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「雪国の暮らし」ケの汁
平成最後の正月、お節料理やお雑煮、
楽しみましたか?
青森県、津軽地方にケの汁という
郷土料理があります。
大根、にんじん、ごぼうなどの根菜類、
ワラビ、ゼンマイなどの山菜、
油揚げや凍み豆腐などを煮込んで醤油や味噌で味を付けます。
家庭によって味付けや具は違うのでしょうけれど、
大晦日につくって、正月は餅を入れて、
雑煮のようにして食べるといいます。
「ケ」は、粥、飢饉の飢、会うという字の会から
来ているなど、諸説あります。
新鮮な野菜が手に入らなかった雪国の正月、
囲炉裏にかけた大鍋でケの汁をグツグツ煮込む。
それを囲んで親戚が集う。
かつてはそんな光景があったのかもしれません。
2019 年 1 月 6 日 のアーカイブ
大友美有紀 19年1月6日放送
大友美有紀 19年1月6日放送
「雪国の暮らし」キドい山菜
キドい、という方言があります。
においや刺激が強い、という意味のようです。
山形のある地方では、
キドい山菜を食べて冬の穢れを落とす、といいます。
キドさの強い山菜には、血行を良くしたり、
便秘を解消する作用がある。
冬の穢れ、つまり、冬の間にたまった悪いものを
山菜のキドさが除いてくれるというのです。
その昔、雪国では冬の間、生野菜が手に入りにくく、
食のバランスを欠くこともありました。
膨満感や閉塞感、鬱屈なども感じてしまいます。
それを解放してくれるのが、キドい山菜。
コゴミ、ワラビ、ウド、ふきのとうなど。
雪国でなくても、冬は憂鬱な日が多いですよね。
鬱憤がたまったら、キドい山菜、ためしてみませんか。
大友美有紀 19年1月6日放送
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「雪国の暮らし」ツララ
都会ではめったにみることができないツララ。
最近は雪国でも、
太くて長いツララを見かけることは
少ないそうです。
地球温暖化の影響もあるかもしれません。
萱葺き屋根が減ってきたこともひとつの原因です。
トタンや瓦、スレートの屋根には太くて長いツララは
つきにくいのだそうです。
萱を伝って、少しずつ落ちる雪水が、
夜ゆっくりとツララに育っていくのです。
富山のある地方では、ツララのことを
カネコロと呼びます。
金氷の意味なのでしょう。
カネコロ落としは、朝早くやると危ないからと、
10時ぐらいにお年寄りが竹の棒で叩いて落としたそうです。
カネコロを叩くと、美しい音がして、音楽のようだったともいいます。
澄んだ空気の中に響く、ツララの音色。
冬にだけ聞くことができる、自然の音楽です。
大友美有紀 19年1月6日放送
101LAB
「雪国の暮らし」正月トロロ
東北地方には、お正月にトロロを食べる地域もあります。
ごはんにかけたり、トロロ汁にしたり、
山芋を賽の目に切って醤油をかけて食べたりします。
稲作が普及するずっと昔、お餅がまだなかった時代、
冬の栄養源として山芋が重宝されていたころの
なごりなのかもしれません。
山芋は村の大切な資源として、
採掘が制限されていた地域もあります。
「山の口あけ」、つまり解禁日に
従わなければなりませんでした。
掘ってきた山芋は、土に埋めて管理します。
それをお正月に食べるというわけです。
雪国の食の知恵は、
すこやかに生きるための知恵なのです。
大友美有紀 19年1月6日放送
アルバトロス
「雪国の暮らし」雁風呂
春の季語に「雁風呂」という言葉があります。
青森の外ヶ浜あたりでは、雁が北へ帰るころ、
落ちている小枝を拾い集めて、風呂を沸かし、
旅人や地元の人が入ったといいます。
雁は、海を越えるとき小枝をくわえて飛び、
休むときは小枝を浮かべて、
その上に留ると言われています。
浜についたら、小枝を落として、内陸に向かいます。
春には、落としておいた小枝をくわえて帰っていきます。
浜に残った小枝は、内陸で命を落とした雁のものと
考えられていました。
雁風呂は、なくなった雁の供養のために立てるのです。
過酷な自然に立ち向かう姿に、
雪国の厳しい暮らしを重ねていたのかもしれません。
大友美有紀 19年1月6日放送
「雪国の暮らし」凍み餅、干し餅
正月の鏡餅を凍み餅、干し餅にして、
6月1日に食べるという伝承があります。
それは、お正月の年神さまの力がこめられた食べ物を食べて、
夏を乗り切る力にする、という意味と、
凍みや氷のような、冷涼さをうちに秘めた食べ物を食べて、
暑さや熱を乗り切る力を得ることできる、という考えなのです。
江戸時代には、青森の岩木山などの雪や氷を食べる習慣もあったとか。
雪や氷には暑気を乗り切る呪力があると信じられていたようです。
この冬、夏のために何かを準備してみましょうか。
大友美有紀 19年1月6日放送
© Hans Hillewaert
「雪国の暮らし」大雪の予兆・虫や動物
雪国にとって、降雪が多いか少ないかは、
暮らしの大問題です。
その予兆を、虫や動物の行いから読み取る
伝承があります。
たとえばカマキリの卵が高いと次の冬は雪が多い。
蚕の山繭が高いところにつくと、次の冬は大雪になる。
百舌の速贄や兎がたべる茎の位置が高いと
大雪になる、という伝承もあります。
虫や、動物が高いところで何かをするのは、
積もった雪を避けるためと、考えたのでしょう。
今年のカマキリの卵は、どうだったのでしょう。
大友美有紀 19年1月6日放送
まさお
「雪国の暮らし」大雪の予兆・植物
雪国の人が大雪を予測したのは、
虫や動物の行動だけではありません。
植物の成長にも目を向け、降雪量のサインを
感じとってきました。
特に蔓や茎。
大豆、葛、藤、ソバが高く伸びていると
次の冬は雪が多いと言われてきました。
自然を見つめ、自然を感じる。
雪国の人にとって、
それは生きることに近い行いだったのでしょう。
今年の雪は、どれくらい降るのでしょうか。