河田紗弥 19年10月12日放送



百里の道も一足から。 〜ハイヒール〜

「捨てます!」と周囲に宣言すれば、
建物の2階からでも、
汚物を捨ててもいいというルールがあったほど、
16世紀のヨーロッパは街中に汚物が平然と捨てられていた。

臭いはもちろん、
路面に置き去りにされた汚物が
スカートの裾を汚してしまい、人々を悩ませていたという…。

そこで注目されたのが厚底靴である。

歩き辛さやファッション的に好まれていなかった厚底靴を
かかと部分のみを厚底にし、
歩きやすく、見た目も細く美しいハイヒールへと変化させた。

こうして
今では女性を象徴するアイテム
ハイヒールは誕生した。

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野村隆文 19年10月12日放送



百里の道も一足から。 〜マラソンと靴〜

世界最古のマラソンランナー、古代ギリシャのフィディピデスは、
マラトンからアテネまでの約40kmを、36時間かけて走破した。
このとき彼は、裸足だった。

日本人として、初めてオリンピックの舞台を走った金栗四三。
彼が代表選考レースで世界記録を更新したとき、履いていたのは
特製の「マラソン足袋」だったという。

その後、通気性の高いメッシュ素材が生まれ、
衝撃を吸収するソールの開発されていく。
マラソンの記録更新は、常に靴の進化が支えてきた。

2017年には、今までにない厚底のランニングシューズを履いた選手が、
日本記録を16年ぶりに更新。

2019年現在、マラソンの世界記録は2時間1分39秒。
2020年には、どんな靴を履いた選手が、
世界を沸かせてくれるのだろうか。

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河田紗弥 19年10月12日放送



百里の道も一足から。 〜スリッパ〜

家の中で靴を脱ぐ文化は日本独自のもの。
欧米をはじめとした海外では基本的に
家の中でも靴を履いたまま生活をしている。

明治時代に海外の人が来日するようになり、
この文化の違いが原因で
至るところでトラブルが発生していたんだとか…。

そこで、誕生したのがスリッパだ。

靴の上から被せるようにして履くものが原型と言われているが
今でもスリッパの構造にはその名残があるように思う。

“つっかけ”て履く気楽さや
足も床も汚さない利便性は
日本独自の文化とぴったり。
瞬く間にスリッパは日本人の毎日に定着していった。

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大友美有紀 19年10月6日放送


emiton
楽器の話 パイプオルガンはじまり

秋です。ゆったりとクラシック音楽を
聴きに行くのはどうでしょうか。

最近はパイプオルガンのあるホールも増えてきました。
パイプオルガンはもともと束ねた笛のような楽器で
パイプに空気を送り込んで音を出しますが
紀元前のパイプオルガンは、
水圧で空気を送っていたとされています。
それが人力で、ふいごを使って送風するようになり、
今では電動で風を送っています。
古代から同じ姿の楽器、と思いきや、
文明の力も必要だったのです。

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大友美有紀 19年10月6日放送


Les_Williams
楽器の話 パイプオルガンの演奏方法

荘厳な音を響かせるパイプオルガン。
かつて教会では「神の声」を代弁する楽器とされていました。

今のパイプオルガンは、大きさにもよりますが
2500本から6000本のパイプを持っています。
ひとつのパイプで出せる音はひとつ。
音色と音の高さの違うパイプを揃えて、
使い分けて、音楽を奏でます。
ストップ、音の栓と呼ばれるレバーを操作して
ある音色群のパイプを選び、鍵盤で音階を弾く。
音量を操作するのは足元にあるペダル。
低音域の演奏も足で行います。
全身に鳴り響くような、あの音楽は、
全身で演奏されているのです。

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大友美有紀 19年10月6日放送



楽器の話 チェンバロ

パイプオルガンと同じく鍵盤楽器のチェンバロ。
バロック時代に広く愛された楽器です。

パイプオルガンは笛のようにパイプに空気を送り込んで鳴らす楽器。
チェンバロは弦楽器に鍵盤を組み合わせたもの。
似ているけれども音の出し方は違います。
チェンバロは鍵盤を押すと、
爪のついた部品が弦を弾いて音を出します。
ギターや琴のような仕組みです。
ひとつのキーに対して、2〜3の弦が張られていて、
レジスターという部品でどの弦を弾くか選ぶことができます。
鍵盤も1段から3段ものがあり、
複数あるものは移調できる構造になっています。
王家や貴族の家に置かれることの多かったチェンバロは、
家具の一部として美しい装飾が施されていました。
蓋の内側や、響板に、美しい風景画や花などの模様が描かれています。
最近、日本でもチェンバロの演奏会が開かれています。
バロック時代の貴族や王族が親しんだ音色と装飾を
味わってみませんか。

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大友美有紀 19年10月6日放送


erge
楽器の話 ポストホルン

笛を束ねた楽器が起源とされるパイプオルガン。
一方、角笛が起源とされるのが、ホルンです。
狩りの合図に使われていた角笛が、
金属製の狩猟用ホルンとなります。
管の部分をぐるりと巻いて、
馬上でも持ちやすいように工夫されました。
郵便馬車の到着や出発を知らせる、
ポストホルンという楽器も生まれました。

今でも、ドイツ郵便局のマークは、
ポストホルンをモチーフにしています。
それだけ身近だった、ということでしょう。

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大友美有紀 19年10月6日放送


Jean Louis Martenot
楽器の話 オンドマルトノ

オンドマルトノという楽器があります。
フランスの音楽家であり電気技師でもある
モーリス・マルトノが開発した電子楽器です。
鍵盤に弦が張られた本体と
大小のスピカーを組み合わせた楽器で、
電気回路で音を発生させる仕組みです。

20世紀初頭、電話やラジオなど電気回路を使った
装置が発明されました。
その装置がときに面白い音を発生させる。
それが音楽なるかもしれないと考えた人たちがいました。
マルトノも、その一人。

弦楽器のような音から宇宙的な音まで、
電気が生み出す音の不思議に耳を傾けてみませんか。

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大友美有紀 19年10月6日放送


白石准
楽器の話 ワーグナーチューバ

ワーグナーチューバという金管楽器があります。
リュヒャルト・ワーグナーが作らせました。
彼は「ニーベルングの指環」、
序夜「ラインの黄金」の、
「神々のヴァルハラへの入城」のテーマに、
フレンチホルンとチューバの中間的な音色が欲しいと考えました。
けれども、彼が求める音色を実現することは難しく、
楽器メーカーも楽器職人も叶えることはできません。
「ラインの黄金」の初演にも間に合いませんでした。
完成したのは、構想から実に20年以上経ったとき。
そんな思いと時間をかけて作り上げた
ワーグナーチューバ。
なのに、リヒャルト・シュトラウスは
その音を「耳障り」と評したのです。

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大友美有紀 19年10月6日放送


bvriesem
楽器の話 ダモーレ

「ダモーレ」と名がつく楽器があります。
ヴィオラ・ダモーレ、
フルート・ダモーレ、
オーボエ・ダモーレ。
イタリア語の「アモーレ」、愛から来ている名称で、
愛しい楽器、という意味です。
どの楽器も甘く柔らかい音色が特徴。
ヴィオラ・ダモーレは、
直接弾く演奏弦と長い余韻を響かせる共鳴弦があり、
独特な音色を奏でることができるそうです。
その反面、調弦の本数が多く、手間もかかります。
大きな愛が、必要です。

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