茂木彩海 18年3月25日放送

180325-08

呼吸のはなし ぜいたくな呼吸

いい役者には空気を変える力があるとはよく聞くが、
その場の空気を一緒につくりあげる、それが舞台役者なのかもしれない。

歌舞伎役者、中村勘九郎は「四谷怪談」でお岩さんを
演じたときのことを、こう振り返る。

 舞台の上でお客さんの呼吸が聞こえるくらい集中してくれた。
 私はぜいたくにも舞台と客席がいまひとつになった瞬間を感じ取った。

一緒に息をのんで、一緒にホっとため息をつく。
その一体感こそが舞台を楽しむ醍醐味なのだろう。

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四宮拓真 18年3月24日放送

180324-01

デンマークの現金廃止

北欧・デンマークの通貨の名前をご存知だろうか。
デンマーク・クローネと言う。
クローネとは、王冠という意味だ。

このデンマーク・クローネ。
実はもう、ほとんど作られていない。
電子決済が広く普及したデンマークは、
政府が「2030年までの現金廃止」を宣言。
コインや紙幣の製造を、
ほとんどやめてしまったのだ。

デンマークの人々が暮らす、
現金がない世界。
日本ではまだ想像しにくいが、
そのうちご祝儀やお年玉も、ピッ!で済む時代が来るのだろうか。

「わたしからの気持ちです」「ピッ!」

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四宮拓真 18年3月24日放送

180324-02
hannaka  
スウェーデンの土曜日のお菓子

北欧・スウェーデンには、
ローダグスゴディス(lördagsgodis)という習慣がある。
直訳すると、「土曜日のお菓子」。

これ、平日はお菓子を我慢して、
土曜日だけは好きなだけ食べてもよい、というもの。
実際、土曜日のスウェーデンのスーパーには、
嬉しそうにお菓子を袋詰めしている子どもたちの姿を、たくさん見かける。

この、土曜日のスウェーデンのお菓子売り場。
よくよく見ると、ときどき大人も混ざっている。
それもそのはず、スウェーデン人はお菓子が大好き。
世界一お菓子を食べる国民なのだ。

さて、今日は土曜日。
あなたもローダグスゴディスしてみませんか?

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四宮拓真 18年3月24日放送

180324-03

エストニアのデジタル・ノマド・ビザ

いつか、海外で暮らし、働いてみたい。
そう思う人は少なくないだろう。
しかし、その願いを叶えるには「ビザ」が必要で、
ほとんどの場合、なかなか自由にはいかない。

北欧・バルト三国のひとつ、エストニアは、
先日画期的な構想を発表した。
その名も、デジタル・ノマド・ビザ。
デジタル機器を使って場所を選ばず仕事をする人が、
365日、エストニアを旅しながら働けるビザだ。
しかも、90日間であれば、EU圏内も移動できる。

この取り組みのスローガンが素晴らしい。

 あなたが幸せな場所で働こう

デジタル・ノマドしている人も、毎日同じところで働く人も、
大切なことは同じ。
あなたが働いているのは、幸せな場所ですか?

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四宮拓真 18年3月24日放送

180324-04

ノルウェーのコーセリ

北欧・ノルウェーの冬は長い。
日本はもう春めいて、桜も咲き始める時期だが、
ノルウェーはいまもまだ氷点下の日々だ。

そんな厳しい冬のあいだ、
ノルウェーの人々は多くの時間を自宅で過ごす。
中心にあるのは、大きな薪ストーブ。
揺れる炎に家族が集まって、みんなで会話を楽しむ。

ノルウェーには「コーセリ(Koselig)」という単語がある。
寒い冬を暖かく快適な家でゆったりと過ごす、というニュアンスだが、
日本語にはぴったり言い当てる言葉がない。
「心地よい」とか「気持ちよくいられる」が近いだろうか。
ノルウェーでは、とてもコーセリなおうちね、とか
彼はコーセリな人だ、のように使われる。
実にノルウェーらしい、ぬくぬくとした言葉だ。

今日は土曜日。明日もお休みの方が多いだろう。
今夜はゆっくり、コーセリな時間を過ごしては。

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四宮拓真 18年3月24日放送

180324-05
Olli Sulopuisto
フィンランドのコーヒー休憩

北欧・フィンランド。今年1月のセンター試験で、
「ムーミンの出身地」として話題になったこの国は、
実は「世界一コーヒーを飲む国」としても知られている。

浅煎りで、少し酸味があるのがフィンランドのコーヒー。
フィンランドの水は軟水で、それには浅い焙煎が合うのだそうだ。
平均すると、ひとりあたり3〜4杯ものコーヒーを1日に飲む。

フィンランドの人々は、職場や学校での休憩のことを、
カハヴィダウコ(kahvitauko)と呼ぶ。
直訳すると、「コーヒー休憩」。
コーヒーを飲もうが飲まなかろうが、
休憩とはコーヒーなのだ!という言い切りが面白い。

でも、そういえばわたしたちも、一息いれることを
「お茶する」なんて呼んでいるのだった。

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佐藤日登美 18年3月18日放送

180318-01

お金 マリリン・モンローとハリウッド

今もなお愛されるアメリカの女優、マリリン・モンロー。
彼女はハリウッドのことをこう評した。

 ハリウッドは、キスには1000ドル払ってくれるけど、
 人間性には50セントしか出してくれないようなところよ。

映画会社が儲かることばかりが優先され、
女優の気持ちは二の次にされていたハリウッド。
セックスシンボルと呼ばれた彼女だからこその、
皮肉っぽい、でもユーモアも交えた答え。
今のハリウッドを見ても、彼女は同じことを言っただろうか。

マリリンは、こんな言葉も残している。

 お金がほしいんじゃないの。
 ただ、すばらしい女性になりたいだけ。

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佐藤日登美 18年3月18日放送

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お金 太宰治と貯金

太宰治は、貯金がないことを
小説家という職業のせいにした。

 少し辯解めくけれども、
 私の職業は貯蓄にいくぶん不適當なのではあるまいか、とも思はれる。
 はひる時には、年に一度か二度、
 五百圓、千圓とまとまつてはひるのだが、
 それを郵便局あるひは銀行にあづけて、ほつと一息ついて、
 次の仕事の準備などをしてゐる間に、
 もう貯金がきれいに無くなつてゐる、
 いつのまにやら、無くなつてゐるのである。

その理由を、
自分は耳たぶが大きくないから福が足りないのだと言い訳してみたり、
いやでもあばらやにしか住んでいないのに、と卑下してみたり。
さまざま書き連ねたあと、こう綴った。

 結局、私は、下手なのである、やりくりが上手でないのであらう。
 再思三省すべきであらう。

貯金ができない理由は自分にあることは、自覚しているようである。

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蛭田瑞穂 18年3月18日放送

180318-03

お金 デヴィッド・グレーバー

貨幣はどのようにして生まれたのか。
アメリカの文化人類学者デヴィッド・グレーバーの研究によれば、
貨幣が生まれたのは紀元前約3000年のメソポタミア、シュメール文明。
貨幣は官僚によって発明され、都市に貯蔵される資材の管理や
物資のやりとりに使われた。
そして、その貨幣は金属ではなく、粘土板に刻まれた印だったという。

グレーバー教授はこう語る。

 物々交換から貨幣が生まれたのではない。
 わたしたちがいま「仮想通貨」と呼んでいるものこそが最初にあらわれ、
 硬貨はそれよりはるかにあとに出現したのである。

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蛭田瑞穂 18年3月18日放送

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お金 カネゴン

子ども向けの特撮番組「ウルトラQ」の脚本家山田正弘と
怪獣デザイナー成田亨が生み出した怪獣「カネゴン」。

頭はガマ口で口にはファスナー。
体は10円玉のような銅の色。
胸にはレジスターのカウンターがついていて、
食べたお金がカウントされていく。
カウンターがゼロになると死んでしまうため
絶えずお金を食べ続けている。

「ウルトラQ」の放送が始まったのは
高度成長時代真っ只中の1966年。

大人だけでなく子どもまでもが
お金お金と口にするようになった世の中に対する風刺から
怪獣カネゴンは生まれたという。

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