2018 年 9 月 2 日 のアーカイブ

大友美有紀 18年9月2日放送

180902-01

ロシアの昔話 コトフェイ

19世紀半ば、ロシアの昔話を蒐集した人物がいた。
アファナーシエフ。彼は昔話を知ることで、
最古の人々の暮らしを知ることができると考えた。
コトフェイという名の猫と暮らしていた。
「ねことキツネ」という昔話に登場する猫の名だ。

 いたずらな猫・コトフェイは、家を追い出されて森へ行く。
 そこでずる賢いキツネと結婚して、
 どんな獣もびくつかせるほどになった。

力のない庶民が生き抜くため知恵が、
ここに隠れているのかもしれない。

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大友美有紀 18年9月2日放送

180902-02

ロシアの昔話 プーシキン

ロシアの文豪、プーシキンも民話の編纂を行っている。
「ルスランとリュドミラ」の序章は、ばあやが語ってくれた
昔話をヒントにしたのではないかと言われている。

 入り江のほとりに樫の木があり、
 その樫の木には金の鎖がかかっている。
 金の鎖を伝って、ねこが歩く。
 のぼるときには昔話を語ります。
 おりるときには歌を歌います。

ねこが語る昔話は、お坊さんや寺男、お坊さんの娘が登場する。
爪を研いで皇帝に見せつけ「たいそう恐い」と思わせようとする。
昔話には、庶民の欲望が隠れている。
皇帝の護衛は昔話の語り手をむち打ったという。

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大友美有紀 18年9月2日放送

180902-03

ロシアの昔話 ドモヴォイじいさん

古代ロシアの地に住んでいたスラブ族の言い伝えには、
かまどの神様が登場する。
スラブ人にとって、家で大切な場所はかまどだった。
かまどの火は豊かさと安全としあわせの守り神だ。
その神が人格をあたえられてドモヴォイじいさんになった。

 小柄なずんぐりした老人
 半コートか青い裾長上着に赤い帯をしめている
 白いあごひげ
 髪の毛はもじゃもじゃ、全身毛むくじゃら
 かまどの後ろに住んでいる

ドモヴォイは、家を見張ってくれる。
家畜も守る。一家の富も守る。
でも、それだけじゃなくて、いたずらもする。
夜になると、馬のたてがみやしっぽ、一家の主のあごひげを
三つ編みにしたりする。
よその家のドモヴォイと戦うこともある。

日本にもかまどの神様がいる。
家の守り神であり、農耕の神様だ。
ドモヴォイじいさんと違って、
こちらはいたずらはしないようだ。

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大友美有紀 18年9月2日放送

180902-04

ロシアの昔話 眠り

ロシアの昔話では、主人公が手柄を立てる前や
後に眠っていることが多い。
眠りとは、冬のことではないかと考える歴史学者がいた。

 冬になると植物はすべて枯れてしまって
 死んでしまったようにみえる。
 春の雨が降ると、大地が目覚め
 緑と花々が芽吹く。

 
春と夏の実りは、主人公の手柄に見立てられる。
その後の長い冬が眠り。
雨と太陽のキスで目覚める。
昔話は、自然がつづる物語なのかもしれない。

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大友美有紀 18年9月2日放送

180902-05

ロシアの昔話 おんどりとめんどり

ロシアの昔話、おんどりとめんどり。
ふたりは森へクルミをとりにいく。
おんどりが木にのぼり、クルミをおとし、めんどりが拾う。
ところがクルミが目に当たって、片方がつぶれてしまう。
めんどりが泣いていると大貴族がやってきて
なぜ泣いているのかと聞く。
 
 おんどりが私の目をつぶしたのです。
 おんどりは、クルミの木がズボンを破ったせいだと答えます。
 クルミの木は、ヤギたちが足をかじったという。
 ヤギたちは、牧童が守ってくれないから。
 牧童は、おかみさんが祝祭日のクレープを
 食べさせてくれないから。
 おかみさんは、ブタがねり粉をこぼしたから。
 ブタは、オオカミが子ブタをさらったから。
 オオカミは、はらぺこだったから子ブタをさらった。
 これも神様のおぼしめしだという。

 
これは大貴族をバカにした話のようだ。
批判を口にできない市井の人々の、はけ口だったのかもしれない。

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大友美有紀 18年9月2日放送

180902-06

ロシアの昔話 バーバ・ヤガー

ロシアの昔話に出てくる、バーバ・ヤガー。

 深い森の中、にわとりの足の上に建つ小屋。
 必要なときに向きを変えることができる。
 その小屋のなか、いっぱいに寝ているのが
 バーバ・ヤガー。

バーバ・ヤガーの不思議なところは、
善にも悪にもなるところ。
ひとふりすると橋が現れる魔法のタオルをくれたかと思うと
さらってきた子どもをペチカで焼いて食べようとする。

いいおばあさんなのか、鬼婆なのか。
骨の足のバーバ・ヤガーは、臼にのっていて、
杵でこぎながら、箒で跡を消して去って行く。
優しくもあり恐ろしい、森そのものような存在だ。

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大友美有紀 18年9月2日放送

180902-07

ロシアの昔話 大きなカブ

カブが育ちすぎて抜けなくなる。
おじいさんがカブをひっぱり
おばあさんが助けにきて、
次に孫娘、犬がやってくる「大きなカブ」
ついに猫もネズミも手伝って、やっとカブは抜ける。

この昔話のバリエーションには
一本足が次々に助けに来るバージョンもある。

 足が一本登場し、続いて二本目、三本目と
 次々に足がやってくる。
 最初の足は犬をひっぱって、
 次の足は前の足をひっぱる、
 その次の足はその前の・・と続いていく。

なぜ足なのか。それは今では誰もわからない。
昔のロシアでは、大きな収穫を得るには
「足」が肝心だったのかもしれない。
「足」で大地を踏みしめ、家畜を追いかける。
「足」が活躍する暮らしだったのだろう。

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大友美有紀 18年9月2日放送

180902-08

ロシアの昔話 どこか知らんがそこへ行け、なにか知らんがそれをもってこい

ロシアの昔話
「どこか知らんがそこへ行け、なにか知らんがそれをもってこい」。
なんとも無責任な題名だ。
これは皇帝がりりしい若者を遠ざけるために言った言葉。
皇帝は若者が破滅するだろうと思ったのだ。
けれど若者は皇帝の知らない道を見つけ、知らない何かを探し出す。

 若者は森に入って、キジバトを見つける
 キジバトは、自分を殺さないで、家にもって帰って
 窓辺におけ、という。そしてうとうとしたら
 右手で思いきりぶてと。

はたして若者が思い切りぶつと、
キジバトはこの世のものとは思えぬ美しい娘に変わる。
荒唐無稽な題名と意外すぎる展開。
ロシアの昔話は、奥が深い。

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