2016 年 2 月 21 日 のアーカイブ

茂木彩海 16年2月21日放送

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お酒のはなし 田村隆一

アガサ・クリスティーやエラリー・クイーンなど
海外ミステリーの翻訳家としても名高い詩人、田村隆一。

生粋のお酒好きとしても有名で、朝食に赤ワインとステーキを嗜んで、
午後からはお気に入りのウイスキー、オールドパー
の水割りを飲んでいたと言われている。

そんな彼が残したお酒にまつわる哲学が、こちら。

 青年の酒、壮年の酒、老年の酒。
 その節がわりに、車窓の風景も変わってくる。
 酒を飲むことは旅をすることだ。


次はどんな景色を見に行こう。
そんな気持ちで今宵のお酒を決めるのも悪くない


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茂木彩海 16年2月21日放送

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お酒のはなし マダム・リリー

007シリーズの中で愛されているシャンパーニュがある。
銘柄は「ボランジェ」。ジェームスボンドが英国紳士でなければならないように、
このシャンパンも、英国王室御用達の認定を受けている。

この「ボランジェ」の味を守ったのが、
5代目当主の妻、エリザベス・リリー・ボランジェ。通称マダム・リリー。
夫の死後、第二次世界大戦下でドイツ軍に占領されたシャンパーニュ地方の農園を
ただ一人残った従業員と守り続けた。

マダム・リリーは言う。

 楽しい時や悲しい時、シャンパーニュをいただきます。
 時々は一人の時にも。仲間と一緒の時は必須です。
 お腹がすいていない時はちょっぴりたしなみ、空腹のときには飲むのです。


彼女にとって生活の一部となっているシャンパンは
愛する人との思い出そのものなのだろう。


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小野麻利江 16年2月21日放送

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お酒のはなし 李白と杜甫

李自一斗詩百篇(りじはいっと、しひゃくへん)

中国・唐の時代の詩人、杜甫が詠んだ『飲中八仙歌』。
その中で最も有名なこの一行によって、
同じく唐の詩人・李白は
酒の仙人「酒仙」の名を欲しいままにしている。

しかし実は杜甫も、李白に負けず劣らず酒好きだったと言われている。
杜甫がつくった1400首の中で、酒にちなんだ詩は300首。
李白がつくった1000首の中で、酒の詩は170首。
計算してみると、李白よりも多い割合で、杜甫は酒を詠っている。

特に『曲江』という漢詩は、
杜甫が時の皇帝・粛宗に生真面目に進言して怒りに触れ、
朝廷に居場所を無くしかけた際に詠まれたとされる詩。

 朝回日日典春衣(ちょうよりかえって ひび しゅんいをてんす)
 毎日江頭盡酔歸(まいにちこうとう よいをつくしてかえる)

朝廷を退出すると、毎日春の着物を質に入れ、
そのお金で曲江の川のほとりで酒を飲んで帰ってくる。
酒で憂さを晴らすさまを、切々と詠う杜甫。
酒も詩も、生きる糧。
そう訴えているように見える。


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薄景子 16年2月21日放送

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お酒のはなし フランソワーズ・サガン

フランスの小説家、フランソワーズ・サガン。
処女作『悲しみよこんにちは』が世界的ベストセラーとなり、
18歳にして莫大な富と名声を手に入れる。

その作品以上に注目を浴びたのが
彼女の破天荒な生き方だった。
桁違いのギャンブル、奔放な恋、
生死をさまよった事故、2度の結婚と離婚…。
その生涯は、愛と孤独に向き合うものだった。

そんなサガンがのこした言葉。

 昔は、人と知り合うためにお酒を飲んでいたものよ。
 今は、そういう人たちを忘れるために飲んでいるの。


お酒はいつでも、愛と孤独のそばにいる。


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薄景子 16年2月21日放送

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お酒のはなし ベンジャミン・フランクリン

アメリカ合衆国、独立の立役者、
ベンジャミン・フランクリン。

政治家としてだけでなく、
出版業者、文筆家、科学者、発明家など、
さまざまな分野で活躍し、
新聞の発行や、大学の創設、
雷が電気であることの証明など、多彩な業績を後世にのこした。

そんな彼が愛したのがワイン。
量こそは飲まなかったというが
酒の理解者として、数々の名言をのこしている。

 ワインの中には知恵がある。ビールの中には自由がある。

なるほど、フランクリンの有り余る好奇心は
酒を飲みながら熟成されたのかもしれない。
さらには、こんな言葉も。

 神が人間の肘を今の位置につくったからこそ
 グラスがちょうど口のところに来て楽に飲めるのだ。


ちょっと強引だが、神の仕業といわれたら、もう飲むしかないだろう。
そして、さらにはこんな名言も。

 酒をおいしく飲めないところに良い人生もない。

フランクリンの愛すべき屁理屈は
きょうも誰かの一杯を、きっと幸せにしてくれる。


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石橋涼子 16年2月21日放送

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お酒のはなし ゲーテとブレンターノ家

文豪であるとともに、酒豪であったゲーテ。

彼と親交が深かったブレンターノ男爵家の別荘は
ブドウ畑の中にあり、敷地には醸造所があり、
当然のように芸術家たちの集会所になっていた。

1814年9月、ゲーテはこの別荘に滞在し
詩作にふけっていた。
そのとき歌われた作品の一節に、こうある。

 青春はワインがなくても酔えるもの
 老年はよいワインで若さをとりもどす


この時、ゲーテは65歳。
若さをとりもどしてくれるよいワインとは、
もちろんブレンターノ家の白ワインのことだ。

いつしかブレンターノ家の白ワインは
ゲーテ・ワインと呼ばれて人気を集めるようになり、
今でもドイツの小さな村でつくり続けられている。


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熊埜御堂由香 16年2月21日放送

160221-07 ジョニヲ
お酒のはなし 川上弘美と居酒屋

芥川賞作家、川上弘美さん。
ベストセラーになった
「センセイの鞄」などお酒を飲む場面が
作品にたびたび登場する。

お酒について彼女が書いたエッセイにこんな書き出しがある。

 今までで一番多く足を踏み入れた店は
 本屋、次がスーパー、三番めは居酒屋だと思う。


そして、つぎの行ではそんな自分の人生を
 なんだか彩りにかける人生である、と語る。

けれど、川上さんが描くお酒とひとは、
わかる、わかると切なくて、何度読んでも引き込まれる。

それはまるで、
居酒屋で居合わせた知らないひとと思いがけず
深い話をしてしまった時みたいに。
日常のひとこまが
ほんのり色づくそんな感覚を呼び覚ましてくれる。


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熊埜御堂由香 16年2月21日放送

160221-08 VisualAge
お酒のはなし 談志師匠

2011年に亡くなってなお根強いファンの多い、
落語家、立川談志。

立川流を立ち上げて、弟子たちをふりまわす日々。
飲みにいくと、こんな調子で、くだを巻いた。
「芸人なら真っ当に働くな、泥棒しろ!でも俺の家はダメだぞ」
その発言は愛とユーモアに満ちていて
みんな談志師匠が大好きだった。

談志がお酒について
こんな名言を残している。

 酒が人間をダメにするんじゃない、
 酒とは、人間はもともとダメだってことを教えてくれるものなんだ。


もし彼がいまも生きていたらきっと弟子たちは
こう返すだろう。

談志師匠、
ダメだっていいじゃない、
まぁ一杯飲みましょうよ。


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