2016 年 3 月 19 日 のアーカイブ

厚焼玉子 16年3月19日放送

160319-01 Jeff.C
もう会えないひと。 夏目漱石

日陰町というから、いまの新橋あたりだった。
夏目漱石は人力車に乗った美しい人を目にする。
雨のなか、漱石はその人から目を離すことができずに
見惚れていると
その人はすれ違うときに丁寧な会釈をした。

ああ、大塚楠緒子(おおつかくすおこ)さんだ。  

漱石はそのとき初めて、
その美しい人が、かつての失恋の相手であり
大学時代からの友人、大塚保治の妻になっている
大塚楠緒子と気づく。

その人が若くして亡くなったとき
漱石はこんな句でその死を悼んでいる。

 あるほどの 菊投げ入れよ 棺の中

漱石の永遠のマドンナだった大塚楠緒子。
失恋と死別、二度の悲しみを漱石に与えた。


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三島邦彦 16年3月19日放送

160319-02 Xanadrew
もう会えないひと。 ヘンリー・デイヴィッド・ソロー


人生の中で、ふと、会わなくなってしまう友達がいる。
急に連絡がとれなくなったり、突然この世を去ってしまったり。

ヘンリー・デイヴィッド・ソロー。
19世紀のアメリカで産業社会に嫌気がさし、
森の中に建てた丸太小屋で2年2ヶ月、
一人きりで自給自足の生活をした思想家。

その暮らしの記録をまとめた本、
『森の生活』はエコロジー思想の先駆けとして、
今なお多くの人に読み継がれ、
ガンディーやキング牧師にも影響を与えたと言われる。

人との関わりを避け、孤独を愛した彼はしかし、
友情についてこう語っている。

 友人のために僕ができることは、ただ彼の友達でいることである。

もう会えない友達にも、いつまでも友達でいることはできる。
今いる友達に、何か特別なことをしなくても、友達でいることはできる。

一人で暮らしていた時にも、
ソローは一人ではなかったのかもしれません。


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三國菜恵 16年3月19日放送

160319-03
もう会えないひと。 森田一義

今年は赤塚不二夫の生誕80周年。
「生誕何年」という文字は、その人がもうこの世にいないことを色濃くする。

赤塚に見いだされ、芸人となった
森田一義ことタモリ。
人生で一番最初に読んだ弔辞は、
よりにもよって、赤塚に向けてだった。

森田は仏壇の前に立ち、はじめてお礼を言った。
言う機会はいくらでもあったけれど、
こんな気持ちがいつも邪魔をしていた。

 肉親以上の存在にお礼を言うのは気がひける

そのことをふと人に漏らしたら、
赤塚も同じことを言っていたと知らされた。


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三國菜恵 16年3月19日放送

160319-04 nixang
もう会えないひと。 いくえみ綾(りょう)

かなしい別れをどう乗り越えるか。それは永遠の命題だ。

少女漫画家・いくえみ綾。
人間の魂のゆくえについて描いた作品がある。
タイトルは『潔く柔く(きよくやわく)』。

中学生のある日、ハルタという男の子が突然交通事故で逝ってしまう。
残された幼なじみの女の子、カンナは迷う。
彼を忘れて生きていいものか。
彼を忘れて恋していいものか。

作者はその問いかけを包むように、
最後、こんなモノローグを入れている。

 魂は
 きっといろんなことを
 忘れないでいてくれてるんだと思います


たとえ人間の頭が忘れるようにできていても、
魂がおぼえてくれている。
だから前へ、進んでいい。


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三國菜恵 16年3月19日放送

160319-05 kiki
もう会えないひと。 いとうせいこう

文筆家、いとうせいこう。
彼はもともと、友人と頻繁に会ったりしない。

だから、その人に「もう会えない」と知った時も、
ちょっと連絡が取れなくなった、
ぐらいにしか思えなかった。

その人、というのは
テレビ評論家のナンシー関。
タレントの顔を風刺した「消しゴムはんこ」で有名だ。

いとうにとって、文筆家としての彼女の存在は偉大すぎた。
世界が彼女を失ったという事実を飲み込めず、
いとうはただ、ペンを走らせつづった。

 彼女の身に起こったのは「死」だ。
 だが、彼女はあきらかに僕の中に存在しており、
 それをひとつの名詞で片づけるわけにはいかないのだ。



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