福宿桃香 15年8月8日放送

150808-04

マイヤ・プリセツカヤ④

スターバレリーナ、マイヤ・プリセツカヤの代表作といえば、
「瀕死の白鳥」。

バレリーナの個性が大きく出る踊りで、
彼女が演じる白鳥は、1度しか倒れない。
最後の最後まで死に抵抗し、突然、動きを止めるのだ。

彼女の白鳥は、彼女の人生そのものだったといえる。
自伝には、こんな言葉があった。

蔑まれたり、人間としての尊厳が踏みにじられない日は一日としてない。

ユダヤ系の家系だったことを理由に受けた差別・迫害はすさまじく、
海外公演で滞在していたホテルでは、食事がドッグフードのこともあった。

それでも彼女は、バレエを通じて抗いつづける。
「カルメン組曲」や「ボレロ」など反ソ連的な新作に挑戦を続け、
世界をよりまっとうな方向へと、変えていった。

プリセツカヤの死後、日本のバレリーナ・森下洋子は、こう語った。

自らをなげうって多くの人に喜びを届けるという聖なる仕事を終え、
マイヤさんが彼岸に渡る船から手を振っている姿が、はっきり見えるような気がします。後は任せた、と。

自伝のタイトルは、「闘う白鳥」。
彼女の一生は、長い長い闘いだった。

タグ:

«    »

topへ

コメントをどうぞ

CAPTCHA



login