2013 年 1 月 20 日 のアーカイブ

熊埜御堂由香 13年1月20日放送



夢のはなし 横光利一の鋭い指摘

新感覚派の天才といわれた
小説家横光利一がこんなことを言った。

 夢の話というのはひとりがすると
 からなず他の者がしたくなる。
 すると前に話したものは退屈するのだ。
 なぜならそれは夢に過ぎないからだ。

そう、夢とは取るに足りず、
ひとりよがりで、
自分にとってはおもしろおかしく、
ときに恥ずかしく、
それでも許されるものなのだ。

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熊埜御堂由香 13年1月20日放送



夢のはなし 漂う石牟礼道子

著書、苦海浄土(くかいじょうど)で知られ、
水俣に住み、水俣病と向き合ってきた作家、
石牟礼道子(いしむれ みちこ)。

故郷への真摯な愛から、
土着派とも呼ばれた石牟礼は、
意外にもこう言う。

水俣にこだわり続けるほどにそこから
ふわりと浮きあがり、漂う民になったように
感じる、と。
そしてこんな夢を見るのだ。

 毎夜、ねむり入るときまぼろしに誘われ、わたしは
 インカやトルキスタンのとある時代の
 砂漠の井戸を汲んでいる想いがする。

夢の世界でも、
石牟礼の意識は漂流しながら、
帰る場所を探している。

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石橋涼子  13年1月20日放送



夢のはなし ウィンザー・マッケイの夢の国

100年以上昔のアメリカの新聞に、
毎回、夢オチで終わるマンガが連載されていた。
ウィンザー・マッケイによる、
「夢の国のリトル・ニモ」という
新聞1ページのマンガだ。

ストーリーは毎回同じ構成。
ニモ少年が夢を見るところから始まり、
夢の国を冒険し、
最後にベッドから落ちて目が覚める。
それにも関わらず連載は10年以上続いたし、
今も根強いファンがいる。

それは、リトル・ニモが毎回冒険する
夢の世界のビジュアルが素晴らしかったからだ。
大きな鳥にくわえられて見下ろす夜の街。
ニューヨークの摩天楼、真夜中の海、巨大なキノコ。
リトル・ニモの夢の世界は、
誰もが見覚えのある、僕の、私の、夢の世界だった。

夢の世界で困ったときに思わず叫ぶ
「おうちに帰りたいよ、おかあさん」
というセリフは、
100年以上経った今も変わらず、
大人の胸をくすぐっている。

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石橋涼子  13年1月20日放送



夢のはなし つげ義春の描いた夢

作家の描く夢物語は面白い。
もしくは、変だ。

つげ義春は、エッセイでもマンガでも
自分が見た夢を題材にしたものが多い。
それらは、こんな変な夢を見てみたいと思える、
不思議な説得力がある。

出世作となった「ねじ式」は本人によると
ラーメン屋の屋根の上で見た夢
らしい。

どれ、私たちもちょっぴりヘンテコな場所で
昼寝をしてみようか。

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茂木彩海  13年1月20日放送



夢のはなし 黒澤明の理想

こんな夢を見た。
“私”は、美術館に飾られたゴッホの絵に魅せられている。
ふと気付くとそこは絵の中。
歩いていくうち、やがてゴッホと出会う。
「鴉のいる麦畑」の中を歩く彼の前を沢山の鴉が飛び立つ、その瞬間。
“私”はまた、何事も無かったかのように
展示会場のゴッホの絵の前に立っているのだった。

黒澤明が自分の見た夢をモチーフにつくった映画、『夢』。
第五話の「鴉(からす)」では、黒澤が尊敬するゴッホが現れる
幻想的な夢が描かれている。

現実には出会えない、誰かと出会う。
それも夢の醍醐味。
もし大好きな人と夢の中で出会えたら、あなたならどんな言葉を交わすだろう。

ちなみに黒澤は、夢の中のゴッホにこんな台詞を言わせている。

「絵になる風景を探すな
 よく見るとどんな自然でも美しい
 僕はその中で自分を意識しなくなる
 すると自然は夢のように絵になっていく」

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小野麻利江 13年1月20日放送



夢のはなし 夢を買った北条政子

「尼将軍」として鎌倉幕府の実権をにぎった女性、北条政子。
そんな政子が夫・源頼朝と出会えたのは
夢を買ったから、という話がある。

ある日政子の妹が、太陽と月を掌につかむ奇妙な夢を見た。
それを聞いた政子は、

 それは禍をもたらす夢である。私に売ってはどうか。

こう申し出たという。
当時、「不吉な夢を売ると禍を転嫁できる」という考え方があり、
妹は小袖の着物と引き換えに、その夢を売った。

しかし政子は、それが本当は、非常によい夢だと知っていた。

北条政子は、頼朝の妻となる前から、北条政子であった。

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薄景子  13年1月20日放送


Marcin Wichary
夢のはなし アラン・ケイ

アメリカの科学者、アラン・ケイは言った。

 未来を予測する最善の方法は、
 それを創り出すことである。

かなえたい夢は、口に出してみる。
そして、具体的に動きだしてみる。

自分の未来を創るのは自分しかいない。
それが、科学者が裏づける夢の真実。

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薄景子 13年1月20日放送


kartellpeople
夢のはなし サン=テグジュペリ

世界中で、聖書の次に読まれている「星の王子さま」。
その冒頭で、作者のサン=テグジュペリは、
友人にこんな献辞を捧げている。

 大人は、だれも、はじめは子どもだった。
 しかし、そのことを忘れずにいる大人は、いくらもいない。

子どものころはあふれるほど持っていたのに、
大人になると、手放してしまう夢や空想の世界。
それをジュペリは、大人たちへ手紙を書くように物語にこめ、
同時に、生涯一飛行士として、空への夢を追い続けた。

夜の飛行で眺める美しい星空は、
眠ってみる夢よりも、
はるかにまぶしい現実世界だったにちがいない。

ジュペリは言う。

 夢をみることは奇跡だ。

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