2020 年 4 月 のアーカイブ

松岡康 20年4月19日放送


NASA
適応と進化

今日はダーウィンの命日。
進化について考えたくなる日。

外出できなくて、ふだんの生活も驚くほどに変化している今、
ダーウィンの遺した言葉が身に染みる。

 生き残る種とは、
 最も強いものではない。
 最も知的なものでもない。
 それは、変化に最もよく
 適応したものである。

今の状況に慣れて、適応する。
人類にとって、今の状況こそが進化のチャンスかもしれない。

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川野康之 20年4月18日放送



オランダに目覚めた男たち

その頃江戸にオランダに目覚めた男たちがいた。
彼らは、長崎からオランダ商館員一行が来ると、
宿である日本橋の長崎屋におしかけて行き、
通詞をつかまえて質問攻めにした。

平賀源内を始め江戸中の洋学研究者が集まった。
その中に杉田玄白や中川淳庵など若い医師がいた。
中津藩の藩医前野良沢は四十を過ぎていたが
新知識を求める気持ちは同じだった。
オランダ語を理解して自由に読めるようになりたいと思っていた。

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川野康之 20年4月18日放送



オランダに目覚めた男たち

「オランダの文字はわれら異国のものにも読めるであろうか」
通詞に問うと
「無理です。おやめなさい」
素っ気ない返事が返ってきた。
オランダ語とはそんなにむずかしいものなのか。
それを聞いて杉田玄白はもうあきらめかけた。
平賀源内の言うように言葉など通詞を使えばいいという考え方もある。
しかし前野良沢は納得できなかった。
「オランダ人といえども同じ人間ではないか。
人間の言葉がわからないはずがないではないか」

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川野康之 20年4月18日放送



オランダに目覚めた男たち

「長崎に行きたい」
前野良沢は決意して、46歳で長崎留学に旅立った。
通詞のもとで、単語を一つ一つ教わっては紙に書き留めた。
「肺はロング、心臓はハルト・・・」
だがあまりの難行に、目の前が真っ暗になった。
留学期間が終わる頃、一冊のオランダの本と出会った。
中には膨大な横文字が並んでいてとても理解できそうにない。
しかしページをひるがえしていると、鮮やかな人体の絵が現れた。
自信にあふれた精緻な絵を見ているうち、
良沢は何としてもこの本「ターヘル・アナトミア」を手に入れたいと思った。

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川野康之 20年4月18日放送



オランダに目覚めた男たち

江戸の長崎屋で、杉田玄白は、
偶然にも前野良沢が買ったのと同じ本「ターヘル・アナトミア」を
目の前に置いていた。

玄白はオランダ語そのものよりも
オランダ医学の修得に興味があった。
書かれているオランダ語は一語も理解できない。
しかし彼の目はその本の中にある解剖図に釘付けになっていた。
今まで見てきた中国の医学書にある五臓六腑の絵とまったく違うのだ。
この絵は実際に人体をスケッチしたものに違いない、
と医師のカンで見抜いた。
新しい医学はここから出発するのだ、
しなければならない、と玄白は思った。

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川野康之 20年4月18日放送



オランダに目覚めた男たち

念願の機会がやってきた。
前夜前野良沢は一睡もできず、暗い内に家を出た。
夜が明けた頃、杉田玄白、中川淳庵らと落ち合った。
誰もが興奮していた。
良沢と玄白はそれぞれのふところから
ターヘル・アナトミアを取り出した。
ここに描かれた絵が正しいか、
これから実際に自分の目で確かめることができるのである。

腑分けを見学した帰り道。
「いかがでござろう」
玄白が足をとめた。
3人は顔を見合わせて決意した。
ターヘル・アナトミアを我が国の言葉に翻訳してみようと。
1771年の今日、4月18日のことである。

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STAY HOME (神奈川県医師会からのお願い)

~ 神奈川県民の皆様へ~
(神奈川県医師会からのお願い)
               神奈川県医師会長 菊岡正和
◆侮らないで◆
連日の報道で、親も子供もストレスで大変ですとマスコミが取り上げてい
ます。だから、ストレス発散のために、外出したいという気持ちもわかります。
爆発的な感染拡大に若い人たちに危機感はないのは当然かもしれません。若
い人は感染しても比較的軽症ですむとの報道があるからです。しかし現実は
違います。若い人でも、重症化して一定数以上は死亡するのです。現実を見つ
めてください。
もし、自分の知り合いの人がコロナ感染症で亡くなられたらきっと哀しい
はずです。そして、亡くなった人にうつしたあなたが、入院せずに軽度ですん
でも本当に喜べるでしょうか。不用意に動き回るということは、その可能性を
増やしてしまうことなのです。今は我慢する時なのだということを、ぜひ理解
してください。出来るだけ冷静に、そして自分を大切に、そして周囲の人を大
切に考えてください。

◆ごまかされないで◆
この新しい未知のウイルスに、本当の専門家がいません。本当は誰もわから
ないのです。過去の類似のウイルスの経験のみですべてを語ろうとする危う
さがあります。そして専門家でもないコメンテーターが、まるでエンターテイ
ンメントのように同じような主張を繰り返しているテレビ報道があります。
視聴者の不安に寄り添うコメンテーターは、聞いていても視聴者の心情に心
地よく響くものです。不安や苛立ちかが多い時こそ、慎重に考えてください。
実際の診療現場の実情に即した意見かどうかがとても重要です。正しい考え
が、市民や県民に反映されないと不安だけが広まってしまいます。危機感だけ
あおり、感情的に的外れのお話を展開しているその時に、国籍を持たず、国境
を持たないウイルスは密やかに感染を拡大しているのです。
第一線で活躍している医師は、現場対応に追われてテレビに出ている時間
はありません。出演している医療関係者も長時間メディアに出てくる時間が
あれば、出来るだけ早く第一線の医療現場に戻ってきて、今現場で戦っている
医療従事者と一緒に奮闘すべきだろうと思います。

◆PCR検査の本当◆
医療関係者は、もうすでに感染のストレスの中で連日戦っています。その中
で、PCR検査を何が何でも数多くするべきだという人がいます。しかしなが
ら、新型コロナウイルスのPCR 検査の感度は高くて70%程度です。つまり、
30%以上の人は感染しているのに「陰性」と判定され、「偽陰性」となります。
検査をすり抜けた感染者が必ずいることを、決して忘れないでください。
さっさとドライブスルー方式の検査をすればよいという人がいます。その
手技の途中で、手袋や保護服を一つひとつ交換しているのでしょうか。もし複
数の患者さんへ対応すると、二次感染の可能性も考えなければなりません。正
確で次の検査の人に二次感染の危険性が及ばないようにするには、一人の患
者さんの検査が終わったら、すべてのマスク・ゴーグル・保護服などを、検査
した本人も慎重に外側を触れないように脱いで、破棄処分しなければなりま
せん。マスク・保護服など必須装備が絶対的に不足する中、どうすればよいの
でしょうか。次の患者さんに感染させないようにするために、消毒や交換のた
め、30 分以上1 時間近く必要となります。テレビなどのメディアに登場する
人は、本当のPCR検査の実情を知っているのでしょうか。そして、専門家と
いう人は実際にやったことがあるのでしょうか。

◆胸部レントゲン検査やCT検査の困難◆
胸部レントゲン検査やCT 検査を、もっと積極的にしないのは怠慢だとい
う人がいます。もし、疑われるとした患者さんを撮影したとすると、次の別の
患者さんを検査する予定となっても、その人が二次感染しないように、部屋全
体を換気するとともに装置をアルコール消毒しなければなりません。その作
業は30 分以上、1 時間近く必要となります。アルコールが不足する中、どう
すればいいのでしょうか。メディアなどで主張する専門家やコメンテーター
は、そのようなことを考えたことがあるでしょうか。

◆医療機関の現状◆
今後感染のスピードが上がると、重症例も当然増えてきます。もし何百人も
の感染者が同時に出れば、その人たちを病院で治療しなければいけません。医
療機関のベッドは、またたく間に埋まってしまいます。それでも心筋梗塞や脳
梗塞やがんなどの患者さんに対しては、いつものように対応しなければなり
ません。今までと同じように医療は維持しなければならないのです。
軽症の人は、自宅や宿泊施設に移って静養や療養してもらい、少しでも新型
コロナ感染症の人のために、病院のベッドを空けるなどの素早い行動が必要
です。そして、新型コロナ感染者の治療が終わり、社会復帰しても良いという
ときこそ、素早くPCR検査をやって確認し、ベッドを開けなければなりませ
ん。そのためにも、少しでも時間が必要なのです。医療機関に時間をください。
コロナ感染者の増加を、少しでも緩やかなカーブにしなければ、医療は崩壊し
ます。

◆医療機関への偏見や差別◆
皆さんは、咳をしたり、熱が出ていたりする人が近くにいたら、きっと嫌な
顔をして、文句を言うか、離れていくことでしょう。今この時も医療関係者は、
コロナ感染の恐怖の中で戦っています。戦っている医療機関の医師や看護師
や事務職員にも、子供や孫、そして親はいます。その愛する人たちに、うつす
かもしれないという恐怖の内で、医療職という使命の中で戦っています。そし
て自分の子供が、バイキンと言われ、いじめにあうかもしれないという、悲し
みとも戦っています。
市中の診療所ならば、医師自身が罹ったら、当然一定期間休診にするばかり
でなく、診療所のすべてのスタッフやその家族の心配もしなければなりませ
ん。そして、自分の家族そのものに危害が及ぶことになります。実際に病院の
中で重症の患者さんの治療を毎日繰り返し繰り返し治療にあたり、家に帰っ
ても人工呼吸器の音が耳から離れず、懸命にしている立ち向かっている医師
や看護師の人たちのことを想像してください。そんな恐怖といら立ちと、そし
てストレスの毎日の中で生活しています。
わかってください。知ってください。理解してください。感染が拡大すれば、
誰もが感染者になります。そのとき、偏見や差別を受けたらどんな思いをする
のか、一人ひとりが賢明に考えて、不確かな情報に惑わされて。人を決して傷
つけないように、正しい情報に基づいた冷静な行動をするようにしてほしい
のです。まして、地域の医療機関の活動が差別意識で妨げられるようなこと
は、決してあってはならないことでしょう。

◆一緒に戦いましょう◆
もう少し、もう少し我慢して下さい。四週間、何か月いや一年以上になるか
もしれません。病と闘って生きていたいと、つらい治療と闘っている患者さん
もいます。生きていることだけでも幸せなのだと、ぜひ、ぜひ思ってください。
安易に外出して、密集、密閉、密接のところには絶対行かないでください。あ
なたの行動が、新しい患者さんを作ってしまうかもしれません。
お願いします。私たち医療従事者も、ストレスや恐怖に我慢して戦っていま
す。お願いします。皆さんはぜひ、我慢と闘って、我慢してください。戦いは、
長くてつらいかもしれませんが、みんなで手を取り合っていきましょう。

PDFはこちらからダウンロードできます
   ↓
神奈川県医師会からのお願い

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佐藤日登美 20年4月12日放送


VV Nincic
パンの話 クロワッサン

ミルフィーユ状に重なったサクサクの生地をかじると、
バターの香りがふわりと広がる。
クロワッサンはどのようにできるのだろう。

食感の要となる層を作るために、
大きなバターをそのまま生地に包み、何度も薄く伸ばして丁寧に折りたたむ。
成形したあとはオーブンの中へ。
生地の中のバターが熱で蒸発すると、パン全体がふわりと持ち上がる。

そういえば、映画『ティファニーで朝食を』では
主人公役のオードリー・ヘップバーンがコーヒーとともにクロワッサンを口にしていた。

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佐藤日登美 20年4月12日放送


Johannes Lietz
パンの話 バゲット

1920年代のフランス。
過酷な労働環境を改善するため、午後10時から午前4時の間、
パン職人が働くことを禁止する法が出された。

困った職人たちは、短時間でできるパンを考える。
それまで作っていた大きな丸い形では時間がかかるので、
生地を細長くし、30分ほどで焼きあがるように工夫した。
これがバゲットの始まり。

時間が限られている中でこそ生まれるものもある、
というのはいつの時代も変わらない。

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森由里佳 20年4月12日放送



パンの話 パンがなければ

「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」

マリーアントワネットが言ったとか言わないとか、
諸説あるこの言葉は、無知への揶揄として使われる。

ところが実際は、
フランス語を英訳したものを和訳したせいで広まってしまった誤りだという。

原文では、ケーキではなく、ブリオッシュ。
バターや卵を使う贅沢品とされるが、
等級の低い小麦で作ることもでき、
パンの代用品として半額ほどの価格で売られていたのだ。

2020年4月。
いろんな憶測が飛び交うこんな春だからこそ、
凛とした心を忘れずにいたい。

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