2012 年 11 月 3 日 のアーカイブ

佐藤延夫 12年11月03日放送



ムーミン谷の住人たち1

ムーミンの作者、トーベ・ヤンソンは、
フィンランドの首都、ヘルシンキで生まれた。

父親は彫刻家、母親は画家という芸術一家。
小さいころから、ひとりで絵を描いては、
それにお話をつけて遊んでいたという。

ある日、弟とケンカし、トイレの壁紙に落書きをした。
タイトルは、「ものすごくみっともない小さな怒った顔」。

それがムーミントロールのルーツだと言われている。

昔、誰の心の中にも住んでいた小さな妖精の姿を、
彼女は忘れなかった。

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佐藤延夫 12年11月03日放送



ムーミン谷の住人たち2

ムーミンは、世界中で読まれている、子ども向けの作品だ。

ひとりでいることの大切さや、
夜は決して怖くないこと、
世の中は不条理で満ちている、
そんなことを感覚的に教えてくれた。

「ムーミン谷の冬」に登場する、おしゃまさんは語る。

  ものごとってものは、みんなとても曖昧なものよ。
  まさにそのことが私を安心させるんだけれどもね。

その意味がしっかりとわかるころ、
私たちは、一人前の大人になっている。

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佐藤延夫 12年11月03日放送


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ムーミン谷の住人たち3

いつもせっせと働いて、人の世話が大好き。

ムーミンのお話に登場するムーミンママのモデルは、
作者トーベ・ヤンソンのお母さんだと言われている。

自慢のシルクハットをかぶり、海と冒険を好む。

ムーミンパパは、トーベのお父さんがモデルだ。

そしてフィンランドの長く冷たい冬が、
ムーミン谷という舞台をつくった。

ムーミンは、不思議な世界に暮らす、森の妖精たちの物語。
でもその中身は、トーベの体験が紡ぎ出したものだった。

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佐藤延夫 12年11月03日放送



ムーミン谷の住人たち4

フィンランド湾には、大小さまざま、
何万もの島が浮かんでいる。
ここがムーミンの作者、トーベ・ヤンソンの遊び場だった。

幼いころは、毎年、家族みんなでやってきて、ひと夏を過ごした。
大人になると、小さな島に自分の小屋を建てた。

彼女の住処は、クルーヴ・ハル島。
水道も電気もガスもない、ただ海だけ広がる場所がアトリエになった。

それにしても、なぜ、島なのか。
理由は、「きっちり限られた場所だから」。
トーベは語る。

  ここは自分の世界であり、
  すべてをひとりで見渡すことができるし、
  細かいことまで知りつくしていられる。
  それに、海に守られて
  望めば、海で全世界へとつながっている。

一周するのに10分もかからない島。
それがムーミンの舞台、ムーミン谷そのものかもしれない。

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佐藤延夫 12年11月03日放送


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ムーミン谷の住人たち5

トーベ・ヤンソンの童話「ムーミン」に登場する、スナフキン。

自由と孤独をこよなく愛する風来坊で、
ひとり気ままにテント暮らしをしている。

大人にもスナフキンのファンが多いのは、
その風貌と、心に響く言葉を持っているから。

  誰かを崇拝しすぎると、本当の自由は得られないんだよ

スナフキンのように生きてみたいけど、
今さらどうにもならない、とお考えの皆さん。
彼はこうも言っています。

  おだやかな人生なんて、あるわけがないですよ

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佐藤延夫 12年11月03日放送



ムーミン谷の住人たち6

世界中で読まれている童話「ムーミン」。
その正体は、カバではなく、
北欧の民話に登場する森の生き物、トロールだ。

日常生活で、ふっと物がなくなったとき、
今でも北欧の人々は「トロールのいたずらだ」と言う。

作者のトーベ・ヤンソンは、
毛むくじゃらで醜い怪物を、愛くるしいキャラクターに変えてみせた。

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佐藤延夫 12年11月03日放送



ムーミン谷の住人たち7

ムーミンの作者、トーベ・ヤンソンは、
生涯独身だった。
しかし、ひとりぼっちではなく、
親友のグラフィックアーティスト、
トゥーリッキ・ピエティラと一緒に過ごした。
人里離れた、小さな島のアトリエで。

ふたりが暮らした小屋には、
トーベたちがいない間も、鍵がかけられていなかったそうだ。
船乗りが嵐から身を守れるように、
通りすがりの人がコーヒーを飲めるように、
その扉はいつも開けられていた。

まるで、ムーミン谷でいつもたくさんの人を迎え入れる
ムーミン屋敷のように。

  秋になると、旅に出るものと、
  のこるものとにわかれます。
  いつだって、そうでした。
  めいめいの、すきずきでいいんです。

ムーミンのお話の中に、こんなセリフがあった。
この物語は、誰かを静かに、あたたかく見守るトーベの優しさで溢れている。

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