森由里佳 18年12月16日放送

181216-05

一枚の、広告

三年間留学して語学を身につけたのち外交官に採用される、
という外務省による留学生の募集広告。

それが一人の青年の目に留まったのは、
早稲田大学の図書館でのことだった。

学費を自ら稼いでいた彼は、
これなら思い切り英語の勉強ができる!と喜び、猛勉強。
一か月後に迫っていた試験を見事に合格してのけた。

青年の名は、杉原千畝。
この一枚の広告との出逢いが、
約20年後、
ナチスの迫害から逃れた多くの避難民を救うことになった。

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森由里佳 18年12月16日放送

181216-06

一枚の、ビザ

その一枚の紙さえあれば、国を出られる。
ナチスの手が刻々と迫るリトアニアでは、
ユダヤの人びとがビザを求めて各国の領事館に押しかけた。

戦争が激化する1940年当時、
リトアニア・カウナスの日本領事館に赴任していた
外交官・杉原千畝は頭を抱えていた。

彼らの願いに応えることは、
国命に背く行為だった。

だが、杉原は知っていた。
たった一枚のその紙で、人の命を救えるということも、
その権限が、自分の手の中にあるということも。

悩んだ挙句、杉原は、帰国する日まで
およそ2139通のビザを発行し、6000人の命を救った。

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星合摩美 18年12月16日放送

181216-07

一枚の、白紙

日本には手紙を一枚で書き終えた場合、
もう一枚白紙を添えるという習慣がある。

由来は諸説ある。
昔は紙が貴重品であったため、返信用に添えたという説。
文面は短くなってしまったが、
本当はもっと書きたいという気持ちを表したという説。
裏側から透けて、他人に読まれるのを防ぐためという説もある。
いずれにせよ、一枚の白紙には相手への敬意と気遣いが込められている。

今日は紙の記念日。
メールやSNSも便利だけれど、
たまには大切なひとに、一筆いかがですか。

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星合摩美 18年12月16日放送

181216-08

一枚の、折り紙

一枚の紙から鶴が生まれ、朝顔が咲く。
日本のおりがみの歴史は古い。

平安時代にはすでにカエルの折り方があったという。
おなじみの鶴ややっこさんが登場したのは、室町時代と言われている。
とはいえ当時、紙は高級品。
庶民が遊ぶようになるのは、
和紙の生産量が増えた江戸時代に入ってからのこと。

現代ではおりがみは遊びの枠を越え、
リハビリや、人工衛星の太陽電池パネルの設計にも応用されている。
話題の山手線新駅「高輪ゲートウェイ」の屋根のデザインも、
おりがみをモチーフにしたという。

おりがみの歴史は未来へと続く。

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渋谷三紀 18年12月15日放送

181215-01

こたつの話 日本の家とこたつ

日本の冬の風物詩といえば、こたつ。
鎌倉時代に書かれた徒然草にも
「家は夏に合わせる」とあるように、
昔から日本の家屋は、
風通し良くつくられていました。
そのため、冬は部屋全体が温まりにくく、
冷たい空気が下に溜まって、
下半身を冷やしてしまいます。
床に座る日本の暮らしには、
こたつが理にかなっているのです。
たとえ下火になっても、
日本の冬からこたつが
絶滅することはない気がします。

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渋谷三紀 18年12月15日放送

181215-02
Kunitaka NIIDATE
こたつの話 室町時代のこたつ

室町時代の冬にもこたつがありました。
熱源は、囲炉裏。
消えかけの炭に灰をかけてから
その上に脚のついた台を置き、
布団をかぶせるスタイルです。
こたつからなかなか出られない人は、
「こたつ弁慶!」と呼ばれていたそうです。
今でもいますよね、こたつ弁慶。
時代につれてモノは変わっても、
ヒトというのは変わりません。

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渋谷三紀 18年12月15日放送

181215-03

こたつの話 こたつ開き

江戸時代には、「こたつ開き」の日がありました。
武士の家では旧暦で10月最初の亥の日、
庶民は2回目の亥の日になると、
こたつを部屋に出すのです。
なぜ亥の日かといえば、
摩利支天と呼ばれる炎の神である亥は、
防火の神でもあったから。
当時の囲炉裏を使ったこたつは
火傷や火事が絶えず、
防火は人々の切実な願いだったようです。

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渋谷三紀 18年12月15日放送

181215-04

こたつの話 イランのこたつ

日本から7000キロ離れた国、イラン。
首都テヘランが東京とほぼ同じ緯度にあるイランには、
コルシと呼ばれるこたつがあります。
意外と冬は寒いのです。
こたつにはみかんが定番ですが、
コルシにはざくろ。
冬になると農業ができず、夜が長いため、
コルシには自然と家族が集まってきます。
コルシを囲んで聞くおじいちゃんおばあちゃんの昔話や
お父さんお母さんの思い出話が、
イランの家族のきずなを温めてきたのです。

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渋谷三紀 18年12月15日放送

181215-05

こたつの話 ねこはこたつで

「ねこはこたつで丸くなる」と歌われるように、
ねこはこたつが大好きです。
どうしてでしょう。
ひとつは暖かいから。
それと、暗くて狭いからです。
野生動物だった頃、敵から身を隠していたねこ。
その名残で暗く狭い場所にいると、
本能的に安心できるのです。
のぼせないよう気をつけてあげながら、
いっしょにこたつで丸くなりましょう。
幸せそうな姿は見るだけでこころが温まりますしね。

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奥村広乃 18年12月9日放送

181208-01
かがみ~
雪は花

1000年以上も昔。
雪を花に見立てた歌を詠んだ人がいる。

 霞たち このめもはるの雪ふれば 花なき里も花ぞ散りける

詠み人は三十六歌仙の一人、紀貫之。
まだ花の咲いていない里に花のような雪が降る。
なんと美しい風景だろう。

平成最後の冬。
雪がこの都会を白くしたら。
その美しい余白を
あなたは何に見立てるだろうか。

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