2014 年 10 月 19 日 のアーカイブ

飯國なつき 14年10月19日放送

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あの人の酒① 酒杉浦日向子の昼酒

江戸風俗研究家の杉浦日向子さん。
酒を愛した彼女の著書「ソバ屋で憩う」に、こんな一節がある。


 ソバ屋で憩う、昼酒の楽しみを知ってしまうと、
 すっかり暮れてから外で飲むのが淋しくなる。
 いまだ明るいうちに、ほろ酔いかげんで八百屋や総菜屋を巡って、
 翌日のめしの仕入れをしながら着く家路は、
 今日をたしかに過ごした張り合いがある。



一日をお酒で終わらせるのではなく、
昼酒の余韻を感じながら、買い物をぶらぶらと楽しむ。
粋を愛する、杉浦さんらしい飲み方だ。

たまには、きもちよく昼酒を楽しんでみませんか。


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飯國なつき 14年10月19日放送

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あの人の酒② ヘミングウェイの愛したダイキリ

作家の思索に触れたい時、
その人の愛した酒を飲むのも一興だ。

飲みっぷりのよい作家のひとり、へミングウェイ。 
原稿執筆中はしらふを守り抜いたが、
いざ仕事が片付くと街に繰り出し、心ゆくまで酒を飲んだ。
お気に入りの一杯は、ラム酒の量をダブルにし、
砂糖を抜いた特注のフローズン・ダイキリ。

人生のおよそ3分の1を過ごした灼熱の国、キューバでは
清涼なダイキリがよく合っただろう。

彼が通いつめたバー、「ラ・フロリディータ」では、
いまでも、件の酒を味わうことができる。


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飯國なつき 14年10月19日放送

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あの人の酒③ ブラジルの濃厚な酒、カイピリーニャ

世界を放浪する漫画家、ヤマザキマリ。

イタリア、エジプト、ポルトガル、アメリカ…
世界中を移り住む彼女が、ときどき無性に行きたくなる国は、
ブラジルだ。

ブラジルの暑い屋外で、日差しに照らされながら、
“カイピリーニャ”という、40度を超す酒をあおるのが、
最高だという。
魚介料理のムケッカをほおばりながらだと、
「何杯飲んでも酔っぱらわない」と、ヤマザキさんは語る。

その時の様子を描いたエッセイ漫画では、
ページから、ブラジルの熱気が濃厚に立ちのぼる。

陽気な国ブラジルは、酒までエネルギッシュなのだ。


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森由里佳 14年10月19日放送

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あの人の酒④ 田村隆一

詩人の田村隆一は、紅葉が美しい色をしているのは、
酒が染み込んでいるからだと考えた。

 どうして枯葉にはいろいろな色がついているのだろう
 葡萄酒の色、琥珀の色、モルトのゴールデン・メロンの色
 きっと風によっては飲む酒がちがうのかもしれない


田村の目には、
この色彩が完璧な美として映った。
それは、この詩のタイトルによく表れている。
「秋の黄金分割」。


酒と紅葉に酔いしれる、きもちのいい秋が来た。


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森由里佳 14年10月19日放送

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あの人の酒⑤ レイモンド・チャンドラー

酒を小道具に使わせたら右に出るものはいないと言われる作家、
レイモンド・チャンドラー。

「長いお別れ」「大いなる眠り」など彼の作品は、
作家の村上春樹を始め、今も世界中の人々に愛されている。

チャンドラーに、こんな言葉がある。

 良き物語はひねり出すものではない。蒸留により生み出されるものだ。

チャンドラーは、その物語のひとつひとつを、
ウイスキーのようにじっくりと熟成させ、数々の名作を生み出した。


酒と読書に酔いしれる、きもちのいい秋が来た。


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森由里佳 14年10月19日放送

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あの人の酒⑥ ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン

言わずと知れた天才、
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン。

彼は、こんな言葉を遺している。

 一杯のコーヒーはインスピレーションを与え、
 一杯のブランデーは苦悩を取り除く。


難聴など、苦悩の多かったベートーヴェン。
彼の名言「苦悩を突き抜ければ、歓喜に至る」は、あまりにも有名だ。

誰もが知る名曲、交響曲第九番” 歓喜の歌”の誕生には、
幾杯かのブランデーが、一役買っているかもしれない。


酒と音楽に酔いしれる、きもちのいい秋が来た。


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蛭田瑞穂 14年10月19日放送

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あの人の酒⑦ 秋刀魚の味

小津安二郎の映画「秋刀魚の味」。

映画のラスト、行きつけのバーに
ひとりで訪れた笠智衆はウイスキーを注文する。
「水割りにしますか?」と尋ねる店のママに
「いや、そのままでいい」。

それは娘の結婚式を見届けた夜だった。

 「今日はどちらのお帰り?お葬式ですか?」
 「うん、まあ、そんなもんだよ」



ウイスキーには飲む人の人生が溶け込む。
それがウイスキーの味をいっそう深くする。


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蛭田瑞穂 14年10月19日放送

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あの人の酒⑧ 八十日間世界一周

1956年に公開されたアメリカ映画
「八十日間世界一周」にこんな場面がある。

ロンドンの会員制クラブで朝刊を読む紳士の元に
スコッチウイスキーと氷が運ばれる。

グラスをテーブルに置き、「氷は?」と尋ねる給仕。
紳士は答える。
「氷?氷はけっこう。私は白熊かね?」

生粋の英国紳士はウイスキーを
ストレート以外で飲まない。
それは流儀である。流儀は法律より重たい。


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