佐藤延夫 12年12月1日放送



あの人のラブレター/ベートーヴェン

ドイツの作曲家、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン。
生涯独身を貫いた彼だが、
多くの女性との淡いロマンスを経験している。
その相手は、既婚者だったり、婚約者がいたり、
あるいは、自分とは不釣り合いなほどの身分の人だったり・・・。

42歳のとき、ベートーヴェンは、衝撃的な恋をする。
相手の名前は、未だに明らかになっていない。
ちょうど交響曲第七番が完成した年に、こんなラブレターを書いていた。

  貴方がどんなに私を愛していようと・・・
  私の貴方へ愛のほうが勝っているはずだ・・・
  でも、私の前から決して姿を消したりなさらないように・・・
  おやすみなさい・・・ああ、神様・・・
  これほど近くにいるのに!これほど遠いとは!

残念ながら、このラブレターが読まれることはなかった。
彼の死後、遺品の中から発見されたからだ。

この切ない真実を聞いて、少しほっとする。

青春時代、真夜中に書いたラブレター。
次の日になると考え直して、そっと机の中にしまいこむ。

おそらく同じ体験を、ベートーヴェンもしていたのだから。

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