2016 年 3 月 27 日 のアーカイブ

熊埜御堂由香 16年3月27日放送

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桜のはなし ケーベル先生と桜

明治時代に日本にやってきて
ドイツ哲学や美術史を教えた、
ラファエル・フォン・ケーベル。
教え子のひとりだった夏目漱石がのちに作品に記すように
「ケーベル先生」と呼ばれ親しまれた。

そんな彼が残した言葉。

 桜の花の頃こそ日本人を観察すべき時である。

春だから、って
理由があるようなないような。
そんなゆるやかな心持ちで
桜を愛でて無邪気に浮かれる日本人の姿は
きっとケーベル先生の昔も、今も変わらない。

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熊埜御堂由香 16年3月27日放送

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kikoya0919
桜のはなし 宇野千代と淡墨桜

日本三大桜にも数えられ、散りぎわに、
淡い墨色に花びらをそめる岐阜県の根尾谷の淡墨桜。
樹齢1500年ともいわれるこの桜は、
何度も根を継ぎながら花を咲かせてきた。
ところが、台風で太い枝が折れてしまい、
もう枯れるのを待つしかない、となった時
その命を救ったのは作家の宇野千代だった。

資金援助を募り、この淡墨桜を小説でもとりあげ一躍有名にした。
ひたむきに桜を救った宇野千代が残した言葉がある。

 しあわせって、桜のようなものよ。
 ああ、今年も桜に会えた。ただそれだけのことなのに、
 ほっとしてしあわせな気分になるでしょう。
 私はいつか花咲婆さんになって、
 しあわせの種を籠いっぱいに入れて、ぱっぱっとまきたい。

宇野千代の残した老木の桜は、
今年も満開の花で人々にしあわせを運んでくる。

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石橋涼子 16年3月27日放送

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桜のはなし 弘前公園の桜守

今日は、桜の日。

桜と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、ソメイヨシノだろう。
人の手による品種改良で生まれたソメイヨシノは、
他の野生種に比べると病弱で枯れやすく、
平均寿命は60年くらいと言われている。

しかし、青森の弘前公園に暮らすソメイヨシノは
ほとんどが平均寿命をはるかに超える
樹齢100年以上の古木だという。

他で暮らすソメイヨシノと何が違うのかというと、
弘前公園には、桜専門の守り人、
桜守(さくらもり)と呼ばれる存在がついているのだ。

弱った枝はばっさり切って、若い枝をどんどん伸ばす。
桜の手入れとしては常識破りの手法は、
青森のりんご栽培で実地に基づいて培われたものだ。

300本以上あるソメイヨシノの健やかさと美しさを守る
ベテランの桜守は、桜は老木こそ美しいと考える。
そして、バッサリ。

 100年なんて、まだまだ若造

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石橋涼子 16年3月27日放送

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TANAKA Juuyoh
桜のはなし 梶井基次郎とフランスの花言葉

今日は、桜の日。
日本人が桜を愛するのは、
満開に咲きほこる姿の華やかさと、
散り際のはかなさゆえと言われる。

「桜の樹の下には死体が埋まっている」という
衝撃的な書き出しで有名な梶井基次郎の短編のように、
日本では桜の美しさに密やかで妖しい魅力を抱いている。

うってかわってフランスでは、桜の花言葉は
「Ne m’oubliez pas」
私を忘れないで、という意味だ。
散り際の良さをポジティブに、ロマンチックに捉えている。

さて、今年の桜の樹の下、あなたの気分はどっちだろうか。

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薄景子 16年3月27日放送

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gmk
桜のはなし 佐藤良二の「さくら道」

太平洋と日本海を桜で結ぼう。
そんな夢を掲げ、名古屋と金沢をつなぐ長距離バス
名金線沿いに桜を植え続けた男、佐藤良二。

バスの車掌だった彼が桜に魅せられたきっかけは、
ダムに沈んだ村から移植された老桜が
奇跡的に再び花を咲かせたことだった。

ふるさとを失った人々が
桜の下に集まり、笑顔を取り戻す。その姿に感銘を受け、
佐藤は全長266kmのバス通りを「さくら道(みち)」にしようと決意する。

仕事の空き時間も、休日も、給料をもつぎ込んで、
バス停に1本ずつ桜の植樹をし続けた。
しかし、志半ばで病に倒れ、47歳でこの世を去る。
植えた桜は12年間で約2000本あまり。
その夢は同僚や家族、彼の志に共鳴する
多くの人々に受け継がれた。

そんな佐藤が遺した言葉。

 この地球の上に天の川のように美しい花の星座をつくりたい。
 花を見る心がひとつになって、人々が仲よく暮らせるように。

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小野麻利江 16年3月27日放送

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桜のはなし 小野小町

 花の色は 移りにけりな いたづらに
 わが身世にふる ながめせしまに

平安時代の女流歌人・小野小町の、有名な和歌である。

春の長雨が降る間に、桜の色はすっかり褪せてしまった。
私の美しさも、物思いにふけっていた間にすっかり褪せてしまった。
と、散りゆく桜に、人の世の無常を重ねている。

小野小町が本当に、美貌の持ち主だったか。
その真偽は確かめようもないが、
紀貫之が小町を六歌仙に選び、
彼女の歌に次のような批評をしたことが、
「小町美女伝説」の発端とも言われている。

 いはば、よき女の、なやめるところあるににたり。

「内省的な美女のような歌」と紹介された、小野小町の歌。
時が移り、数えきれない回数の桜が散り、
歌の美しさは、小町みずからの美しさへと、昇華した。

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茂木彩海 16年3月27日放送

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qooh
桜のはなし 桜色の着物

お酒を飲みながら目で楽しんだり、
桜餅にして舌で味わったりするのと同じように、
布を桜色に染め上げて、着物にする。
これも昔からの日本の習慣だ。

桜の染色に必要なのは、意外にも花びらではなく、樹皮や、枝。

綺麗な桜色に染め上げるには、
桜が咲く前の木を使うのが一番だという。

その理由について、染織家で人間国宝でもある志村ふくみは言う。

 1年間じっと色を貯めていた桜の幹に宿した、生命の色をいただく

ほのかに色づく桜色を身にまとえば、
儚い命の力を借りて、春の喜びをより一層感じられるだろう。

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茂木彩海 16年3月27日放送

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Japanexperterna.se
桜のはなし 牧野 富太郎の目

ようやく訪れたお花見のシーズン。

お花見、とは言うものの
果たして花をしっかり見ているかと言われれば
怪しいのが本音ではないだろうか。

 花の着き方と開き方。
 花の部分的組み立て方とその形状。
 各部分の数と大きさと色と匂い。

日本の植物学者、牧野 富太郎の手にかかれば
お花見だって、こんなに本格的になる。

 単に見るばかりでなく、それを写生して絵にすれば
 さらにはっきり知ることができてよろしいのである。

自身を“植物の精だ”と語るほど花を愛した牧野。
この春は彼を見習って、本当のお花見、してみませんか。

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