2017 年 9 月 24 日 のアーカイブ

熊埜御堂 由香 2017年9月24日放送

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涙のはなし 涙の味わい

涙は、感情を持つ分泌物と言えるかもしれない。
なぜなら、その時の気分によって
成分が少しずつ違い味も変わるのだ。

悲しい時、嬉しい時は
副交感神経が優位になっていて甘い涙になり、
怒っている時、悔しい時は
交感神経が優位になり
ナトリウムなど電解質が分泌されて塩辛い涙になる。

そう、流れる涙は、よく知っている。
ひとのからだとこころが
しっかりとつながっていることを。

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小野麻利江 17年9月24日放送

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涙のはなし 殷富門院大輔の涙

見せばやな 雄島(をじま)の蜑(あま)の 袖だにも
濡れにぞ濡れし 色は変はらず

百人一首の中に、こんな恋の和歌がある。
詠み人は、平安時代末期の女流歌人、
殷富門院大輔(いんぷもんいんのたいふ)。

海女の袖でさえ、
どれほど波しぶきで濡れても
色が変わらないというのに。

あなたのつれなさを嘆く私の涙は
血の涙となり、
袖の色まで変わってしまった。

涙で袖を濡らすだけなら、
まだまだカワイイものよ。

平安時代の恋愛の先輩の、
そんな声が聞こえてきそうな一首である。

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茂木彩海 17年9月24日放送

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涙のはなし 辻征夫のことば

めそめそしない!
そんなことで泣かないの!

そう言われて育つ子供時代があるからだろうか。
大人にとって、涙はちょっと恥ずかしくて
人に見られたくないもの。

そんな涙について、
詩人、辻征夫はこんな言葉を残している。

泣きたいときにはたくさん泣くといい。
涙がたりなかったらお水を飲んで、泣きやむまで泣くといい。

涙のなかには、ことばで説明できない想いがつまっているもの。

無理矢理止めないで、涙が出るだけ出してやる。
そんな表現方法が、気持ちを落ち着かせることだってある。

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薄景子 17年9月24日放送

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涙のはなし ミシェル・ド・モンテーニュの言葉

自分の琴線にふれる
映画や音楽に出会ったとき。
言葉にならない感情がこみあげて、
涙が洪水のようにあふれだす。

そんな経験は誰しもあるもの。

そして、思いっきり泣いた後は
胸のもやもやまですっきりとして
心地よい爽快感に包まれる。

涙には、そんな
不思議な浄化力があるのだ。

フランスの哲学者、
ミシェル・ド・モンテーニュは言った。

「泣くことも一種の快楽である」と。

気持ちがざわめくときは、
泣ける映画や音楽の力を借りて
泣けるだけ泣いてみるのはどうだろう。

自分の涙は、
自分の心を洗うことができる
ただひとつの魔法の水なのだから。

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薄景子 17年9月24日放送

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涙のはなし ネイティブアメリカンの言葉

ネイティブアメリカンの教えに
こんな言葉がある。

あなたが生まれたとき、
周りの人は笑って、
あなたは泣いていたでしょう。
だからあなたが死ぬときは、
あなたが笑って、
周りの人が泣くような人生をおくりなさい。

人は生まれるときも、
旅立つときも、
涙とともにある。

そして、その涙はきっと
愛でできているのだと思う。

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茂木彩海 17年9月24日放送

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涙のはなし 涙のアート

今年の夏、東北の復興に捧ぐ芸術祭が
宮城県・石巻市で行われた。

国内外36組のアーティストが参加したこの芸術祭で
話題を呼んだ、ひとつのアート作品がある。

作品の名前は、「ひとかけら」。
制作したのは、アーティスト集団、チン↑ポム。

この作品は、現地の人々に震災の時の話を聞き、
話をしながら流した涙をあつめて凍結したもの。

作品自体は、牡鹿半島中部の洞仙寺に埋めた
冷凍コンテナの中にあり、地下まで階段を下りてはじめて
作品を見ることができる。

制作に至るきっかけとなったのは、遺族の言葉。

悲しみの涙はもういらないから
楽しいときに涙を流したい。

「ひとかけら」。その作品は、
涙は時に、前を向くために必要なものだと、教えてくれる。

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石橋涼子 17年9月24日放送

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涙のはなし 渥美清の泣いてたまるか

昭和41年に放送されたドラマ「泣いてたまるか」。
俳優の渥美清が、毎回違う役柄を演じる、
一話完結型の人情ドラマだ。

主題歌は、良池(よしいけ)まもるが詞を書き
渥美清が歌った。

天(そら)が泣いたら雨になる
山が泣くときゃ 水が出る
俺が泣いても 何にも出ない

だから、泣いてたまるか、と歌う渥美清が演じる主人公は、
毎回、異なる設定で異なる人生を背負っているけれど、
誰もがみんな不器用で真っ直ぐで、生きることに全力だ。
見ている方は、泣けるし、笑える。

庶民を演じて庶民を応援する、
渥美清らしさを味わうドラマ「泣いてたまるか」は、
「男はつらいよ」のルーツになったことでも有名だ。

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石橋涼子 17年9月24日放送

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涙のはなし バイロン卿の言葉

夜が怖くて泣いた子どもも、
お菓子を落として泣いた子どもも、
大人になると、なかなか涙を流さなくなる。
それは、心が強くなったということだろうか。

イギリスの詩人・バイロン卿の、こんな言葉がある。

忙しい人間は、涙のための時間を持たない。

大人が泣かないのはただ忙しいから、
と考えるのは少々寂しいものがある。

だからたまには泣こう、と言うのも極端だ。
たまに、子どもの頃に流した涙を思い出す
そんな時間を持ってみるのは、どうだろうか。

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