大友美有紀 12年11月17日放送



パウル・クレー「食卓の言葉」
主夫クレー

26歳の時、画家クレーは、3歳年上のピアニスト、
リリーと結婚する。クレーはまだ無名だ。
リリーのピアノ教師としての収入がすべて。
食事の支度はクレーの役割、
息子が生まれてからは、育児も引き受ける。
創作の時間は、極端に少なくなる。
昼間は台所で家事をし、夜通し絵を描く。
モチーフは、数日前にバルコニーから見た光景。
それでもクレーが料理する姿は、
息子フェリックスにとって、とても楽しみだった。

 父は実に軽快で、まるで絵を描いたり
 音楽を奏でたりしているかのように料理をしていた。
 皿に盛られた5、6品の料理は見事なできばえで、
 いつも素晴らしい味だった。

14年に渡る苦悩の時代、クレーは小さな台所で
独自の世界をつくりあげていった。

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