2015 年 5 月 17 日 のアーカイブ

飯國なつき 15年5月17日放送

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海① アンデルセン

アンデルセンが書いた童話は?
と問われれば、
「人魚姫」「裸の王様」「マッチ売りの少女」
など、いくつでも浮かんでくることだろう。

一方、あまり知られてないちょっと変わったものもある。

その一つが、
大西洋横断海底ケーブルのことを童話にした
「大きなうみへび」。

ある日、人間たちが海底に敷いた大きなケーブル。
それを目にした海の魚たちは「大きなうみへびだ!」と驚き、
うみへびを巡る冒険に出ていく、という筋書きだ。

アンデルセンという人物は
海底ケーブルという無機物すら、
ユーモラスに、そして少しロマンチックにとらえていく。

 それは力をまし、
 広く広がって、
 年ねんのびていき、
 すべての大洋をわたり、
 地球をめぐります



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飯國なつき 15年5月17日放送

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海② 金子みすゞ

金子みすゞの作品に「大漁」という詩がある。

 朝やけ小やけだ
 大漁だ
 大ばいわしの大漁だ
 はまは祭のようだけど
 海の中では
 何万の
 いわしのとむらい
 するだろう


朝の浜辺は、あたり一面、網で揚げられたいわしの山で
「大漁だ、大漁だ」とお祭り騒ぎ。
そんな人々の光景に対し、みすゞは静かに海を見つめる。

見えないけれどもあるんだよ、
と訴えかけてくるみすゞのまなざしは、
海のように深く、あたたかい。


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飯國なつき 15年5月17日放送

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海③ 立松和平

立松和平の小説「海のいのち」。

主人公は、海に生きる漁師の太一。
海のヌシに命を奪われた、父のかたきを討つために
太一はもぐってゆく。
巨大な海へ。
巨大な命の棲んでいる海へ。

季節や時間とともに、表情を変えてゆく海は、
そんなときでも美しい。

 海中に棒になって差しこんだ光が、
 波の動きにつれ、かがやきながら 交差する。
 耳には何も聞こえなかったが、
 太一は壮大な音楽を聴いているような気分になった。


美しく哀しい海のいのちを
淡々と語るこの物語は、
太一がなぜ海のヌシを倒すのをやめたのか、
静かな描写のみで、読者に問いかけてくる。


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森由里佳 15年5月17日放送

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海④ 海の新しい魅力:クラーク・リトル

あれは、海がアートになる瞬間なんだ。

サーファー出身のハワイの写真家、
クラーク・リトルは撮影を振り返ってそう言った。

ショアブレイクと呼ばれる
岸辺で一気に崩れる危険な波の中に入り、
チューブの内側の世界を撮影する。
波をよく知るサーファーならではのスタイルだ。

荒々しい波から、
ガラス芸術と見紛うほどの美しさを引きだす彼の作風は、
ナショナル・ジオグラフィックをはじめとした多くのメディアで脚光を浴びた。

誰もが知っている海の、
誰も知らなかった美しい世界。

クラークの作品は、
海のあたらしい魅力を煌々と写し出す。

もうすぐ夏。
今年は、アートな瞬間を見つけるために、
海へ行ってみませんか。


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森由里佳 15年5月17日放送

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海⑤ 現代に生まれた人魚姫:二木あい

 今までの水中写真には、面白さがない。

そう話すのは、二木あい。
自らを「水中表現家」と名のり、
素潜りでは世界トップの実力をもつ女性だ。

彼女は続ける。

 全部「人間の目線」
 つまり観察的に撮られたものだからじゃないかな



そんな彼女の作品と、
他のダイバーたちの作品が
決定的に違うこと。

それは、いきものとの距離だ。

素潜りという武器をもつ彼女は、
驚くほど近く、信じられないほど自然に、いきものと泳ぐ。

魚たちと同じ目線にたち、
その中にとけこもうとすれば、彼らからじゃれてくるのだという。

水中世界と人間世界を繋ぐ架け橋になりたい。
そう願う彼女が泳ぐ姿は、まるで人魚姫のように美しい。


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森由里佳 15年5月17日放送

150517-06 Scuba Catalog
海⑥ 海を守るアート:ジェイソン・デカイレス・テイラー

メキシコ、カンクンの海の底に、
彫刻美術館があるのをご存じだろうか。

作者は、イギリス人芸術家、
ジェイソン・デカイレス・テイラー。

海底展示も珍しいが、
彼の作品がユニークな理由は別にある。

通常、芸術作品は、
完成形を保つために保護されているもの。
しかし彼の作品は海底に放置され、
珊瑚や藻に覆われて原型のわからないものすらある。

それは、
あえて、海の生き物が発育しやすい素材を使っているから。
彫刻が時を経て人工漁礁となり、
生き物の暮らしが営まれるという作品なのだ。

テイラーは、
海洋環境保護活動にアートを融合し、
世界中の人たちの関心を新たにさせた。

海を守るアートは、
海を大切にしようとする心も守っている。


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蛭田瑞穂 15年5月17日放送

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海⑦ ギャレット・マクマナラ

命知らずのサーファー、ギャレット・マクマナラ。

11歳でサーフィンを始めたマクマナラは
17歳でビッグウェーブに魅せられるようになる。

2011年、当時の世界最高記録となる78フィートの波にライディングし、
2013年には100フィートのサーフィンを成功させた。
8階建のビルに相当する高さだ。

巨大な波を前に恐怖はないのかと問われ、彼はこう答える。

 正直なところ、怖くはなかったよ。
 海の中にいるとそんなに大きな波だとはわからないからね。



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蛭田瑞穂 15年5月17日放送

150517-08 Igor Liberti
海⑧ ウィリアム・トゥルブリッジ

ボンベもフィンをつけずに潜水するフリーダイビングで
初めて水深100メートルの壁を超えたイギリス人ダイバー、
ウィリアム・トゥルブリッジ。

1歳半で水泳を習い始め、8歳になる頃には
兄とともに海底の石取り遊びに興じた。
フリーダイビングの競技を始めたのは22歳の時。
以来、数々の記録を破ってきた。

フリーダイビングの魅力についてトゥルブリッジは語る。

 水中に深く潜っていくと、呼吸も体重も音も色も、
 あらゆるものがなくなる。それは地上の世界とは完全に異なり、
 まるで海の世界へ受け入れられるような感覚なんだ。



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