名雪祐平 10年03月28日放送



良寛 1


 散る桜 残る桜も 散る桜

良寛和尚の句はいつも、
せつない。

せつない、とはもともと
人や物を大切に思うことだという。

人は弱い。人は寂しい。
それが当然で
せつない、大切、と思えるかどうか。

おまえ、威張ったりしていないか。
良寛和尚の声が
聴こえる気がする。





良寛 2

あっけらかんと
良寛和尚は生きた。

酒も、煙草もたしなみ、
70歳になって、30歳の尼僧と
相思相愛にもなった。

本音で生きた良寛。
その辞世の句。


うらをみせおもてをみせて 散るもみじ

ただ無心に、
物事の表も裏もなく、自然に任せきる境地。

素朴かつ劇的。
まさしく良寛の真骨頂。



淀川長治

映画館で映画が終わったのに、
まだ座っている老人がいる。
終わりましたよと
声をかけると、死んでいた。

それが理想の死だと
映画評論家・淀川長治は語ったという。

淀川が32年間、解説をつづけた
『日曜洋画劇場』。
その収録直後に倒れたことは、
理想に近かったのだろうか。

すくなくとも。

交流があった
日本や世界の映画人が
一人の映画評論家の人生を讃えた。
ベルナルド・ベルトルッチ
アラン・ドロン
ブラッド・ピット
アーノルド・シュワルツェネッガー
・・・。

89歳まで、映画に没頭した
素晴らしい人生だった。



マルセル・デュシャン 1

芸術を疑え。

マルセル・デュシャンが、
発表したのは、
何でもない日用品のオブジェだった。

自転車の車輪
雪かきシャベル

タイプライターのカバー

まったく新しい衝撃が走った。
これは芸術なのか。

人々は何もわからず、
ただデュシャンだけが
スキャンダラスになっていく。



マルセル・デュシャン 2

20世紀の美術界を
ひっくり返してしまった男。
マルセル・デュシャン

1917年、決定的な事件を仕掛ける。

男性用小便器に
『泉』というタイトルをつけ、
別の署名で出品したのだ。

もはや、作ったのが誰だろうと
問題ではないのだ。
ひとつの日用品を選び、
その物体のための新しい考えを作り出したことが
重要なのだと。

……だれにも、理解されなかった。

けれど、デュシャンは
人間の生き方を見分ける目をもとうとした。
ステレオタイプな評判を拒否しようとした。

芸術を疑ったデュシャンこそ、
芸術の本質を生きたのかもしれない。

6.ダイアナ・ロス

ダイアナ・ロス

1997年7月、
NHKホールでライブ直前だった
ダイアナ・ロスに、
最悪の知らせがあった。

弟夫婦が殺された。

でも、彼女は観客には何も明かさず
プロとしてステージに立った。

さすがに途中、涙で歌声を詰まらせた。

その時、事情を知らない観客から
静かな合唱が始まったのだ。

『イフ・ホールド・オン・トゥゲザー』

その温かさに励まされて、また涙が出てしまった。

7.高杉晋作

高杉晋作

長州の志士、高杉晋作。

幕末に
こんな句を詠んだ。

おもしろきこともなき世を おもしろく

物事がうまくいかなくても
他人のせいにせず、
まず自分からおもしろく。

さあ、春です。
こんな、
おもしろきこともなき世を おもしろく!

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