Vincent_AF
ひとりとひとり 久世光彦と向田邦子
1960年代から80年代にかけて、
数々のヒットドラマをうみだした二人がいる。
演出家・久世光彦と
脚本家・向田邦子。
二人は何でも一緒につくった。
そして、よく電話を掛け合った。
久世は、大事な資料を無くした時に、
まず向田に電話を掛ける。
向田は、何かを思いついた時、
必ず久世に電話を掛ける。
久世は、向田が遅刻する時、
言い訳のバリエーションが少ないことを知っていた。
向田は、乳がんが見つかった時の不安を、
電話先の沈黙で久世に伝えた。
替えのきかないその関係を、久世はこんな言葉で表している。
もし、あなたのまわりに、長いこと親しくしているくせに、
指一本触ったことがない人がいたら、
その人を大切にしなさい
2017 年 1 月 14 日 のアーカイブ
三國菜恵 17年1月14日放送
中村直史 17年1月14日放送
sympathy
ひとりとひとり 宮本常一と渋沢敬三
旅する巨人と言われた民俗学者、宮本常一(みやもと つねいち)。
彼を偉大な民俗学者にしたのは、
才能と努力だけではなかった。
「パトロン」がいた。
渋沢敬三(しぶさわけいぞう)。
第16代日本銀行総裁。のちの大蔵大臣。
日本の辺境に残る文化をつぶさに記録した宮本を、導き、援助しつづけた。
渋沢は、日本の経済の中心にいながら、
つねに日本の「すみずみ」のことを考えていた。
その思いを、宮本常一に託したのかもしれない。
渋沢のこんな言葉が残っている。
舞台で主役をつとめていると、多くのものを見落としてしまう。
その見落とされたものの中にこそ大切なものがある。
それを見つけてゆくことだ。
人の喜びを自分が本当に喜べるようになることだ。
三島邦彦 17年1月14日放送
The Dayton/Montgomery County CVB
ひとりとひとり 大森荘蔵と坂本龍一
哲学者・大森荘蔵。
日常の言葉で自らの哲学を語る彼には
一般の読者も多かった。
音楽家の坂本龍一もまた、
そんな大森哲学の愛読者の一人だった。
哲学とは理解するものと思っていたのが、
芸術を楽しむように享受することもできるのを
知らしめていただいた大森先生に感謝。
そう語る坂本は、ある日、
大森から直接哲学講義を受ける機会を得る。
坂本龍一の専門である「音」を巡りふたりは対話する。
大森は語る。
音は生まれた時に消えている。
時計のコチコチはまさに過ぎゆく時の足音であり、
音は時の流れる響きなのである。
時間とは何か、音とは何か。
大森の考察を、坂本の実感が裏付けていく。
哲学する音楽家と芸術的な哲学者が
対話を通じて響き合った。
三島邦彦 17年1月14日放送
ひとりとひとり 小津安二郎と原節子
世界最古の映画協会、
英国映画協会は10年に一度、
「映画監督が選ぶベスト映画」を発表している。
最新のランキングで1位に選ばれたのが、
小津安二郎監督の「東京物語」。
その「東京物語」に加え、
「晩春」「秋刀魚の味」など、
小津の代表作で主演を演じたのが
女優・原節子。
役者への厳しい演技指導で知られる小津だが、
原節子に対しては賛辞を惜しまなかった。
映画が人間を描く以上、
知性とか教養とかいうものも現れてこなければならない、
実際、お世辞ぬきにして、
日本の映画女優としては最高だと私は思っている。
名監督と大女優との強い絆が、
映画史に残る傑作を支えた。
三國菜恵 17年1月14日放送
ひとりとひとり 坂本龍一とNIGO
テレビの中で、雑誌の中で、
「この人、なんかいいな」と感じる人がいる。
そう思うのは芸能人同士であっても同じである。
作曲家・坂本龍一はある人のことが気になっていた。
アパレルブランド、A BATHING APEの
クリエイティブディレクターして知られるNIGO。
坂本は自身のトークショーのゲストにNIGOを招いた。
ほぼ初対面だったけれど、ある話題をきっかけに、
ふたりの会話の距離はぐっと縮まる。
子どものころ、家に百科事典があって、
読んではいないけれどあの存在感が好きだった
狭いツボを共有できて「やっぱり」と思った坂本は、
そのあとすぐ、連絡先を教えてと言った。