Tab Tannery
ロンドン塔のワタリガラス
今年、2017年は、酉年。
ワタリガラスという鳥がいる。
我々が都心で見かけるカラスとは
少し違うこの鳥、
実は人類と深い深い縁がある。
北欧神話や旧約聖書のノアの箱舟で
陸地を探すために
船から放たれた鳥がワタリガラスなのだ。
新天地に向かう人類を、
導く鳥だったのだろう。
イギリスのロンドン塔の庭では
チャールズ2世の勅令で
今でもワタリガラスが飼われている。
ロンドン塔から
ワタリガラスがいなくなると
英国は滅びるという言い伝えを
イギリスの人々は今も信じているのだ。
EUを離脱した国を
ワタリガラスは
どこへ導こうとしているのか。
2017 年 1 月 15 日 のアーカイブ
澁江俊一 17年1月15日放送
田中真輝 17年1月15日放送
オーデュポンの魂
今年、2017年は、酉年。
ジョン・ジェームズ・オーデュポンは
アメリカの画家・鳥類研究家。
1827年、彼は12年の歳月をかけて完成させた
全4巻の図鑑「アメリカの鳥類」を出版する。
そこには彼が描いた453枚の彩色銅版画が
収められていた。驚くべきはそのサイズ。
この図鑑、縦が1メートル、横が68センチもあり、
大人二人掛かりでないと持ち運べないほどの超大判なのだ。
実物大で生き生きと描かれた鳥類の姿は、
見るものを、ただ圧倒する。
それは、人生をかけて鳥を見つめ続けた
オーデュポンの魂そのものを、そこに
見るからに他ならない。
澁江俊一 17年1月15日放送
日本代表を導くカラス
今年、2017年は、酉年。
ワタリガラスという鳥がいる。
世界各地の神話で、
人類を導く役割を担っていたワタリガラス。
日本にも、同じような神話がある。
それが八咫烏の神話だ。
神武天皇が熊野の国から
大和国へ向かうのを導いたのが八咫烏なのだ。
八咫は大きなという意味の言葉で
つまりオオガラスということ。
そしてワタリガラスは、
日本ではオオガラスとも呼ばれている。
今では日本サッカー協会の
シンボルマークとして知られるこのカラス。
日本サッカーとの歴史は古く、昭和6年。
漢文学者、内野台嶺(うちのたいれい)の
発案でつくられた。
ボールをゴールに導いてほしい
という願いが込められている。
澁江俊一 17年1月15日放送
Augustus Binu
恐怖に魅せられた男
今年、2017年は、酉年。
アルフレッド・ヒッチコック監督の映画、
「鳥」は、大量の鳥たちに訳もなく襲われ続ける
人々の姿が描かれるサスペンスムービーの傑作。
その不条理さ、得体の知れない怖さに、
ヒッチコックの真骨頂を見ることができる。
ではなぜ、鳥なのか。
ヒッチコックはあるインタビューでこう答えている。
「恐怖を取り除く唯一の方法は、
それを映画にしてしまうことだ」
ヒッチコックは、鳥に得体の知れない恐ろしさを感じ、
また一方で、その恐怖に魅せられていたに違いない。
澁江俊一 17年1月15日放送
KenWalker
写真家を導いたワタリガラス
2017年は、酉年。
ワタリガラスという鳥がいる。
世界各地の神話で、
人類を導く役割を担っていたワタリガラス。
アラスカに住むインディアンには
とりわけワタリガラスの神話が多い。
モンゴロイドである彼らは
かつてこのワタリガラスに導かれて
ベーリング海を越え、
北方アジアから新大陸アメリカへとやってきたのだ。
その神話を追い続けたのが
写真家の星野道夫。
彼はその謎をたどるように
アラスカからシベリアに渡り
ワタリガラスの神話を集める旅をしていた。
その途中、ヒグマに襲われ、命を落とした。
星野道夫はもういない。
けれど今でも、
星野が残したたくさんの写真と言葉は、
ワタリガラスのように
私たちを彼が探していた場所へと、導こうとしている。
澁江俊一 17年1月15日放送
天才絵師のトリック
今年、2017年は、酉年。
江戸時代に活躍した天才絵師、伊藤若冲。
彼は鶏をこよなく愛し、動植物をモチーフにした
作品集「動植綵絵(どうしょくさいえ)」シリーズ
全30点のうち、実に8点が鶏を描いたものである。
中でも「群鶏図」は圧巻。
13羽の鶏が絵の中でひしめきあい、あたかも
動き回っているような錯覚すら覚える。
実は、この錯覚を引き起こすために、若冲は
様々な仕掛けを意図的に施している。
せわしなく動き回る鶏たちを眺めながら、
次はどんな仕掛けで驚かせてやろうか、と
ほくそ笑む若冲の姿が眼に浮かぶようだ。
澁江俊一 17年1月15日放送
国鳥になったワタリガラス
今年、2017年は、酉年。
ワタリガラスという鳥がいる。
世界各地の神話で、
人類を導く役割を担っていたワタリガラス。
このワタリガラスを
国鳥に定めている国がある。
かつてGNH=国民総幸福量という提案で
世界が注目した国、ブータンだ。
幸せという
数値化できない指標を使い
経済ですべてを理解しようとする世界を、
別の場所へ導こうとしているブータン。
その国王の冠には今も、
ワタリガラスの彫刻が飾られている。
澁江俊一 17年1月15日放送
飛翔への憧れ
今年、2017年は、酉年。
レオナルド・ダ・ヴィンチが残した
膨大な手稿の中に、36ページからなる
「鳥の飛翔に関する手稿」というメモがある。
そこには、鳥が飛翔するための力学構造についての
考察が詳細にまとめられている。
この先見性と挑戦心に満ちた手稿の裏表紙に、
ダ・ヴィンチはこう記している。
「巨大な鳥は、偉大なチェチェロ山の頂きから初飛行を行い、
全世界を驚嘆の声で満たし、すべての書物をその名声で
満たすであろう。」
その予言は現実となり、わたしたちは、空へ、そして
さらなる宇宙へと飛び立とうとしている。
鳥たちへの憧れを胸に。