2014 年 4 月 6 日 のアーカイブ

大友美有紀 14年4月6日放送

140406-01

「長新太」ペンネーム

絵本画家、イラストレータ、漫画家。
多彩な肩書きを持つ、ナンセンスの作家。
長新太。

最初の仕事は、映画の看板描き。
22歳の時、「東京日日新聞」の懸賞漫画に応募。
「ロング狂」という作品が当選する。
ロングスカートがテーマの作品で、
「ロング」で「長」、新人だから「新」、
太くたくましくいきなさいと「太」。
当時のデスクが命名したペンネームだった。

以来77歳で亡くなるまで、長新太として
絵を描き続けた。

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大友美有紀 14年4月6日放送

140406-02

「長新太」安い絵本

絵本作家、長新太。
生涯で手がけた子どもの本は400冊を越える。
信じられないほどの多作。
73年のエッセイで、安い絵本をつくりたいと言っている。

 絵が良くて、高価な絵本もいいと思うけれど、
 わたしは少し印刷が悪くても、
 というより、たくさんのインクを使用しなくて、
 二色ぐらいでも、それから少しぐらい紙がわるくとも、
 安い絵本がもっとつくれないかな、と思っているのです。
 本屋さんの前のクルクル廻るケースに入っている、
 いわゆる「百円絵本」によいものが出てきてほしいのです。
 そうして百円絵本が子どもたちに広く読まれることをねがう。
 絵本は百円ぐらいで買えなくてはいけない、と思うのです。

多作の影には、こんなねがいが隠れていたのかもしれない。

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大友美有紀 14年4月6日放送

140406-03
Norihiro Kataoka
「長新太」ナンセンス

ナンセンスの絵本作家、長新太。
彼の絵本を見て、なんで子どもが喜ぶのかわからない、
という母親がいっぱいいるという。
たまに自宅にまで電話がかかってきて、
「動物の色が普通と違う」と言われることもあった。
彼は、絵本はお母さん方にわからなければいけない、という。
子どもの本は、お母さん経由で子どもに届くことが多いからだ。

 ぼくの本がわからない、というお母さん方が、
 こわいわけよ。
 それは、ぼくの絵本が子どもに届かないことになるし、
 もっと言うと、ナンセンスとかユーモアを、
 おとながわかりにくくて、子どもに届けない、
 ということになる。
 ところがほんとうは子どもの方がすぐわかっちゃうわけ。

長新太のナンセンスは日常的なものではなく、
抽象であって、シュールレアリズム的なナンセンスだ。
理解するのではなく、楽しむものである。

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大友美有紀 14年4月6日放送

140406-04

「長新太」生理的にここちよい

絵本作家、長新太の「アブアアとアブブブ」という本。
アブの兄弟が、巻いてある紙をパッと誰かの顔の前にたらす。
アブたちはこれをやると気持ちがスーッとする。

 生理的に心地よいということが、
 なににおいてもいちばん大切じゃないか
 という気持ちが、ぼくは非常に強いわけよ。
 それによって、いろいろなことがことが
 決まるんじゃないかと思うんです。

色彩やフォルムも、意識してつくり出すというよりは、
川の流れみたいに自然にそうなってくる、
ひとりでにそうなってくるものこそ大事にしたいと考えていた。

ちなみに、アブアアがおとうとで、アブブブがおにいさん。

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大友美有紀 14年4月6日放送

140406-05
izamu
「長新太」アニミズム

ナンセンスの絵本作家、長新太。
ある講演会で、生まれ変わったら何になりたいか、という質問に、
イカやタコが好きだから、イカやタコになりたいね、と答えた。
それは冗談でなく、本気に近い気持ち。
幼い子が「大きくなったら新幹線になりたい」という気持ちと同じようなもの。
長新太の発想は、自然界のすべてのものに霊魂や精霊が宿るという
「アニミズム」のようなものだ。

 大げさにいうと、机も椅子もコップにしてもフォークにしても
 すべて命があるという感覚があって、
 別に人間だけがいきてるんじゃない、という感じが
 ぼくは非常に強いです。

人間の内蔵だって自分でコントロールできない。
みんなそれぞれ生きていて、自我意識があると思っている。
彼の本には、お尻だけ「ポコリ」とはずれて外出してしまったり、
心臓がとんでってテレビ局に行ってしまったり、
下半身だけが先に歩き出してしまうお話もある。

長新太を本当に理解できるのは、子どもだけかもしれない。

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大友美有紀 14年4月6日放送

140406-06

「長新太」ちへいせんのみえるところ

ナンセンスの絵本作家、長新太は、
だだっ広いところが好きだった。

彼の作品には地平線、水平線が多い。

紙がある。
刷毛でうすいクリーム色の下地をつくる。
そして、横に一本線を引く。
漫画のコマ割りの線を描く。
そして、コマに横線を一本引く。

絵本「ちへいせんのみえるところ」は、
全ページ、同じ位置に地平線が描かれている。
けれども全部の絵が別の絵だ。
ページをめくると、同じようで微妙に違う地平線。
そこに男の子が出てきたり、ゾウが出てきたり、船が出てきたり。

言葉は、「でました」だけ。

何が出てくるか、ページをめくるたびにドキドキする。
読む人のドキドキを思い浮かべて、
長新太はニヤニヤしていたかもしれない。

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大友美有紀 14年4月6日放送

140406-07

「長新太」絵本の作り方

絵本作家、長新太のイラストエッセイ、
「絵本のつくりかた」お料理風に

材料は、
青空たっぷり
渡り鳥、少々
そよ風、ひと吹き
地平線または水平線、一本
麦畑、たっぷり
少年、一人
湖、一ケ
魚(マス)一匹
ゾウアザラシ(オス)一頭

以上にナンセンス印のエスプリ少々

全体の味つけは、甘からず辛からず
これがコツ

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大友美有紀 14年4月6日放送

140406-08

「長新太」仕事の理想

ナンセンスの絵本作家、長新太。
仕事の理想は、と問われると。

 永久に未完成ということ。
 人々はすぐに完成されたものを
 性急に追求しがちだが、
 それは僕の信念に反する。
 少しばかり不安定でも、
 その作家の香り、あるいは匂い、
 つまりエスプリみたいなものが、
 みるものに共感をおぼえさせれば、
 それで結構と思っている。

享年77歳。
遺作となった絵本「ころころにゃーん」は、
ピンク一色で描かれていた。

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