2014 年 4 月 25 日 のアーカイブ

一倉宏さんの歌曲集「枕草子」リリース記念コンサート

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歌曲集『枕草子』完成記念コンサート開催決定!
上田知華+一倉宏による新訳で誕生した歌曲『枕草子』初演!
清少納言のモダンな感性を語り、感じるコンサート

日時:2014年5月26日(月)
会場:サントリーホール/ブルーローズ

出演:メゾソプラノ 波多野睦美
   ソプラノ 鈴木美紀子
   ピアノ 兼松衆
   チェロ 武澤秀平
   語り 清水理沙
   お話 一倉宏、アーサー・ビナード

チケット料金:
6,000円(全席指定・税込) ※CD付チケット8,500円

お問合せ:ムジカキアラ 03-5739-1739 info@musicachiara.com
     http://www.musicachiara.com/blog/2014/05/post_19.html

主催:ムジカキアラ
企画制作:C U E Entertainment
協力:一倉広告制作所

協賛:積水ハウス




<歌曲集「枕草子」・ライナーノーツ>


 上田知華さんから、ポップスとクラシックの垣根を越えて日本語
の「歌」をつくりたいというお誘いを受けたとき、その可能性はど
こにあるのかと考えあぐねました。現在、最も親しまれている「歌」
=ポップスは、ほとんどがラブソングです。ラブソングには、老若
男女を問わない普遍的な共感と昂揚があります。それはそれで故の
あることであり、ポップスとは文字通り大衆性に深く根ざしたもの
だけに、その種の共感と昂揚に匹敵するのは至難の技に思えました。
けれど、ラブソングだけが「歌」なのだろうか。私たちにとって普
遍的な、生の感動はほかに、どこにあるのか。それを考えたはじめ
たとき、思い浮かんだのが清少納言の『枕草子』でした。
 たとえば、季節の移ろい、男女の仲に留まらぬ様々な人間関係、
衣食住の暮らしのディテール。美しいもの、愛しいもの、憧れるも
の、嫌いなもの、忘れがたいもの。それは、詩でも物語でもないけ
れど、きらめく生の讃歌でした。目の前にあるほどに印象的に、触
れられそうなほど具象的に、一人の女性によって千年の時を越えて
書き残されたそのことばの輝きは、奇跡と呼ぶしかありません。
 彼女はオシャレでした。コーディネイトが大切と喝破しました。
ファッションにもステーショナリーにもこだわりました。センスに
は自信がありました。そしてモダンでした。新しいもの、渡来のも
のに魅かれました。粗野や粗暴が大嫌いでした。いまのダサいに通
じます。自然と風土について綴り、草花や鳥や虫や、そのマイ・フ
ェバリットをリストに、ひとつひとつの名を書き留めました。吹き
過ぎる嵐の痕跡や真冬の寒さまでも賛美しました。いまのことばで
言えばエコロジーやスローライフ、生物の多様性。それがどんなに
豊かであるか。幼きもの、汚れなきもの、繊細なものたちを愛しま
した。この世界の、生命の、細部に宿る神を知っていました。
 清少納言の精神は現代にも生きています。快活にして美的、そし
て女性的なるものとして。これは単なるレトリックではありません。
世界的に「COOL」と評価される文化と風俗の先端にも、たとえば
宮崎駿作品のヒロイン像にも、清少納言的感受性、想像力、小さき
ものたちへの愛情が脈打っていると思われてなりません。
 この歌曲集では『枕草子』の任意の段をもとに、現代日本語とし
て通じる「翻訳」を試みたつもりです。段によってはほぼ原文のま
まを移植していますが、多くはエッセンスを拾うようにして「詞」
編んでいます。なるべく作詞者の創作を加えることなく、原作者
である清少納言が「もしも、その思いを現代の歌に編むとしたら」
という想像のもとに書き写しました。描写のディテールや息づかい
を大切に扱うよう努めました。もとより、それも虚構であり恣意の
作業であるに違いありません。叶うなら、清少納言そのひとがタイ
ムマシンに乗って訪ねてきてくれて、どのような表情でこれを聴い
てくれるかを知りたいと思うばかりです。

                       一倉 宏

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