Arturo Espinosa
よりよき世界の破片たち ミヒャエル・エンデ
この作品で伝えたいメッセージは何ですか?
作家や映画監督をはじめ、
あらゆるアーティストを悩ませるこの質問。
『モモ』や『はてしない物語』で知られる
小説家ミヒャエル・エンデは、
作品の意味を問う大人の読者からの手紙にこう答えた。
よい詩とは、世界をよりよくするためにあるのではありません。
その詩そのものが、よりよき世界の破片(かけら)なのです。
そこにあるものを、丸ごと味わうこと。
エンデの本の最も熱心な読者である子どもたちには
自然とできていることかもしれません。
2017 年 10 月 28 日 のアーカイブ
三島邦彦 17年10月28日放送
三島邦彦 17年10月28日放送
よりよき世界の破片たち オスカー・ニーマイヤー
ブラジルの高級住宅街。
広い庭で空想のスケッチを
楽しんでいた少年はやがて、
104歳まで現役を貫いた伝説の建築家となった。
オスカー・ニーマイヤー。
若き日に現代建築の巨匠ル・コルビジェとともに設計した
国連本部ビルをはじめ、
首都ブラジリアの都市計画など、
その100年を超える人生、
80年を超える建築人生は、
最後まで情熱が絶えることはなかった。
『ニーマイヤー 104歳の最終講義』
という本で、彼は人生についてこう語る。
人生は一瞬だ。
それゆえに私たちは学ばなければならず、また、
礼儀正しくそこを通過しなければならない。
誰よりも学び、誰よりも礼儀正しかった建築家。
そして、その生涯を終えるまで
空想のスケッチを楽しむ心を
忘れなかった人だった。
中村直史 17年10月28日放送
whologwhy
よりよき世界の破片たち 橘曙覧
江戸時代に生きた歌人、
橘曙覧(たちばなのあけみ)。
短歌の伝統といえば、
花鳥風月を歌に詠むこと。
けれど橘曙覧は、
日々の何気ない「たのしみ」を歌にした。
たのしみは妻子(めこ)むつまじくうちつどひ頭(かしら)ならべて物をくふ時
(たのしみは、妻と子が仲良く集まり、頭をならべてごはんを食べる時)
たのしみは朝おきいでて昨日まで無かりし花の咲ける見る時
(たのしみは、朝起きて、昨日まで咲いてなかった花が咲いているのを見た時)
たのしみは心をおかぬ友どちと笑ひかたりて腹をよるとき
(たのしみは、気がねない友だちと語り、笑いあって、お腹をよじるとき)
何百年もたって、インターネットにAIと
社会はずいぶん変化したけれど、
人が「いいなあ」と思う対象って、
そんなに変わらないのかもしれません。
三國菜恵 17年10月28日放送
よりよき世界の破片たち 伊藤菜衣子
注文の多い夫と暮らして
日々のありかたを模索するうちに、
これは冒険なんじゃないかしらと気づいた。
暮らしかた冒険家・伊藤菜衣子(いとうさいこ)。
これまでの暮らしの常識を見直し、
これからの暮らしかたとは何かを探っている。
夫婦で住む場所を探す旅にでて、
たどりついたのは北海道の地だった。
DIY を繰り返していくうちに、断熱性と気密性の高い、
リノベーションハウスができあがった。
2040年には、日本の40%が空き家になる。
「ないものねだりより、あるものみっけの暮らしかた」
そういう感覚がこれからきっと大事になると伊藤は語る。
三國菜恵 17年10月28日放送
zacktionman
よりよき世界の破片たち 森栄喜
LGBTという言葉がうまれるずっと前から、
男と男の愛情も、女と女の愛情も、普遍的にそこにあった。
でも、いまの自分はまだセクシャルマイノリティ。
そう公言する写真家・森栄喜(もりえいき)は、
写真を通じて、家族とは何か、恋人とは何か、
社会に問いを立ててきた。
森は、時に、街の人にもシャッターを押してもらう。
ウエディングドレスを思わせる
白い衣装に身を包んだ男性二人を、
商店街の通りすがりの、老夫婦が撮る、小学生が撮る。
そこには森と、パートナーの、くったくのない表情がきざまれる。
世界が変わることは、私達が変わることだと、その作品は教えてくれる。