大友美有紀 16年12月4日放送

161204-05

天才意匠家 小村雪岱 『挿絵画家』

鏡花本の装幀、資生堂の意匠部とキャリアを積んできた小村雪岱を、
さらに有名にしたのは新聞小説の挿絵だった。
邦枝完二作「おせん」。
江戸三美人と呼ばれた谷中の「笠森お仙」を
モデルにした悲恋物語だ。
画面に大きな余白を取る構成、
線の数を絞りキリリとした硬質な直線を引く。
新聞紙面全体の煩雑さの中に置かれる挿絵が、
如何に独自の空間を確保できるか考えぬいたかのようだ。

 挿絵の仕事はいわゆる「白と黒」だけの世界であるから
 彩色画とは違った何か特殊なものがあるのではいかという
 質問をしばしば受けるが、私はそれについて
 特別の苦心をした覚えはない。

雪岱は至って淡々としている。
静謐だが内に秘めた激しい情念を感じさせる。
彼の描く挿絵そのもののように。

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