江口順也 10年02月20日放送

01-konpo

クリスト


ときに人間は、
情けないほど鈍感で。
なにかを失って初めて、
その尊さや意味に気づく。

そんな性を、逆手に取った芸術家がいる。
包むアーティスト、クリスト。
その作風は、ひとことで言うと「梱包」。

パリのポン・ヌフ橋、
ドイツの旧国会議事堂、
マイアミの島々、
オーストラリアの海岸。

彼は、美しい大自然や巨大な建築物を
布ですっぽり覆い隠して、
ものの本質を私たちに突きつけてきた。

そんなクリストが、
いま、いちばん梱包したいもの。

きっとそれは、地球に違いない。





02-ekuni

江國香織


むかし、炊飯器の広告で、
「お米が立っている」
というコピーがあったけど。
この本の言葉たちは、
まさにジャーの中のごはんそっくりに
ぎっしり立っている。

作家の江國香織さんは、
ある新聞の書評欄に、そう書いた。

ことばは、おこめ。

ひと文字、ひと文字、
よく噛み締めて、味わえば、
新しい私が作られる。
それがきっと読書の醍醐味。

醍醐味の味(み)は、
味(あじ)という字だ。



03-nakamura

中村俊輔

芸術的なフリーキックや、
精密機械のようなパスとは別に。
中村俊輔にはもう一つ、
だれも持っていない武器がある。

15年間書き続けた、
サッカーノートだ。

自分の弱点を毎日丹念に書き付けた12冊のノートは、
戦友であり、辛口の専属コーチ。

苦しい時ほどページをめくり返し、
危機を乗り越えてきた中村は、
現在、スペインのリーグでプレイをしている。

その舞台は、今から5年も前に、
未来の目標として、
ノートに書き込まれた場所だった。



04-katsu

勝 海舟


勝海舟は、交渉の達人だった。

大奥の最大権力者である
天璋院篤姫が、プライドを傷つけられて
カンカンに怒ったある日のこと。

勝にとって彼女は、
今で言えば、社長の奥様。

その篤姫が、
怒りのあまり自害するといってきかないときに、
勝はスキを見て、こう申し出た。

あなたが亡くなれば、
私だって、ただじゃ済みませんので、
すぐさま、お隣りで切腹します。
すると大変お気の毒ですが、
私とあなたは心中とか何とか言われますよ。

篤姫は、さっきまでとは違う意味で、
顔を真っ赤にして、ふりあげた刀を下ろしたそうだ。

この勝負、勝の勝ち。



05-lee

ブルース・リー


TVのインタビューで、
達人は、こうみんなに語りかけた。

 こころを空っぽにして
 形をすてろ 水のように
 水は流れることも
 水は砕くこともできる
 友よ、水になれ


ブルース・リー。

型を繰り返し、型を重んじることで
カンフーの道を極めた男は、
型から自分を解き放つことの
たいせつさも知っていた。

それは、どんな道にも通ずる哲学。



06-matis

アンリ・マティス

むずかしい解説や論評を前に
アートにひるんでしまったことがある人には。
マティスの絵をおすすめしたい。

彼は、こんなことを言っている。

  私は人々の疲れをいやす、
  よい「肘掛けイス」のような芸術を
  目指したい。


肩の力を、ゆっくり抜いて。
ただ感じるままに眺めればいいのだ。

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