2013 年 3 月 2 日 のアーカイブ

佐藤延夫 13年3月2日放送



刑事コロンボとカミさん

「うちのカミさんがね」
という台詞でおなじみ、刑事コロンボ。

作品の中で、カミさんが登場するシーンはただの一度もないが、
俳優ピーター・フォークのカミさんなら、
実際に何度か出演している。

その人の名前は、シェラ・デニス。
コロンボのカミさんに負けず劣らず個性的だそうで、
ピーター・フォークは、こんなコメントを残している。

「コロンボの聡明さには太刀打ちできないが、
 カミさんの話、これに関しちゃ、うちのカミさんの足下にも及びませんな」

カミさんの愚痴を言う人にかぎって、案外幸せそうだったりする。

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佐藤延夫 13年3月2日放送



刑事コロンボとレインコート

刑事コロンボといえば、
その代名詞にもなっているのが、よれよれのレインコートだ。

最初のエピソードを撮影する直前のこと。
スタイリストの用意した衣装を見て、
俳優ピーター・フォークは愕然とする。

普通のスーツとコート、色違いのセーター、シャツ、ネクタイ。
種類は豊富だが、見る人の記憶に残りそうなものが
ひとつもなかったからだ。

そして彼が選んだのは、自前のレインコート。
いつか役に立つだろうと、マンハッタン57番街で買ったものだった。

クローゼットで眠っていたレインコートは、
コロンボと一緒に、27年間も働き続けることになった。

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佐藤延夫 13年3月2日放送



刑事コロンボとプジョー

刑事コロンボは殺人課の刑事だが、
パトカーには乗らない。

初めてコロンボの愛車が登場するとき、
俳優ピーター・フォークは、
どの車にするか選んでおいてくれ、とスタッフに言われたそうだ。
ガレージに並ぶ何十台もの車。
そのほとんどが真新しくて、高級な車もあった。
でも、乗り手を語るような特別な一台は、なかった。

ガレージを出ようと振り返ったとき、一台の車が目にとまる。
それは、日に焼けてすっかり色褪せた、グレーのプジョーだった。

コロンボは、おんぼろのプジョーを
生涯のパートナーに決めた。

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佐藤延夫 13年3月2日放送



刑事コロンボと夢多き男

病気で右目を失った男がいた。
大学を3ヶ月で退学したと思えば船乗りになり、
コック見習いとして大西洋を横断。
そのあとはイスラエルの軍隊に入ろうとするも戦争が終わってしまい、
いっそのことスパイにでもなるかとCIAの面接を受けるが、採用されなかった。

予算管理局で仕事をしながら通っていた芝居のセミナーで、
その男は、ようやく役者になることを決意する。
それは、セミナーの先生と交わした会話からだった。
いつものように遅刻した彼は、こんな言い訳をする。

「僕は、本当は役者じゃないんです」

すると先生は、ぴしゃりと言い返した。

「そう、ではあなたは役者になるべきよ」

高校を卒業したあと、11年もの空白を経て俳優になったのは、
のちに刑事コロンボで一世を風靡する、ピーター・フォークだった。

刑事コロンボ同様に、回り道がよく似合う男だ。

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佐藤延夫 13年3月2日放送



刑事コロンボとスピルバーグ

世界中で人気を博したテレビドラマ「刑事コロンボ」。

初期の作品で何度かメガホンをとったのは、
若かりし日の、スティーブン・スピルバーグだ。

通常のやり方とは違い、
セットのはるか彼方から望遠レンズで撮影するなど
当時では斬新な手法を試した。
そして同じ年、「激突!」という作品をきっかけに、
彼は映画の世界へ進んでいく。

刑事コロンボ。
それは、若手ディレクターの登竜門でもあった。

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佐藤延夫 13年2月24日放送



刑事コロンボとCM

日本でも大人気だったテレビドラマ、「刑事コロンボ」。

主演のピーター・フォークは、
日本のCMにもいくつか登場している。

たとえばウィスキーのCMでは、バーテンダーの役を演じた。
電話で喧嘩をする女性に、カウンターの向こうから優しく語りかける。

「映画はお好きですか?
 ファーストシーンはけんかでも、ハッピーエンドになりますよ」

コロンボに言われたら、誰でも納得してしまいそうだ。

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佐藤延夫 13年3月2日放送



刑事コロンボと小池朝雄さん

アメリカのテレビドラマ「刑事コロンボ」が日本で放映されたとき、
コロンボの吹き替えを担当したのは、俳優の小池朝雄さんだった。

「あたし、ロス市警のコロンボです。殺人課の」
「うちのカミさんが、あなたの大ファンなんですよ」
「すみません、最後にもうひとつだけ」

このような短いセリフもおなじみだが、
「殺しの序曲」という作品には、コロンボが半生を語った名言がある。

「あたしは、どこ行っても秀才ばかり出会ってね。
 ああいうのが大勢いちゃ、刑事になるのも容易じゃないと思ったもんです。
 だからあたし、考えましたよ。
 連中よりもせっせと働いて、もっと時間をかけて本を読んで、
 注意深くやりゃあ、ものになるんじゃないかってね。
 ・・・なりましたよ。
 あたしは、この仕事が心底、好きなんです」

小池さん独特の言い回しは、まさにコロンボそのものであり
声を聞くだけでコロンボの表情が目に浮かぶ。
刑事コロンボは、字幕ではなく、吹き替えで楽しむべきドラマだ。

小池朝雄さんも、ピーター・フォークもすでに亡くなってしまったけれど、
私たちの心に生きているコロンボは、いつもあの声で、難事件を解決してくれる。

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