奥村広乃 13年12月15日放送



流星群と電話

毎年この時期になると、
双子座流星群が話題にのぼる。

三大流星群のひとつに数えられ、
多い時では、1時間に100個ほどの流星が見える。

天文ショーが世間をにぎわすたび、
せわしなく鳴る電話がある。
国立天文台、広報普及室の電話だ。

天文学者、長沢工(ながさわ こう)の『天文台の電話番』によれば、
流星群出現の時は、問い合わせ電話が特に増え
トイレに立つ暇もないという。

このエッセイが書かれたのは、2001年。
10年以上たち、インターネットが普及したいま。
天文台の電話はどれくらい鳴っているのだろうか。

ただ。
簡単にたくさんの情報が
手に入ってしまうからこそ、
専門家に深い話を聴きたくなる。
そんな人も多そうだ。


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澁江俊一 13年12月15日放送



電話嫌いの作家2

日本の作家、夏目漱石と
「トムソーヤーの冒険」を書いた
アメリカの作家、マーク·トウェイン。
2人の共通点は、電話嫌い。

電話を発明したグラハム・ベルは
トウェインにもぜひと勧めるが、
聞きたくもない音を聞かされ、
話したくもない人と話す、失礼な機械である、
と断られた。

しつこく勧めるベルに嫌気がさし、
トウェインはある文を新聞に発表する。
「ハートフォード市民には今年も全員に
クリスマスカードを贈るが、ベルには絶対贈らない」

数日後、
トウェインが病気で寝ていると、親戚の訃報が届いた。
葬式に出席できず落胆するトウェインのために
ベルは家と教会を電話でつないだ。

葬儀の出席者と心ゆくまで語らい、
電話の便利さを知ったトウェインが
「料金は払わせてほしい」と申し出ると、
ベルは、笑ってこう答えた。

「料金は結構ですから、私にもクリスマスカードをください」

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松岡康 13年12月15日放送



葬儀屋と電話

1889年、
カンザスの葬儀屋アーモン・ストロージャーが、
革命的な発明をする。
ダイヤル式の電話だ。

なぜ葬儀屋の彼に、
このような大発明ができたのか?

当時の電話は、
電話局の交換手を呼び出して、
番号を告げ、人の手で接続してもらうものだった。

ある日ストロージャーは、自分が経営する葬儀屋への
電話注文が少ないことに不信を抱く。
原因を調べると、電話交換手が別の葬儀屋の女房で、
仕事の電話をすべてそちらにつないでいたことが判明。
そこから「人の手を介さない回線交換」を思いついたのだ…

強い意志で
日常に転がっている発明の種を見つけ、
育てることで、偉大な発明が生まれる。
葬儀屋ストロージャーの逸話は、
わたしたちにそう教えてくれる。

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礒部建多 13年12月15日放送



五輪ポスターと電話

堂々と佇む日の丸。
それを支える様に、
金の輝きを放つ五輪マーク。
亀倉雄策がデザインした
1964年東京五輪のポスターだ。

日本のデザインの発展に寄与した功績を認められ、
五輪ポスターのコンペに招かれた亀倉だが
〆切当日、委員会から催促の電話を受けるまで
提出期限を忘れていた。
その電話から、わずか2時間で彼は
あのダイナミックなデザインを仕上げたのだ。

シンプルで力強い、そのポスターは
20点以上の案から満場一致で選ばれた。

もしあの時、
電話に出られなかったら、
この歴史的デザインは、
幻になっていた。

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奥村広乃 13年12月15日放送



電話と不自由

ピンク・レディ『UFO』、
都はるみ『北の宿から』など
名曲の数々を手掛けた作詞家、阿久悠。

愛する人に会えない切なさ、
新しい愛に気が付いた胸のときめき、
愛を失った悲しみなど、
さまざまな愛の形を、言葉で紡いだ彼は
こんなエッセーを残している。

「若者よ、自由を欲するなら、まず電話を手放せ!

僕らは、逢って、語って、別れてから、
その次に逢うまでの時間は、完全な祈りであった。
心変わりの心配も、祈るしかない。それが恋愛であろう。

24時間電話を掛けつづけ、
完全に相手の行動を把握しようとする心に、
恋愛はたぶん芽生えない。

電話を悪役にするつもりはないが、
人間はもっと人間らしさを恋しがり、
人間を主張する必要はあるだろう。」

24時間つながれる。
この安心と便利さは、
自由を犠牲にしているのかもしれない。

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小林慎一 13年12月14日放送


Kerri Lee Smith  
強さは重さ 猫

二匹の猫を飼う。
一匹は茶虎のオス。もう一匹は黒猫のメス。

オスはゆったり、メスは俊敏である。
エサをあげると、真っ先に口につけるのはメス猫で、
猫じゃらしに対する前足の反応も鋭く、
ジャンプ力も比べ物にならないくらい高い。

しかし、ケンカをすると必ずオス猫が勝つ。
メス猫が得意のアジリティを発揮し、
鋭い前足のジャブで徐々にオス猫を追いつめる展開は、まずない。

猫博物館の館長、今泉忠明先生によると、猫科の動物は
「獲物を捕らえるという目的に向かって
 ひたすら進化した究極の生き物」だそうだが
同じ猫同士で戦うと、強い弱いは、ほぼ体重が決める。

技を磨き、鍛錬を重ね、
小よく大を制するのは、人間だけである。

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小林慎一 13年12月14日放送


Andy Hay
プロは強い 肉食動物

森の王ゴリラ。
体重200キロ、握力1トン。
手が使え、知能が高い。
さぞケンカが強そうだ。
しかし、ゴリラの研究者ジョージ・シャラーは
体重50キロ程度のヒョウに捕食された実例を報告している。

イタチの仲間、グズリ。オスの平均体重は15キロ。
雑食で果物や小動物を食べているが
食料の乏しい冬には
体重150キロのヘラジカを捕らえるという。

インド象のオスが、トラに殺された例がある。
7cmにもなる牙を使い、じょじょに体力を奪い、失血死させたようだ。
足場が悪く、ゾウは実力を発揮できなかったと見られる。
しかし、条件が有利な場所で襲うという狡猾さを持つのもまた、
肉食動物の特徴だ。
どの世界も、やはり、プロは強い。

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小林慎一 13年12月14日放送


Cojharries
秘められた強さ 草食動物

動物学者のグッギイスベルクは
世界動物記「シンバ」で、こう書いている。

「ライオンがいる地域では
 ライオンの餌食となりえない動物はほとんどいない。
 しかし、ゾウとサイのみ別格である。」

体重3.5トン、時速45キロで突進し、
強烈な角の一突きが武器のシロサイ。
そして、体重7トン、皮膚の厚さ10cm、牙の長さ3m、
足踏みの衝撃は100トン以上のアフリカゾウは、
まさに陸上動物最強。

しかし、カバの強さも忘れてはいけない。
体重2トン、150°開く口、50cmの牙、噛む力1トン以上。
縄張りに侵入者があると獰猛になり、
ワニ、ライオン、人だろうと容赦なく襲う。
アフリカでもっとも人間を殺している動物がカバである。
キレるヤツには、近づかないのが得策なのだ。

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小林慎一 13年12月14日放送


Ryan Kilpatrick
地上最強の動物は

古代コロッセオでの
ライオン対トラの対戦成績は、7勝3敗でトラの勝ち。
しかも、トラはアムールトラよりも小さなベンガルトラで、
ライオンは大型のバーバリライオンだった。

また、ケンブリッジ大学動物学部は、
一対一ならカバはライオンに勝るとの見解を示している。
ライオンに捕食されたことのないゾウ、サイが別格だとすると、
ゾウ、サイ、カバ、トラ、ライオン
が強さの序列だろうか。
この結論は、動物学者小原秀雄の記した
「猛獣もし戦わば」に近い。

しかし、サバンナには、まだ強いヤツがいる。
キリンである。
身長5m以上ありながら、時速50kmで走り、
後ろ足の蹴りは、一発でライオンの頭蓋骨を粉砕する。
強烈な首の一撃でジープを破壊したことも。
しかも、キリンはゾウにその広い視野を、
ゾウはキリンに鋭い嗅覚を提供し、
一緒に行動しながら、敵を監視し合っている。
いわば、同盟を結んでいるのである。
強いものを味方につける。
政治力を持ったヤツこそ、最強か。

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大友美有紀 13年12月8日放送


Andy Hay
「ジョン・レノンへ」 U2ボノ・盗み返した。

12月8日、ジョン・レノンが凶弾に倒れた日。
イギリスのロックグループ、U2の
ヴォーカリスト、ボノは、
1987年、ヨシュアトゥリー・ツアー、
ロサンゼルスのスタジアムで、ある曲をこう紹介した。

 チャールズ・マンソンが
 ビートルズから盗んだ曲を盗み返した。

そして「ヘルタースケルーター」が始まった。

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