醍醐のむしたけ、五本送り下され、かたじけなく存じ候

彼が生きた時代から約400年。
自分の記録を残さず、作品のみを残した俵屋宗達が
いっそ潔く見えてくる。

愛の賞味期限


愛の賞味期限 鈴木三重吉

愛情は最高の調味料。
食べ物に対する愛情もその料理をおいしくする。

作家 鈴木三重吉の
湯豆腐に対する愛情は半端なものではなかった。

レシピを訊ねる友人に
4メートル近い巻物に
延々と湯豆腐へのこだわりを書いて送った。

そこまで愛情をそそがれたら、
湯豆腐だってとびきりおいしくなる以外に道は無い。

止まっている時間


止まっている時間 遠藤新(あらた)

1923年9月1日午前11時58分32秒。
その日、そのとき
後に関東大震災と呼ばれるマグニチュード7.9の揺れが起こった。

そして、その日、その時。
帝国ホテルの竣工記念パーティーが
まさに始まろうとしていた。

避難しようと慌てふためく人々の
悲鳴と怒号が飛び交うなか
ひとり、時間がとまったかのように、
ホールで大の字になって寝ている男がいた。

遠藤新。

天才建築家フランク・ロイド・ライトの片腕として
また、ライトが去った後の総責任者として
帝国ホテルを完成させた男である。

彼は言った。

この広い東京のなかで、今、最も安全な場所がここだ。

事実、崩壊と復興でめまぐるしい東京の街に
毅然と建ち続ける は
そこだけ時間が止まっているようだった。

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薄組・薄景子 09年10月18日放送

魂の待ち時間


魂の待ち時間 ミヒャエル・エンデ

時間どろぼうを描いた「モモ」で知られる、
ドイツ人作家、ミヒャエル・エンデ。
彼のコラムに、インディアンの興味深い話がある。

中米奥地の発掘調査団が
荷物の運搬役としてインディアンのグループを雇ったときのこと。

初日からすべり出し好調。
作業は予想以上にすすむが、
5日目、インディアンたちは地べたに座り込み、
無言のまま、ぴたりと動かなくなった。

叱っても、脅しても、全く動じない。
調査団も根をあげたその2日後、彼らは突然立ち上がり、
荷物を担ぎ上げ、予定の道を歩き出したという。

ずっと後になって、
インディアンのひとりが初めて答えを明かした。

 「わしらの魂があとから追いつくのを、
 待っておらねばなりませんでした」

スピード化、効率化、24時間営業。
次なる便利を求めて、前へ走り続ける文明社会に
もはやゴールは存在しない。

エンデが空想した「時間どろぼう」が
現実となった今。
私たちが、腰をすえて
置き去りにした魂を待つには、果たして何年かかるだろう。

見つかる時間


見つかる時間 森 瑶子

あの17年間は、なんだったんだろう。

与えられたレールにのって
大嫌いだったヴァイオリンを
泣きながら練習した日々。
しかしこの先、一生ガマンすることに耐え切れず、
17年のヴァイオリン人生を捨てる。

その後、彼女は
誰からも教えられたことのない小説を
すらりと書き上げた。

森瑶子38歳。
処女作「情事」、すばる文学賞受賞。

彼女は言う。

 「何かを好きで好きでたまらないほど、
 好きになれるのは、天賦の才なのだ」

その「何か」が見つかるまでの時間は、
人それぞれ、
寿命のように定められているのかもしれない。

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