Vision

佐藤延夫 17年3月4日放送

170304-04
スピーチの達人 シャルル・ドゴール

 もはやこれまでなのか?
 いっさいの希望を捨てるしかないのか?
 敗北は挽回できないのか?
 私の答えは「ノン!」
 なにがあろうとも、フランスの抵抗の炎は消えない。
 消してはならない。


これは1940年6月14日、
フランスの軍人、シャルル・ドゴールによるスピーチだ。
ドイツ軍がパリを陥落させたとき、
ドゴールは訪問中のロンドンから、
ドイツとの戦いを呼びかけた。
軍人らしく、熱を帯び、迷いなど微塵も感じさせない言い方は、
すべてのフランス国民を勇気付けた。

このスピーチの中で、のちに評価されたのは、
「フランスの抵抗の炎」という一説。
聴く人の愛国心を高め、勇気を与える、
見事な比喩表現だと言える。


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佐藤延夫 17年3月4日放送

170304-05
スピーチの達人 セヴァン・カリス=スズキ

 どうやって修理すればいいかわからないなら、
 壊すのは、もうやめてください。


この有名な言葉は、1992年6月11日、
地球サミット総会でのスピーチだ。
カナダの環境保護活動家、セヴァン・カリス=スズキは、
9歳のときに環境学習グループを設立し、
12歳で地球サミット総会の壇上に立っていた。
スピーチは、およそ6分間。
情熱的に、シンプルに、
自分の言葉で堂々と語る。
それだけで、すべての人が魅了された。
スピーチの巧さに年齢など関係ないことを
彼女は教えてくれる。


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石橋涼子 17年2月26日放送

170226-01 hktang
手のはなし 西岡常一

「最後の宮大工」と呼ばれ、
法隆寺の大修理を手掛けたことでも知られる、西岡常一(つねかず)。

材料となる木を探すところから始め、
より良い仕上がりを求めて道具づくりから手がけ、
人を育てることも棟梁の役目と考える、彼の言葉。

 手でものを作りあげていく仕事の者にとっては、
 量じゃありません。
 いいもん作らなあ、腕の悪い大工で終わりでんがな。


西岡の手は、素晴らしい建築物だけでなく、
素晴らしい弟子や道具を、多数残した。


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石橋涼子 17年2月26日放送

170226-02
手のはなし 羽海野チカ

人は迷い、悩むとき、
つい、身動きがとれなくなることがある。

そんなときは、漫画化・羽海野チカが
作品を通じて語った言葉を思い出してみよう。
陶芸を学ぶ学生に老教授が言う。
答えが出ない時は手を動かすのが一番だ、と。

 家で頭を抱えても誰かに答えを聞いても
 わからん時にはわからんもんじゃ。
 じゃが不思議なもんで、一心不乱に手を動かし続ければ、
 出来上がった100枚目の皿の上に、
 答えが乗ってることもある。


メモ書きでも、料理でも、じゃんけんでも。
先生の教えにならって、悩んだときは
まず手を動かしてみませんか。


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小野麻利江 17年2月26日放送

170226-03
手のはなし 柳宗悦の「手仕事の日本」

「手仕事」と呼ばれる、人の手による生活道具。
それはかつて、日本人の暮らしに欠かせないものだった。
その美しさに魅了された
民藝運動家・柳宗悦(むねよし)は、
20年近い歳月をかけて、日本中の手仕事を記録した。

太平洋戦争中に編纂され、
検閲や戦火をなんとかかいくぐり、
戦後に上梓されたのが、『手仕事の日本』。

その本の中で、柳は手が持つ効用を、
このように語っている。

 そもそも手が機械と異なる点は、
 それがいつも直接に
 心と繋がれていることであります。


今や21世紀も、17年目。
テクノロジーが支配する「未来」かと思いきや、
私たちはあらゆる手段を使って、
心の繋がりを求めている。

時がどれだけ経ったとしても。
私たちは何度でも、
柳が説く「手仕事が持つ本質」に
立ち返るのかもしれない。


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茂木彩海 17年2月26日放送

170226-04
手のはなし 松浦弥太郎の手

 指先と手を常に清潔に。

これは文筆家、松浦弥太郎が定めた
「100の基本」の中の33番目の基本である。

 ものをさわる、仕事をするなど、
 手というのはとても大切な道具です。
 一番上等で大活躍する道具として、
 指先と手の手入れはくれぐれも抜かりなく。


松浦に倣い、たまには休めた手をじっと見つめ、
ねぎらいの言葉を掛けてあげるのも良いかもしれない。


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薄景子 17年2月26日放送

170226-05 Yercombe
手のはなし 長田弘の「詩集は刺繍」

詩人、長田弘の作品に
自身が愛した本に向けて書かれた詩集がある。

プラトン、ニーチェ、荘子、漱石、
アルデンセンやアラビアンナイトまで。
人生で長く深く付き合ったという
友人のような25冊に寄せて、詩人の言葉が紡がれる。

たとえば、梶井基次郎の「檸檬」
に寄せた詩の一節。

 人は死ぬが、よく生きた人のことばは、死なない。

自身の中で生き続ける本の魂をリレーするかのように、
そこから長田の新しい物語が広がっていく。

彼は言う。

 詩を書くことは、いわば手仕事である。
 詩集というのは、
 心の刺繍(ししゅう)のようなものなのかもしれない。


詩集は刺繍。
その手で一針一針ていねいに紡がれた詩は、
きょうも誰かの中で鮮やかに生き続ける。


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茂木彩海 17年2月26日放送

170226-06
手のはなし 自然の手仕事

『沈黙の春』で知られる作家、レイチェル・カーソン。

海洋生物学者でもある彼女は、著書の中で自然を丁寧に描写し、
そのまなざしは、雄大な自然にはもちろん、枯葉の下の小さな虫にも注がれる。

 自然のいちばんの繊細な手仕事は、
 小さなもののなかに見られます。


彼女の最期の手記、『センス・オブ・ワンダー』に残された
この一節。

自然が生んだ造形を「手仕事」
と表現する彼女の言葉には、
その「小さなもの」を、見事な出来栄えの工芸品を扱うように
実際に手にとり、近くで眺めてみてほしいという
想いが込められているようだ。


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熊埜御堂由香 17年2月26日放送

170226-07
手のはなし 漫画家の手 

漫画、それは手から生まれる芸術のひとつと
いってもいいだろう。
日本を代表する漫画家、浦沢直樹。
彼は、腱鞘炎と闘いながら漫画を書き続けてきた。

「グーでペンを握ると腱鞘炎になりにくいんだ」

インタビューでちょっと得意げに語っていたことがある。
そこまでしても、書きたい。
浦沢さん自身が少年のような心を持ち続けて、今日もペンを握る。


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熊埜御堂由香 17年2月26日放送

170226-08
手のはなし 赤ちゃんの握りこぶし

赤ちゃんは、いつもぎゅっと手を握りしめている。
それは原始反射という生理的な現象だ。
けれど、その握られた手の中に指を差し込むと
握り返してくるから、大人はうれしくなってしまう。

 赤ちゃんの握りこぶしの中には幸福がつまっている。

そんなよく聞く言い伝えは手と手が繋いできた
やりとりから生まれたのかもしれない。
手には、人間の原始的な幸福が宿っているのだ。


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