2020 年 4 月 のアーカイブ

森由里佳 20年4月12日放送



パンの話 家で楽しむ

朝、トースターからただようパンのにおい。
香りの五線譜をたどって深呼吸すれば、
胃袋がグゥゥと歌いだす。

そのままかぶりつくのもいいが、
とけたバターが滲み込んだ
こがね色を楽しむのもいいし、
鮮やかなベリーのジャムの
てらてらとした輝きを楽しむのもいい。

ゆっくりとふたつに割れば、
白いふかふかの生地から
もわりと湯気がたちのぼる。
朝の光に湯気を透かせば、
光にきらめく粒たちが
ゆらりゆらりと遊んでいる。

いつもより、ゆっくり観察してみよう。
家にいても、世界はけっこう、おもしろい。

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蛭田瑞穂 20年4月12日放送



パンの話 サンドイッチの定義

2006年、マサチューセッツ州のショッピングモールに
パネラ・ブレッドというベーカリーが出店した。

その際ベーカリーはサンドイッチの独占販売契約を結んだが、
ブリトーを販売するメキシコ料理店の出店が浮上する。

ブリトーはサンドイッチに当たるとして、
ベーカリーはショッピングモールを提訴した。

裁判で判事は「争点はパンの枚数」であるとし、こう述べた。

 1枚のトルティーヤで具材を包むブリトーは
 サンドイッチには入らない。

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蛭田瑞穂 20年4月12日放送


Herman Saksono
パンの話 ささやかだけれど、役に立つこと

アメリカの作家レイモンド・カーヴァーの作品に
『ささやかだけれど、役に立つこと』という短編小説がある。

作中、不慮の事故により悲しみを負った夫婦に、
パン屋の主人がこう語りかける。

 何か召し上がらなくちゃいけませんよ。
 よかったら、あたしが焼いた温かいロールパンを食べてください。
 ちゃんと食べてがんばって生きていかなきゃならんのだから。
 こんなときには、ものを食べることです。
 それはささやかなことですが、助けになります。

どんな時も、食べることは希望になる。

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星合摩美 20年4月12日放送


francisco.j.gonzalez
パンの話 焼きたての香り

焼きたてのパンの、甘く香ばしい香り。
この香りについてフランスの大学が、面白い実験を行なった。

内容は、焼きたての香りが漂うパン屋と、香りのない洋服屋の前、
それぞれで落し物をして、通行人の反応を調べる、というもの。

400回の実験の結果、
洋服屋の前では、落し物を拾ってくれた人が、
およそ52%だったのに対し、パン屋では77%だった。

焼きたてのパンの香りは、ちょっぴり人を優しくさせる。
確かにそんなことがありそうな、平和な香りです。

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星合摩美 20年4月12日放送


lazy fri13th
パンの話 変わらぬ美味しさ

創業78年。
浅草にある行列のできるパン屋さん「ペリカン」

作るパンは、2種類のみ。
ほんのり甘く、もっちりとした「食パン」と、
小麦の風味が豊かな「ロールパン」。
どちらも食べ飽きない、シンプルな味わいが魅力だ。

ペリカン2代目の店主は、こう語っている。

「もし、自分に10の力があるのなら、
 それで100のものをつくるよりも、1つのものをつくる。」

美味しさへのこだわりは、
4代目が切り盛りする今も、変わらず続いている。

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渋谷三紀 20年4月11日放送



スープについて 恋愛スープ

恋愛中のコックのスープは飲むな。

ヨーロッパにあることわざ。
恋愛というから甘くなるのかと思いきや、
逆に塩辛くなるらしい。

恋愛中は中枢神経が刺激されて
ホルモンバランスが崩れる。
すると味覚が麻痺して、
塩を余計に加えてしまうのだそうだ。

奥さまのつくるスープが塩辛いとしたら、
恋愛気分がまだつづいているのかもしれない。

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渋谷三紀 20年4月11日放送



スープについて 羊肉のスープがけ

1765年のこと。
ブーランジェという店がパリにオープンした。
名物はスープを煮詰めて羊の肉にかけた料理。
「うちの料理はお客様の元気を回復するためにある」
と店主が言ったことから、
回復するという意味の“レストレ”が
レストランの語源になった。

元気な時はもちろん、
元気がない時ふいに訪れたくなる店こそが、
本当にいいレストランなのかもしれない。

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渋谷三紀 20年4月11日放送



スープについて ブイヤベース

魚介類たっぷりの鍋、ブイヤベース。
南フランスのマルセイユには、
「ブイヤベース憲章」なるものがある。

カサゴ、白カサゴ、赤アサゴ、アシナガガニ、
ホウボウ、マトウダイ、アンコウ、西洋アナゴのうち
4種類を入れなくてはならない。
鯛、ヒラメ、オマール海老、ムール貝、タコ、イカは
入れてはいけない。
そのほか、使っていい野菜や調味料、
小魚でだしをとることまで細かく決められている。

とはいえ、各家庭やレストランには独自のレシピがあり、
それぞれが正統派を主張しているのだから、
それはもう、煮えたぎるようなブイヤベース愛だ。

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渋谷三紀 20年4月11日放送



スープについて 豚骨スープ

福岡が発祥。
ラーメンでおなじみの豚骨スープ。
実は失敗作から生まれた。

母親に火の番を頼んで外出したラーメン屋の店主。
帰宅すると鍋はぐつぐつと煮えたぎり、
透明なはずのスープが
すっかり白濁していたのだそうだ。
肩を落とした店主が
試しにラーメンをつくってみたところ
食べたことのない濃厚な味に驚き、
豚骨ラーメンは店の看板メニューになった。

ラーメン好きとしては、
失敗を失敗で終わらせなかった店主に感謝しかない。

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渋谷三紀 20年4月11日放送



スープについて 味噌汁

味噌汁のはじまりは、戦国時代の陣中食だ。
里芋の茎を味噌で煮しめた芋がら縄に、
熱湯をかけて味噌汁をつくった。

味噌は戦における大切なエネルギー源。
織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の三人が
豆味噌の産地で生まれたことは偶然ではないだろう。

上杉謙信の越後味噌や伊達正宗の仙台味噌は
時代を経て、戦う現代人に食されている。

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