2013 年 10 月 13 日 のアーカイブ

松岡康 13年10月13日放送


引越しの日

10月13日、今日は引越しの日。

明治天皇が京都御所から
いまの皇居におうつりになった日にちなんで、
この日が制定された。

実はこの引越し、かなり大変だった。
天皇が東京に行ってしまうことに、
京都市民が猛反発したからだ。

このとき天皇は、
京都市民に向けてこう語ったという。

 東京は未開の地。
 教化のため、度々東京に行幸するが、
 決して京都を見捨てる訳ではない。

今でも天皇が京都を訪問するとき、
街の人は「おかえりなさい」
という気持ちで出迎えるのだ。


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礒部建多 13年10月13日放送

Ben Grogan
北島康介と引越し

オリンピック2種目連覇。
北京での北島康介の泳ぎは、
見る者すべてを魅了した。
しかしその直後、彼は10カ月も水泳を離れてしまう。

復帰のために北島が選んだ場所は、
住み慣れた日本ではなく
アメリカのカリフォルニア州であった。
プレッシャーのない場所で、純粋に水泳を楽しみたい、
そういう気持ちがあったという。

「自分らしさを失うより、
自分らしさを出して終わった方が、
記録が出なかったとしても満足できる。」

パンパシフィック水泳で北島は、
誰よりも速い泳ぎを見せ
世界最高記録をたたき出した。
そしてその日、誰よりも楽しそうに泳いだのも
また、北島だった。


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澁江俊一 13年10月13日放送

Gnsin
宮崎駿と引越し

「僕は自由です」
そう語り引退を表明した宮崎駿監督。
その宮崎作品には、本当によく「引越し」が描かれる。

「となりのトトロ」では緑の多い郊外の
古い家に、サツキとメイが引越してくる。
「魔女の宅急便」でも14歳のキキは
新しく暮らす街を探す旅に出るし、
「千と千尋の神隠し」でも
物語がはじまるのは引越しの日。
「ハウルの動く城」ではもはや
家そのものがあらゆる場所に移動している。

彼が描く引越しには
ワクワクするような気分と不安。
そして自分とは違う新しいものとの出会いがある。

実は、宮崎駿自身にも、
子どもの頃に引越しの経験があった。
疎開先から、東京へ。
しかし、その引越しは決して楽しいものではなく
むしろ自分の存在の根底を揺るがすような
不安に満ちたものだった。

だからこそ彼はアニメーションで
引越しをまるで冒険のように描くことで
子どもたちにメッセージを送ったのだ。

今いる場所に安住せずに
新しい世界に会いに行こう、と。


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松岡康 13年10月13日放送


北斎と引越し

かの天才浮世絵師葛飾北斎は、
実に93回引越しをしたという。
一日に3度も引越しをしたこともある。

借金取りから逃げるため、
部屋を掃除をするのが面倒だったため、
方位学のようなものに凝っていたため、
などいろいろな説があるが
そのほんとうの理由は分かっていない。

そんな引越し好きの北斎は、
89才でこの世を去る。
こんなことばを、最期に遺して。

 あと5年生きることができれば、真の絵師になれるのに…

現状につねに満足せず、
進化し続けようとした彼の人生に、
引越しは欠かせなかったのかもしれない。


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澁江俊一 13年10月13日放送


心のお引越し

「時をかける少女」
「サマーウォーズ」
「おおかみこどもの雨と雪」
日本のアニメ映画界で
快進撃を続ける細田守監督。
彼とタッグを組む脚本家は、
奥寺佐渡子(おくでらさとこ)。

奥寺のデビュー作は、
今は亡き相米慎二監督作品。
今もなお映画ファンから
高く評価されている「お引越し」である。

物語の主人公は
大好きな両親の別居をきっかけに
揺れ動く11歳の少女レンコ。

わたしはお父さんとお母さんが喧嘩してもガマンしたよ。
そやのになんでお父さんらはガマンできひんの?

絶対に離婚してほしくないけれど
次第にそれを受け入れ、レンコは成長する。
少女から、大人へのお引越し。
奥寺がレンコのセリフに込めた
その時期にしか言えない繊細な感情は
確かにフィルムに焼き付いている。


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奥村広乃 13年10月13日放送


わが子のための引越し

中国の故事に、
孟母三遷(もうぼさんせん)という話がある。

孟子が幼い頃、彼の家は墓地のすぐ側にあった。
そのためいつも、葬式のまねごとばかりしていた。
それを見た孟子の母は引越しを決意する。

次に住んだのは市場の近く。
孟子は商人の駆け引きのまねをして遊ぶようになる。
母は、2度目の引越しを決意する。

次に選んだ住まいは、学校のそば。
孟子は、学生たちの祭礼の儀式や、
礼儀作法の真似事をして遊ぶようになった。
母は安心し、学校のそばに腰を落着ける。

そして孟子は勉学にはげみ、
孔子とならぶ、代表的な儒学者となる。

少年老いやすく学なりがたし。

母の想いがひしと伝わる故事だが、
今の日本で子供のために3度も引越すのは
簡単ではなさそうだ。


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澁江俊一 13年10月13日放送

minasodaboy
メジャーリーガーと引越し

元メジャーリーガー、田口壮。
彼がアメリカにいた8年間で
暮らした場所は、実に22か所にもなる。

メジャーとマイナーを
行き来する選手の引越しはいつも突然だ。
田口の妻、恵美子は息子と犬と荷物を乗せて
自らクルマを運転し、引越しを繰り返した。
すべては夫のそばにいることで
少しでもリラックスしてプレーさせるため。

「こんなはずじゃなかった」
それは田口夫妻が唯一、
口にしないと決めていた言葉。

メジャーリーグは決して
華やかなだけの世界ではないのだ。


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奥村広乃 13年10月13日放送


引越しに欠かせない物

引っ越しにかかせない段ボール。
その歴史は100年以上さかのぼることができる。

1904年。
当時の日本には、「電球包み紙」とよばれる
ジグザグと折り目をつけたボール紙が使われていた。
電球やガラス瓶など割れやすいものを包むために用いられていたが、
弾力性がなく品質的には不十分だった。

日本ではじめて段ボールが作られたのは1909年。
井上貞治郎によって機械化、量産化された。
厚紙を貼り合わせ、弾力性のある段ボールは
日本の産業化の波にのり、またたく間に広まっていった。

「きんとま」。

井上は、これを経営哲学としている。

「きん」はお金と、鉄のように硬い意志。
「ま」は真心の真と、あいだの間を意味している。

硬い意志、お金、真心、間。
この4つを握ったら死んでも離すな。

そんな井上が生み出した段ボールは、
今も大切なものを包み、守り、運んでいる。


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