2010 年 3 月 13 日 のアーカイブ

小山佳奈 10年03月13日放送

01-yukio

三島由紀夫の酒


当代の流行作家が
新宿や浅草の居酒屋で
文学談義に花を咲かせていた頃。

そんな連中には見向きもせず
銀座の高級ホテルやクラブのバーで
グラスを傾けていた作家がいる。

三島由紀夫。

彼のお酒は
その生き様のように
一分の隙もない。

飲みにいく時はもちろん正装。
決して酔いつぶれることはなく
12時には執筆のために家へ帰る。

三島の美学は
酒をも支配する。



02-kusanoshinpei

草野心平の酒


蛙の詩人、草野心平。

ゲコゲコと鳴くカエルとは対称的に
本人は下戸どころかお酒が大好き。
ついには自ら居酒屋を開いた。

ただ、そこは詩人。
お品書きも一味違う。

ほうれん草のおひたしは「黒と緑」。
豚のにこごりは「冬」。
特級酒はてっぺんの「天」。
二級酒は「火の車」。

心平さんにかかれば
言葉だって酒の肴。

「じゃぁ今日は
黒と緑と火の車。」

ほら、
もう詩ができちゃいました。



03-hoshi

星新一の酒

SF作家、星新一。

彼はひとたびお酒を飲むと
その上品な佇まいからは想像もできないほど
ブラックな冗談を矢継ぎ早にくり出す。

小松左京はあまりに笑い過ぎて
いつもお腹が筋肉痛だった。

しかし次の日。
あれほど腹を抱えて笑った毒舌を
一緒にいた人間は誰も覚えていない。
きれいさっぱり忘れている。

なるほど。

アルコールは
「消毒」ですから。



04-nakajo

中上健次の酒


新宿ゴールデン街。
作家仲間が一杯やっていると
ガラリとドアが開いて
どすのきいた声が響き渡る。

「おまえのこの間の原稿、
 なんだあれ。」

大きな体から放たれた気は
小さな店を一瞬にして埋めつくす。

文学界の異端児、
中上健次。

誰かれかまわず議論をふっかける。
他人の新聞小説には勝手に赤字を入れる。

それでもみんな
中上のことが大好きで
なじられるのを承知で
足を運んでしまう。

ガラリ。

今でも夜のゴールデン街には
中上の威勢のいい声が
聞こえてきそうな気がする。



05-akatsuka

赤塚不二夫の酒


赤塚不二夫といえば、お酒。
お酒といえば、赤塚不二夫。

生来の酒飲みかと思いきや
お酒を飲み始めたのは
漫画家になって8年も経った頃。

トキワ荘時代は
酒を飲むより映画を見る
人一倍まじめな青年だった。

まじめにギャグ漫画を描き
まじめに酒を飲んだ。

そうしたら
ギャグ漫画は超一流の芸術になり
下戸は超一流のよっぱらいになった。

赤塚先生。

今ごろ天国では
少し早い花見酒でしょうか。



06-ozu

小津安二郎の酒

映画監督、小津安二郎。

彼は脚本家とともに
別荘にこもっては
映画の構想を練った。

かたわらには
蓼科の銘酒、
「ダイヤ菊」。

一升瓶100本で
映画を一本。

どうりで。
小津映画には
おいしそうに徳利を傾ける
シーンの多いこと。

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