2013 年 10 月 27 日 のアーカイブ

小野麻利江 13年10月27日放送


おやつのはなし マキコさんのシュークリーム

高野文子(たかのふみこ)の漫画
「バスで四時に」の中に出てくる、
八個のシュークリーム。

お見合い相手の家へ向かうバスの中で、
主人公のマキコさんは、手みやげに買った
シュークリームを数えだす。

あちらが三人、あちら入れて四人
あとから遅れてもうひとり 三つあまる
これはきっとあしただ
あした、あちらで一つずつ

不安と緊張、そして八個のシュークリームを抱えて
バスは未来へ進んでいく。


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小野麻利江 13年10月27日放送


おやつのはなし 池波正太郎の好事福盧

「好事福盧(こうずぶくろ)」というお菓子がある。
中身をくりぬいた紀州蜜柑の皮に
蜜柑のゼリーをぎっしりと詰め込んだ
この京都のお菓子を
池波正太郎は、こよなく愛していた。

好事福盧が3つ手に入ると
ホテルですぐさま1つ食べ、
残る2つは冬の冷えたベランダに出しておき、
ほどよく冷えたものを、
缶ビールで楽しんでいたという。

ゼリーをすくい口へ運ぶと広がる、キュラソーの香り。
そのさわやかさに酔いしれながら、
池波は感慨にふけっていた。

 菓子をあんまり食べなくなった私だが、
 こういう菓子なら、いくつでも食べられる。




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熊埜御堂由香 13年10月27日放送

nurpax
おやつのはなし 小林カツ代 母のフライパンケーキ

料理研究家小林カツ代。
豪快に笑い、優しい味の家庭料理を
つくる、まさに日本のおっかさん。

そんな彼女は、子どもの頃
内気で、小学校も休みがちだったという。
家がなにより好きで、
お母さんも彼女に登校を無理強いしなかった。

そんなある日、お母さんは遠足のおやつに
大きな大きなフライパンケーキをつくった。
その名のとおり卵とバターと小麦粉を
フライパンでこんがり焼いたやわらかなケーキ。
それをまあるいままもっていかせた。
すると同級生たちがワッと集まってきた。
「カツ代ちゃん、ちょっとちょうだい」
「少しでいいからわたしも!」
つぎの遠足も、そのつぎの年も、お母さんは
フライパンケーキを焼いてくれた。


小林カツ代は
のちにこんな子育て論を披露している。

 子どもにはそんなにごたいそうなこと
 伝えなくても、おいしいもの作って育てたら
 スクスク育つんやないでしょうか?



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石橋涼子 13年10月27日放送


おやつのはなし ジョージ・ハリスン

ビートルズに「サヴォイ・トラッフル」という曲がある。
ジョージ・ハリスンによる作詞・作曲で
親友のエリック・クラプトンへ捧げた曲だという。
と言っても友情を歌っているわけではなく。
大の甘党で虫歯になったクラプトンをからかい、
チョコレートの名前をたっぷり歌いこんだ後に、歌詞はこう続く。

 what is sweet now, turns so sour
 今は甘いものが、あとで酸っぱくなるぞ


親友だから言える、甘い皮肉。


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茂木彩海 13年10月27日放送

jordanmit09
おやつのはなし 川端康成のクッキー

日本を代表する小説家、川端康成。
小さなお弁当を4回に分けて食べるほど食が細かったが、
どうも甘いものは別腹だったよう。
急性糖尿病にかかるほどの甘いもの好きだった。

そんな川端が「フランスでも滅多に味わへない本格的な良心的な作品」
と絶賛し、幾度となくおやつにした東京駒込の洋菓子店、カドのクッキー。

初代店主の高田壮一郎は、
日本人としてフランスへの菓子留学を果たした第一号生。
当時から珍しいお菓子がある店として有名だったという。

店内には川端直筆の推薦状が、いまでも額に入って飾られている。

 洋菓子のほんとうを同好の人びとに知ってもらへるのは、
 私の自慢でもある。


この「同好の人びと」の一人は、川端と師弟関係だった三島由紀夫。
彼もまた、カドの洋菓子をよくおやつに食べていたという。

おやつの好みが合えば、2人の絆はずっと深い。


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薄景子 13年10月27日放送

Brief Gasp
おやつのはなし 向田邦子の水羊羹

砂糖壺にいっぱいの砂糖があったらなぁ
いつその日が来るんだろう

そうつぶやくのは、少女の頃の向田邦子。
食糧事情が最悪だった戦前に、
まわりの人を喜ばせたい一心で
さつまいもの茶巾絞りや、
アルミの大きな弁当箱で寒天菓子をつくった。

少女はやがて、お菓子を見極める天才になり、
南青山の水羊羹をこよなく愛したという。

 新茶の出るころから店に並び、
 うちわを仕舞う頃にはひっそりと姿を消す、
 その短い命がいい


向田邦子に書かれると、
おやつはみんな生き物になる。


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茂木彩海 13年10月27日放送


おやつのはなし 手塚治虫の漫画

手塚治虫は生前、こんな言葉を残している。

 将来、漫画が子供の”おやつ”から”主食”になって、
 そのうち空気のように偏在する時代がくる。


予想は的中。今や漫画は世界に誇れる文化になった。

手塚先生、
あなたが愛したおやつはちゃんと、日本を支える主食になっています。


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薄景子 13年10月27日放送

3liz4
おやつのはなし 安藤鶴夫の鯛焼き

しっぽまであんこが入った鯛焼き。
今ではすっかり主流となったが、
そのきっかけをつくったのが
演劇評論家の安藤鶴夫である。

昭和28年、各界の著名人が
名店の美味しいものを紹介する連載で、
安藤は自宅近くにある駄菓子屋の
ひとつ10円の鯛焼きをとりあげた。

なんでも上げ底の世の中にあって、
尻尾まで餡の入るたいやきに人間の誠実さを味わった。

安藤はうまいまずいの話ではなく、
しっぽのあんこで豊かな気持ちになってほしいと願う
鯛焼き屋の心意気に感動したのだ。

記事は大反響を呼び、店は一躍有名に。
世の中の鯛焼きたちのしっぽには
あんこがぎゅうっとつめられていった。

人間に感動する男、安藤鶴夫は、
「カンドウスルオ」と呼ばれたという。


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