2014 年 12 月 27 日 のアーカイブ

佐藤理人 14年12月27日放送

141227-01

カルティエ・デザイン①「トリニティとコクトー」

 この世にまだない指輪が欲しい

1923年のある日、詩人ジャン・コクトーが
フランスの高級ブランド、カルティエを訪れた。

小説「肉体の悪魔」の作者にして最愛の恋人、
レイモン・ラディゲへの贈り物。

そうして生まれたのが、
クリスマスプレゼントとして
日本でも人気の高い

 トリニティリング

トリニティとは「三位一体」のこと。
絡み合う白、黄色、ピンクのゴールドは、
「友情」「忠誠」「愛」を意味する。

しかしラディゲは病のため、
指輪の完成を待たずに
二十歳の若さでこの世を去る。

哀しんだコクトーは
ラディゲと自分の2つのトリニティリングを
終生同じ指にはめ続けたという。

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佐藤理人 14年12月27日放送

141227-03

カルティエ・デザイン②「サントスと飛行機」

 飛行中でも操縦桿から
 手を離さずに時間を見たい

1906年のある日、
ブラジルの飛行機王サントス・デュモンが
フランスの高級ブランド、カルティエを訪れた。

時計といえばまだ懐中時計が一般的な時代。
腕時計は小さな懐中時計に革ひもをつけただけの
女性のアクセサリーでしかなかった。

デザインも機能も妥協しない、
男性が堂々と使える腕時計を作りたい。
そうして生まれたのが世界初の紳士用腕時計、

 サントスウォッチ

現在、多くの高級時計で使われている
金属製の留め金具、通称「Dバックル」も、
カルティエの発明である。

今を告げる時計に、
カルティエは未来を見ていた。

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佐藤理人 14年12月27日放送

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カルティエ・デザイン③「タンクと戦車」

 戦車は武器じゃない。平和の象徴だ。

少なくとも第一次大戦直後の
パリ市民にとってはそうだった。

迫りくるドイツ軍から
パリを守り抜いてくれた連合軍の戦車。

フランスの高級ブランド、
カルティエの三代目ルイ・カルティエもまた、
その勇姿に感銘を受けた一人だ。

彼は戦車のキャタピラーからヒラメキを得て、
腕時計を作った。その名も、

 タンク

発表から100年近く経つ今も、
基本のデザインは変わらない。

過去の名作を復活させるメーカーは多い。
しかしデザインがこれほど古びずに
生き続けているブランドはカルティエしかない。

美しさの耐久力もまた、戦車の名にふさわしい。

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佐藤理人 14年12月27日放送

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カルティエ・デザイン④「チプロと釘と貞操帯」

新しいのに普遍的。シンプルなのに華やか。

フランスの高級ブランド、カルティエのデザインが
いつまでも古びない秘訣は、

 時空を超えた美学

にある。

1970年代、ニューヨーク。

夜な夜なディスコで催されるパーティには
もっとインパクトのあるアクセサリーが必要だ。

カルティエニューヨークのデザイナー、
アルド・チプロは考えた。

彼は釘や貞操帯などメッセージ性の強いアイテムを
敢えてデザインのモチーフに選んだ。

 王たちの宝石商であり、宝石商の中の王。

かつてイギリス王エドワード7世は
カルティエをそう評した。

それから100年後のアメリカで、
カルティエの進歩的なデザインに
まっ先に飛びついたのは、
ウォーホールやカポーティなど、
夜遊びの帝王たちだった。

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