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山本貴宏 20年8月23日放送


Miyuki Kobayashi
水で涼をとる日本

本格的な夏がやってきた。
江戸時代の日本人は、水を活かして涼を呼んだ。
当時、庶民の間でも親しまれていたのは打ち水。
玄関先や道に水を撒くことで、涼しい風を室内に呼び込んでいた。
これは、客を招くときに気持ちよく入ってきて欲しいという
おもてなしの意味を込めて、礼儀作法として行われていたそうだ。
室内ではたっぷりの水が入った鉢の中で悠々と泳ぐ金魚を鑑賞したりと、
水に囲まれて過ごしていた江戸時代の日本人。
自然の風や水を意識的に感じてみると、
現在の巣篭もり生活にも時代を超えて涼が吹き込まれる。

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山本貴宏 20年8月23日放送



伝統芸能で涼をとる日本

江戸には、夏特有の歌舞伎演目があった。
通常の歌舞伎では、雨はパラパラという音で表現されるが、
舞台に実際の水で雨を降らせたり、
井戸からくんだ水を役者が実際にかぶったりする
本水(ほんみず)と呼ばれる趣向があった。
歌舞伎『夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)』もそのひとつ。
最大の山場は、主人公団七(だんしち)が
息子の恋人を連れ出そうとした義理の父を殺してしまうシーン。
舞台に本当の泥場をつくり、二人は泥だらけになる。
ついにとどめを刺した団七は、血や泥を洗い流すために井戸の水で洗うが、
このときに本水が使われ、演者は何度も井戸から組んだ水を頭からかぶる。
今でもなお、夏祭浪花鑑では前列の客席にブルーシートが配られ、
本当の水を使用している。

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山本貴宏 20年8月23日放送


Ramon Peco
閉めて涼をとるヨーロッパ

スペインやイタリアなども夏の暑さは厳しいものがあるが、
実はクーラーのない家が珍しくない。
そして、昼間にも関わらず薄暗い。
彼らの暑さ対策が、なんと「扉や窓を閉めきる」ことだからだ。
ドアを閉め、窓の木製の雨戸を閉めきると、部屋が薄暗くなる。

これは湿度が低いからこそ効果が出るヨーロッパ独自の技なのだ。
暑い昼が過ぎると涼しい夜がやってくる地域のため、
日中は夜の涼しさを少しでも逃がさないよう、窓を閉める。
昼間の太陽光を完全にシャットアウト。
そうして薄暗くなった部屋でシェスタ(昼寝)する。
それが、スペイン・イタリア流の真夏の過ごし方。
シェスタ(昼寝)に関しては、日本人も真似るべき習慣なのかもしれない。

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山本貴宏 20年8月23日放送


663highland
遮り涼をとる日本

日本の伝統的な家屋には、庇(ひさし)や簾がある。
庇は真夏の高い太陽光を遮るにはうってつけだ。
ただ、庇によっては、西日など低い位置から差し込む太陽光は防げないこともある。
そこで、庇や軒に垂らして日光を遮るとともに、
竹の隙間からの風を呼び込む簾が誕生した。
竹は高級であったため貴族の間で主に流通したが、
霧吹きで水をかければ、風が吹くたびに気化熱で涼しくなったり
網を設置してヘチマやゴーヤなどを育てるグリーンカーテンを作るなどの工夫は
庶民の手に簾が渡ることで生まれたそうな。
物の価値をさらに広げるのは、今も昔も庶民である。

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山本貴宏 20年8月23日放送


komehachi888
氷で涼をとる日本

夏本番、一時の涼をとるのに氷は欠かせない。
グラスにいっぱいの氷をカランと入れ、飲み物を注いでのむ。
クラッシュアイスを口に含めば、体を直接冷やしてくれる。
気温を氷点下まで下げる技術のなかった平安時代では
冬場にできた氷を穴などに入れて、
上から茅(かや)をかぶせる「氷室」で保存した。
氷室は近江や山城などに造られ、夏になると氷を宮中に運ぶ。
清少納言の「枕草子」に「上品なもの」としてかき氷の原型が登場している。
夏の氷は当然ながら庶民に行き渡るものではなかったが、
彼女が後世に伝えたかった夏の贅沢を今では簡単に味わえる。

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山本貴宏 20年8月23日放送


YoTuT
果物で涼をとるアフリカ

ジブチシティーは、アフリカ北東部のジブチとエチオピアにまたがる灼熱の三角地帯。
最高気温はなんと71.5度にまで達し、地上で最も暑い場所と言われている
その暑さは日向に置いてあるコーラの瓶を溶かすほどだ。
そんなジブチシティー、
昼間は人っ子ひとり出歩いていないが
夜になって涼しくなると商店街は一変にぎやかに。
雨もほとんど降らないジブチの店頭に並ぶのは色鮮やかな果実たち。
そんなジブチ人が大好きなのが、イスラム教徒のラマダンの夜に食べるスイカ。
9割が水分である上に、果汁には解熱作用があり熱中症対策にもなると言われている。
日本人にも馴染み深いスイカを今年もまた、頬張ってみたくなる。

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山本貴宏 20年8月23日放送



色で涼をとるスペイン

緑や水を眺めたり、視覚から涼をとるのも暑さをしのぐひとつの方法。
街全体に白い壁の家が立ち並ぶ景色が特徴的なのは、スペイン南部のアンダルシアだ。
西洋漆喰が塗られているのだが、
ただ景観を美しくするだけでなく、現地で暮らす人々の暑さ対策になっている。
アンダルシアは石炭岩の産地なので、白く塗った下はレンガ壁。
土でできているレンガは湿度を調節してくれるので、
気温が高くても、気化熱が発生しやすい。
そして白は熱を反射して吸収しないため、
室内を涼しくしてくれるというとても理にかなった美しい景観なのだ。
美と快適を両立させる国スペインへ、いつかまた足を運びたい。

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山本貴宏 20年8月23日放送



辛さで涼をとる東南アジア

東南アジアの食生活といえば「辛い料理」が思い浮かぶ。
元はといえば、手に入りにくい塩の代わりとして唐辛子を使ったからだと言われている。
スパイスがふんだんに使われた料理を食べると、
汗が体を冷やしてくれるというのはよく知られているが、
唐辛子が役立っているのは発汗作用だけではない。
辛味成分であるカプサイシンは食欲増進を助け、夏バテ防止になるのだ。
クーラーの元でのんびりもよし。
たくさん食べて汗をかくのもまた、健康的で、夏らしい。

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山本貴宏 20年3月15日放送



桜のはなし 暴れん坊将軍

お花見は昔、貴族や武士だけが家の庭や敷地内でするものだった。
庶民が花見をする場所を作ったのは、江戸幕府の8代将軍、徳川吉宗だった。

「享保の改革」の一環として浅草や飛鳥山に桜を植えて、
さらには花見客用の飲食店までつくらせ、
一般庶民も桜を楽しめるようにと環境を整えたのがはじまりと言われている。

度重なる放火など、治安が悪かった当時
庶民に花見という娯楽を与えることで人の心を安定させようとしたのだ。

300年の時が過ぎた2020年、忙しない春の日には
粋な暴れん坊将軍の心意気を感じながら花見を楽しんでみると、
また格別かもしれない。

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山本貴宏 20年3月15日放送



桜のはなし 桜大国日本

今でこそ、桜大国と言われる日本。
しかし、花を観賞するという行為は中国から伝わったものだった。

中国では、香りの強い梅が圧倒的に主流。
豪華で、富の象徴である牡丹や高潔で品のある梅を好むためだという。
中国文化の影響が深い万葉集には、
桜の歌が44首なのに比べ、梅の歌は118首も収められている。

その後、花の観賞が日本の文化になるにつれて
日本人は梅よりも桜を好むようになり、
古今和歌集では花と言えば桜を指すまでになった。

春になるといっせいに花開き、
またたく間に散ってしまう花びらの姿が日本人の武士道精神をくすぐったためだとか。

梅の香りよりも散っていく花びらに惚れ込んだ日本の武士道精神は
あなたの中にも、きっと眠っているはず。

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