三島邦彦 14年2月8日放送


Richard Masoner
寒さとあたたかさについて 北大路欣也

映画「八甲田山」。
明治時代の青森で起きた軍隊の遭難事件を描いたこの大作は、
撮影の過酷さに逃げ出す役者が後を絶たなかったという。

そのクライマックス。
棺に入った北大路欣也の遺体に、高倉健が対面するシーン。
高倉健だけを撮る予定だったが、北大路は棺に入ることを希望した。

棺を開いた瞬間、
北大路の存在を知らされていなかった高倉健の目から、
本物の涙があふれた。せりふはもう、いらなかった。

3年に及ぶ過酷な撮影をともにすごした仲間との、
氷点下15度の世界での、あたたかな連帯。
ここに、日本映画史上の名シーンが生まれた。。

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