星合摩美 19年4月14日放送



生まれるとき こんにちは赤ちゃん

昭和38年にリリースされた歌謡曲「こんにちは赤ちゃん」。
NHKの番組で紹介されると瞬く間にミリオンセラーを記録。
今でも耳にする昭和の名曲だ。

その歌詞は、生まれてきた赤ちゃんに
ママが優しく語りかけるというものだが、
元々はパパが赤ちゃんに語りかける歌詞だった。

作詞家は永六輔。
父親になった作曲家のために詞を書いた。
ところが、歌手に女性が起用されたため、
永は急遽、歌詞をママの視点に書き替えた。

子の幸せを願う気持ちは、

ママもパパも変わらないということ。

topへ

星合摩美 19年4月14日放送


tak1701d
生まれるとき 御子守帯

中央区日本橋に鎮座する水天宮。
暦の戌の日には、境内は多くの妊婦さんで賑わう。

この神社の安産祈願のお守りは
「御子守帯(みすずおび)」と呼ばれるさらしの帯。

江戸時代、社殿の鈴の紐で作った腹帯を巻いた妊婦が
安産だったことに由来する。

現代では腹帯を巻く習慣はほとんどなくなったが、
安産祈願の儀式として受け継がれている。

安産を願う儀式は、母になる決意の儀式でもある。

topへ

野村隆文 19年4月13日放送


m-louis
喫茶店の話 〜喫茶店の略語〜

今日4月13日は、
日本で初めて喫茶店がオープンした日。

その昔、喫茶店での待ち合わせは、
デートコースの定番だった。

注文は、略語で頼むのがセオリー。
たとえば、「レスカ2つ」。
これはレモンスカッシュのこと。

他にも、アイスコーヒーを、レイコー。
クリームソーダを、クリソ、などなど。

レトロな喫茶店が再注目されている今、
ちょっと気取ったオーダーに挑戦してみてもいいかもしれない。

注文が通れば、気分は昭和の学生か、はたまた大正の文豪か。

topへ

野村隆文 19年4月13日放送


白石准
喫茶店の話 〜喫茶店の椅子〜

「喫茶店のコーヒーについて語るとき、大事なのは椅子だ」
と語ったのは、作家の片岡義男。

ある名古屋の喫茶店は、
時代とともに変化する日本人の体型に合わせ、
ソファのサイズについて徹底的に研究を重ねた。

別の京都の喫茶店は、椅子を必ず一脚ずつ修理に出す。
修理されて戻ってきたときに、
店の雰囲気がいつもと変わらないように、という心遣いからだ。

ゆったりと落ち着ける空間が、
喫茶店の一杯をさらにおいしくするのかもしれない。

topへ

野村隆文 19年4月13日放送



喫茶店の話 〜カップの向き〜

喫茶店で、運ばれてきたコーヒー。
そのカップの取手は、右と左、どちらに向いているだろうか。

右に向いていると、ブラックがすぐに飲める。
「アメリカ式」と呼ばれる、合理的なセッティング。

一方、左に向いていると、左手で取手を抑えられる。
そうすると、右手で砂糖やミルクを入れ、スプーンで混ぜやすい。
「イギリス式」と呼ばれるのは、紅茶の文化が根付いているからだろうか。

左利きだと話は変わるし、
どちらが正解、というわけでもない。

ただそこには、
おいしいコーヒーを、できるだけ気持ちよく楽しんでほしいという、
ささやかな心遣いが見え隠れしている。

topへ

野村隆文 19年4月13日放送



喫茶店の話 〜ふたつの銀ブラ〜

現存する日本最古の喫茶店、カフェーパウリスタ。
1911年の開業から、今年で108年を迎える。
銀座通りに面した席からは、今もなお、
「」する人たちを眺めることができる。

さて、「銀座の街をぶらぶら散歩すること」を表すこの言葉。
実は、もう一つの由来があると言われている。

なんと、
「銀座のカフェーパウリスタに、ブラジルコーヒーを飲みに行くこと」
だという。
開業当時、店に好んで通った学生たちが流行らせた言葉だとか。

真偽のほどは定かではないが、
銀座という街を歩くこと、そしてその街の喫茶店でコーヒーを飲むことが、
長く愛されてきたことは確かだろう。

ふたつの「銀ブラ」を楽しめるカフェーパウリスタは、
今も銀座の街を静かに見守っている。

topへ

野村隆文 19年4月13日放送


IZAYOI_YUKARI
喫茶店の話 〜一息へのこだわり〜

なぜ、喫茶店は落ち着くのか。

コーヒーの香りは、
脳にリラックス効果を与えると言われている。

また人間の脳は、
適度な話し声やBGMがある方が集中できるという。

さらには、あたたかく店内を包む照明に、革張りのゆったりとしたソファ。
控えめなマスターが淹れる、いつもどおりのブレンドの味。

そんないろいろな要素が合わさって、喫茶店は
誰もがほっと一息つける場所になる。

実は、あのブルーボトルコーヒーのルーツは、
日本の喫茶店文化にあると創業者は語る。

長い時間をかけて培われてきた、こだわりの時間と空間は、
最先端のカフェの中にも脈々と受け継がれているのかもしれない。

topへ

大友美有紀 19年4月7日放送



作家とアパート 萩原朔太郎

新年度、新しい場所での暮らしを
始める人もいるでしょう。

詩人・萩原朔太郎の作品に
「乃木坂倶楽部」という詩がある。
アパートでひとり寂しく
眠る心情が描かれている。
妻と別れて、実家からも追い払われ、
三好達治に紹介されたアパートだった。
詩の描写から察するに、白壁の洋室、
ベッドで眠るような暮らしだ。
しかも、場所は乃木坂。

今だったら、洋館のようなアパートでの
華やかな都会暮らし。
でも「ひとり」である寂しさが、胸に迫ってくる。

ひとり暮らしを始めたばかりのあなたは、
きっと読まないほうがいい。

topへ

大友美有紀 19年4月7日放送



作家とアパート 萩原葉子

さあ、この春から新天地で暮らす!
という人も多いことでしょう。
でも若い頃は、思うような場所に住めないことも多い。

萩原朔太郎の長女、葉子が
小説「木馬館」で描くアパートは、凄まじい部屋だった。
壁はボロボロ、畳のヘリは破れている。
天井は雨のシミ、水場もない。
そのうえ夫は小心で疑い深い。
干渉してくる近隣の住人もいる。

父、朔太郎が描くアパート暮らしの寂しさとは
また違う厳しさがそこにある。

やがて「木馬館」の主人公は、
このアパートから出てゆくことができる。
厳しさがあるからこそ、
出てゆく「希望」を見つけられるのかもしれない。

topへ

大友美有紀 19年4月7日放送



作家とアパート 江戸川乱歩

新年度が始まって、ひとり暮らしを
始める人も多いでしょう。

かつて、上京した学生は、
「下宿」を借りて暮らしていた。
推理小説家・江戸川乱歩は、
下宿屋を営んでいたこともある。
現在の西早稲田にあった「緑館」だ。

当時のチラシには、
室内電話、浴室、
「閑静ニシテ便利」「美室ニシテ低廉」と書かれている。

なかなかよさそうな下宿だが、
当の乱歩は下宿の運営には無関心。
住人の学生との騒動が起こって、
新聞沙汰になり下宿を廃業してしまった。

もしかしたら、それは表向きの話で、
とても人に言えないような、奇々怪界の
事件が起きていたのかもしれない。
と、乱歩ファンなら勘ぐるところだろう。

topへ


login