薄景子 19年9月29日放送



月のはなし 月の光

もしも、この世に月がなかったら、
生まれなかった物語はいくつあっただろう。

生まれなかった言葉は、歌は、
生まれなかった恋は、世界にいくつあっただろう。

ドビュッシーの名曲、「月の光」。
幻想的な月夜をイメージするこの曲は
フランスの詩人、ヴォルレーヌの詩「月の光」に
魅了されたドビュッシーが
その詩にあわせて歌曲をつくったのがはじまり。
彼はその曲を恋人、ヴァニエ夫人にささげ、
のちにピアノの音だけで「月の光」を表現したという。

静かで、どこか切なく、心にそっと寄り添うメロディは
月明りの夜、物想いにふけるのにちょうどいい。
ふと、会いたい人の顔が思い浮かんだら、
それは月の光が、あなたの胸を照らした証拠。

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小野麻利江 19年9月29日放送



月のはなし 田毎の月

「棚田」と呼ばれる、
階段状に小さく区切られた水田。
その棚田の一つ一つすべてに月が映るさまを
日本人は「田毎の月(たごとのつき)」
と呼んできた。

数々の浮世絵師がこの構図を好み、
俳句では、秋の季語となっている。
特に有名なのが、歌川広重による浮世絵、
「信州更科田毎月鐘台山
(しんしゅう さらしな たごとのつき きょうだいさん)」。
段々になった田んぼそれぞれに、
満月を浮かばせている。

しかし、「すべての田んぼに1つずつ月が映る」というのは、
実際には不可能な光景。
どんなに田んぼがたくさんあっても、
月が映るのは一つだけ。

創作の世界で花開いた、月の表現。
与謝蕪村の一句でも、
朧げながらも沢山の
月の光の明るさが、立ちのぼる。

 帰る雁 田毎の月の くもる夜に

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茂木彩海 19年9月29日放送



月のはなし 月に誓って

夜、暗闇にぼんやり優しく光る月は、
昼間の太陽との対比だろうか、
なんとなく見る者を、まろやかに、ロマンチックな気持ちにさせてくれる。

満月の夜は、ちょっと得した気持ちになるし、
三日月の夜は、細くても強い、その光を頼もしく感じる。

そんな月の変化を恋心に言い当てたのは、かのシェイクスピア。

常に変化しているのだから、月に誓ってはならない。
それではあなたの愛もまた変わってしまうだろう。

「ロミオとジュリエット」の一節でもあるこの言葉。

月は、満ちたり、欠けたりしながら、
月の下に集う恋人たちの、変わらぬ愛を試しているのかもしれない。

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茂木彩海 19年9月29日放送



月のはなし 世界のお月見

お月見をするのは、なにも日本人に限ったことではない。

海外のお月見も、日本と同様に
そのほとんどが収穫を感謝するためのものだが、
ヨーロッパではもともと月を
人々のリズムを狂わす「狂気」の象徴と考え
満月でオオカミに変身してしまう「狼男」や
月の元でしか生きられない「ドラキュラ」が生まれた。

同じお月見でも、国が変わればこんなに違う。
いずれにしろ、人類は月の秘めたるパワーを感じざるをえないのだ。

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厚焼玉子 19年9月28日放送



秋の虫 虫聞き

秋の夜、野山に出て虫の声を楽しむことを
「虫聞き」と言うそうだ。

虫の声を楽しむ習慣は日本にしかない。
ラフカディオ・ハーンは日本に来て
虫の声を楽しむ人々を見てかなり驚き、
虫を売る商売があるのを知って
さらに驚いたという。

なぜ日本にしかないのか、
左右の脳の機能の問題とは思うが、
面倒な話は置いておいて
虫の声を楽しむ文化のある国で
秋をじっくり楽しみたい。

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厚焼玉子 19年9月28日放送



秋の虫 枕草子

「春はあけぼの」からはじまる
清少納言の枕草子。
読み進むと、「虫はすずむし」というくだりがある。
その後に続くのがヒグラシ、蝶、松虫。

ヒグラシは9月になっても鳴いている。
松虫は8月から鳴きはじめる。
いつ夏が終わり、いつ秋がきたのか。
清少納言の時代は
もっと鮮明に見えたのだろうか。

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厚焼玉子 19年9月28日放送


ろごきっと
秋の虫 熊楠のコオロギ

コオロギは「つづれ刺せ」と鳴くと昔から言われ
ツヅレサセコオロギと言う種類もいる。
「つづれ刺せ」は
着物のほころびを修理しようと言う意味だが、
実際にコオロギの声を聞いてもそうは聞こえない。

天才生物学者の南方熊楠は
コオロギの鳴き声を
「寿司食って餅食って酒飲んで、つづれ刺せ、夜具刺せ」
と書いている。

どうも。天才にしか聞こえない声があるようだ。

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厚焼玉子 19年9月28日放送


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秋の虫 カンタン

カンタンは儚げな姿の小さい虫で
その鳴き声は秋の虫の女王と言われるほどだ。

秋も深まった水辺で
少し冷たい風に吹かれながらカンタンの声を聞くと
誰もが風情があって美しいと言う。

カンタンは滅多に捕まらないが、
捕まえて部屋で声を聞いた人の話によると、
けっこう大音量でうるさいそうだ。

やはり虫の声は野山で聞くべきと思う。

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厚焼玉子 19年9月28日放送


風の花
秋の虫 カネタタキ

チッチッチという声が
庭や公園の木のあるところから聞こえたら
それがカネタタキだ。

カネタタキは1センチかそこらの小さい虫で
鳴き声も小さいが
気温が下がると昼間も鳴くようになるので
ああこの声だとわかるようになる。

姿も声も万事に控えめなカネタタキだが
オス同士が出会って競い合うと
俄然激しい鳴きかたになる。

小さくてもプライドはしっかりと。

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澁江俊一 19年9月22日放送



神話のたどった道

世界の神話には
大きく2つの流れがある。
そんな学説がある。

その2つとは
ローラシア型神話と
ゴンドワナ型神話。

アフリカで生まれた人類が
地球上に広がるまでのルートの違いが、
神話に2つの流れを生んだという。

神話とは
文字のない時代に
私たちのはるかな祖先が
この世界と自分たちとの間にある
無限の問いの答えを考え続けて生まれた
未来へのメッセージ。

何万年も昔。
命の危険を冒してまで
まだ見ぬ土地へと移動しながら
神話を編み出した私たちの祖先がいた。
そこに想いを馳せるだけで、
時空を超えた旅が始まる。

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