田中真輝 18年4月8日放送

180408-08
Renaud Camus
長い別れ

アメリカ人作家、レイモンド・チャンドラーの小説、
「ロング・グッドバイ」。

以降のハードボイルド小説の典型となった
この作品は、村上春樹をして最も影響を受けた
作品と言わしめた名作である。

主人公、フィリップ・マーロウは、大きな権力と
暴力の中で翻弄され、傷つきながらも、どこまでも
タフに、自分の信念を貫いていく。

そんなタフな頑固者が、ふとつぶやくセリフ。

「さよならを言うことは、少しだけ死ぬことだ」

一人称で語られる小説なのに、主人公マーロウの
心情が描写されることはほぼなく、だからこそ、
ふとしたセリフに滲む、この頑固者の限りない優しさ、
繊細さが、読む者の胸を衝く。

長い、別れ。そのタイトルが意味するものは、
マーロウの心の中に、いつまでも消えずに
止まり続ける別れの悲しみと切なさ、
なのかもしれない。

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