三島邦彦 14年1月26日放送



三島邦彦 マーク・トウェイン

児童文学の名作『トム・ソーヤーの冒険』。
その8年後、作者のマーク・トウェインは続編となる
『ハックルベリー・フィンの冒険』を書きあげた。
ただし、書き上がったのは児童文学ではなく、
アメリカ文学史に輝く文学作品だった。

もはや子どもむけの物語ではない。
そのことを示すため、
トウェインは物語をこのような警告から始めた。

 警告

 この物語に主題を見出そうとする者は起訴される。
 教訓を見出そうとする者は追放される。
 筋を見出そうとする者は射殺される。

      著者の命により 兵站部長G・G

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三國菜恵 14年1月26日放送



はじまりの言葉 寺山修司

シャツの胸ポケットにおさまるサイズの

短くて、美しく、時にどきりとさせられる名言の数々を

ぎゅっと一冊に詰め込んだ本がある。

劇作家・寺山修司作『ポケットに名言を』。



彼はこの本を編さんするにあたっての動機を、

冒頭にこんな一行で書き記している。



 言葉を友人に持ちたいと思うことがある。

 それは、旅路の途中でじぶんがたった一人だと言うことに

 気がついたときにである。

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中村直史 14年1月26日放送



はじまりの言葉 市川中車

名門の出ならば、2歳での初舞台もある。
とすれば、44年遅れの初舞台だった。

歌舞伎役者、市川中車。
俳優名、香川照之。
2歳の時、歌舞伎役者である父が家を出てしまったため、
歌舞伎の道は閉ざされたはずだった。

自らが子どもを持って、不可能に挑むことにした。

その襲名披露。
鬼気迫る形相で行った挨拶は、こんな言葉だった。

 生涯かけて精進し、九代目を名乗らせていただく責任を
 果たしていく覚悟でございます。

無謀な挑戦かもしれない。
しかし、一歩踏みだした者にしかわからない
世界がかならず待っている。

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岡安徹 14年1月25日放送


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壊す人(陸上選手:アレン・ジョンソン)

立ちはだかるハードルは、なぎ倒す
そんな豪快な走りで
世界陸上で4度の金メダルを獲得した選手がいた。
その名はアレン・ジョンソン。
通称「ハードルなぎ倒し男」。

シドニーオリンピックでは
4着とメダルを逃してしまったが、
そのインタビューはユーモアに溢れていた。

「結果には不満足だが、
 ハードルを倒した台数には満足した」

ハードルは飛び超えるもの、
なんて常識を軽く飛び越えた時、
彼は記録にも記憶にも残る男になった。

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岡安徹 14年1月25日放送


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壊す人(作曲家ジョン・ケージ)

これは、実験音楽家と呼ばれた
ジョン・ケージがつくった曲の通称。

世界で唯一、最初から最後まで
演奏者が全く音を出さない曲である。

楽譜には第一楽章から第三楽章まで、
「休む」と記されている。
4分33秒は、初めてこの曲が演奏された時の
演奏時間。

音楽は音を楽しむもの、という常識が
崩れていくような感覚。

ジョン・ケージは、
心の中で凝り固まった何かが壊れる音こそ
音楽と言いたかったのかもしれない。

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伊藤健一郎 14年1月25日放送



壊す人(映画監督:園子温)

アクション、ホラー、サスペンス、コメディー、ヒューマンドラマ。
ジャンルにとらわれず様々な映画を撮り続ける、園子温監督。

彼は、あるインタビューでこう話している。

 イメージを常に壊し続けることが重要だ。
 ピカソのように、画風をどんどん変えていく。
 実験がなかったら、やる必要がない。

そんな園監督はこのたび、お笑い芸人デビューを果たした。
どうやら、映画というジャンルにもとらわれていなかったらしい。

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伊藤健一郎 14年1月25日放送


Coyau
壊す人(映画監督:園子温)

映画監督、園子温。
大物俳優の起用が話題をよぶ日本映画界で、
園監督が起用する役者は、ほぼ無名。

予算のせいもあるだろう。
けれど、その理由について、彼は、こんな言葉を残している。

 日本には、
 シンデレラストーリーが
 少なすぎる。

『紀子の食卓』でデビューを飾った吉高由里子しかり、
『愛のむきだし』で女優のイメージを定着させた満島ひかりしかり。
園監督作品でひと皮むけた役者は多い。

彼は、知っているのだろう。
大物を起用するよりも、大物に育て上げることのほうが、
これからの映画界を、はるかに面白くできることを。

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熊埜御堂由香 14年1月19日放送


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誕生にまつわる話 赤ちゃんの手のひら

生まれたての赤ちゃんには、
握った手に指をいれると握り返す
原始反射といわれる反応がある。

それを見て昔のひとは、こう言った

 赤ちゃんの握った手の中には
 幸せが詰まっている。

無意識の赤ちゃんが、
ギュッと手に力を込めるように。
生まれながらにして、人には、人を
幸福にする力が宿っている。

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熊埜御堂由香 14年1月19日放送


L’s Mommy
誕生にまつわる話 はじめてのおつかい

1976年に発売された、名作絵本
「はじめてのおつかい」。
ある日、赤ちゃんの世話に忙しい母が
5歳の女の子におつかいをたのむ。
細やかな絵とお話で、お姉ちゃんに
なった女の子の心情を描いている。

お話を書いた作家の筒井頼子さんは言う。

 物語はつくるものではなく、生まれてくるものだと思うんです。
 つくったお話は、はかなく消えてしまう気がするけど、
 生まれてきたお話は消えないように思うんです。

そう、妹や弟の誕生は、
姉や兄の誕生でもある。
今日も、新しい産声とともに、
物語が生まれる。

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石橋涼子 14年1月19日放送



誕生にまつわる話 ウィリアム・サローヤン

アメリカの作家、ウィリアム・サローヤン。

彼は貧しい移民の子として生まれ、
幼くして父を亡くし、
大恐慌時代に職を転々としながら青春期を過ごした。

恵まれた環境で育ったとは言い難い彼だが、
作品では庶民の生活を温かくユーモアたっぷりに描いた。
底抜けに明るくて、ときにセンチメンタルなストーリーは
大人からこどもまで多くの人に愛された。

彼はこんな言葉を残している。

 自分の誕生に我々は関与できないのであるから、
 生まれたということ自体、
 すでに「生きよ」という運命の結末なのである。

サローヤンは、
人が生まれや育ちを選べないことをよく知っていた。
「どう生きるか」を選べるのは自分だけ、ということも。

苦労を重ねた作家は、苦労をそのまま描かない。
ただ、人生は幸せばかりではないけれど、不幸ばかりでもない。
そんなささやかな日常を描き、
人々に明日への夢と希望を抱かせるのだ。

大きな夢ばかりが、アメリカンドリームではない。

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