Pensive glance
100年の一滴 榛名由梨
昭和49年の秋、
ある舞台が、社会現象になった。
宝塚歌劇「ベルサイユのばら」。
オスカルに抜擢されたのは、49期生の榛名由梨だった。
どちらかというと地味な男役だった榛名は、
この舞台をきっかけに、トップスターにのぼり詰める。
そして、多くのトップのように、
王座に君臨したとき、
引退することを考えてしまったそうだ。
宝塚歌劇は、今年で100周年。
彼女がトップスターだった8年間は、
宝塚が最も輝いた時代のひとつだった。
2014 年 5 月 3 日 のアーカイブ
佐藤延夫 14年5月3日放送
佐藤延夫 14年5月3日放送
T.Kiya
100年の一滴 鳳蘭
どんなに多くの人に囲まれても埋もれない。
むしろ印象が際立ってくる。
それが、鳳蘭という少女だった。
「ベルサイユのばら」のフェルゼン、
「風とともに去りぬ」ではレット・バトラーを演じ、
ヒット作に恵まれ、トップスターの階段を登っていく。
そして彼女が引退を考えたのは、
昭和50年、パリ公演のときだったという。
今の年齢と、結婚願望。
違う世界の幸せに惹かれていった。
宝塚歌劇は、今年で100周年。
彼女のダイナミックな存在感は、
その歴史のひとしずくになっている。
佐藤延夫 14年5月3日放送
T.Kiya
100年の一滴 汀夏子
13歳のときに観た舞台が、将来を決める。
のちに汀夏子という名前を持つ少女は、
宝塚に人生の全てを捧げた。
お下げ髪をばっさりと切り、
おとなしかった性格も変わっていった。
初舞台を踏んで10ヶ月後には、準主役。
自分の実力よりも半歩先を求められる苦しさを、
彼女は長い間、受け止めた。
そのためだろうか。
ある舞台で沖田総司を演じたとき、
いつか死ぬなら彼のように死にたい、と漏らしたという。
宝塚歌劇は、今年で100周年。
汀夏子こそ、トップスターの中のトップスターだ。そんな声も多い。
佐藤延夫 14年5月3日放送
T.Kiya
100年の一滴 安奈淳
両親が宝塚の大ファンで、
生まれた娘が宝塚歌劇団に入る。
そしてトップスターとして輝く。
そんな夢みたいな話がある。
51期生の安奈淳は、
熱烈な両親の思いとは反し、
クールな口数の少ないタカラジェンヌだった。
セリフが苦手、と自分で告白するほどの芝居下手で
人付き合いも得意ではなかった少女は、
自然体のまま、トップスターの座を守り続けた。
ただ辞めたくなり、目先のことも考えずに辞めた。
宝塚を去った理由も、実に彼女らしいと言える。
宝塚歌劇は、今年で100周年。
妖精のように繊細なトップスターも、
その歴史の一部を彩っている。