2014 年 4 月 19 日 のアーカイブ

森由里佳 14年4月19日放送

140419-01

先駆者たち① 平賀源内

 ああ非常の人 非常のことを好み
 行いこれ非常 何ぞ非常に死するや

平賀源内の墓碑に友人の杉田玄白はこう記し、
稀代の天才の死を惜しんだ。

次々と新しいものに興味を持ち、
その世界に挑戦していく源内を、
人々は「非常の人」、型破りの人間と呼んだ。

医師であり画家であり、発明家。
脚本家、地質学者、事業家。
そして日本で最初のコピーライター。

いくつ肩書きをつけても追いつかない
桁外れのマルチ人間、平賀源内は
しかし、時代に受け入れられることはなかったという。

いや、そうではない。
時代が平賀源内に追いつけなかったのだ。

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森由里佳 14年4月19日放送

140419-02

先駆者たち② 杉田玄白

日本で初めて西洋の医学書を翻訳した杉田玄白は、
その苦労をつづった『蘭学事始』の中で、こう述べた。

 はじめて唱ふる時にあたりては、
 なかなか後のそしりを恐るゝやうなる碌々たる了簡にて
 企事は出来ぬものなり

新しいことをするにあたっては、
やる前から後の批判を恐れるような平凡な考えでは、
一歩も踏み出すことはできない。

200年前、未知への興奮と情熱をたよりに
途方もない企事をやりとげた先駆者が、
今、この時代に私たちの背中を押してくれる。

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飯國なつき 14年4月19日放送

140419-03

先駆者たち③氷室冴子

氷室冴子という少女文学の名手がいた。
ジブリによって映画化された、「海がきこえる」の原作者だ。

もっと子供だったら気付かないだろう、
もっと大人であれば乗り越えられただろう、
日常の小さな“事件”たち。

そんな事柄にゆれる少女たちの姿が、
ときに繊細にときにコミカルに描かれる。

物語を支えるのは、作品によって自由自在に変わる言葉や文体だ。
彼女の、言葉に対する執着心は、
「ある作家の“句読点の打ち方”に惚れ込むあまり、
追っかけまでしていた」
というエピソードからも感じられる。

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飯國なつき 14年4月19日放送

140419-04

先駆者たち④ レジナルド・フェッセンデン

いま、あなたが聞いているラジオ放送。
その発祥をご存知だろうか。

約100年前のクリスマス・イブ。
大西洋を航行していたある貨物船の乗組員たちは
その日の果物相場をモールス信号で聞いていた。

ところが、その最中に
無線機はいきなり音楽をキャッチした。
モールス信号ではない、本物の蓄音機から流れる曲だった。
つづいてバイオリンの生演奏、さらに歌声まで。

その声の主こそ
カナダの発明家レジナルド・フェッセンデン。
世界で初めて音声信号の無線通信、
つまりラジオ放送に成功したといわれる人物だった。

しかし、当時、彼の起こした奇跡は、
ほとんど話題にならず、忘れ去られてしまう。

当時、ラジオの受信機など誰も持っておらず
せっかく電波を発信しても聴くことができるのは
大西洋沿岸を行く船の無線技士だけだったからだ。

今この瞬間に起きているかもしれない小さな奇跡がある。
私たちのアンテナは、それをキャッチできるだろうか。

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