小山佳奈 09年8月16日放送

アンリ・デグランジュ

8月16日に亡くなった人 ~ アンリ・デグランジュ


歴史の始まりはたいてい
腰が抜けるほど単純なものだ。

 「自転車レースの日は新聞がよく売れる。
 だったらレースの方をつくろう。」


スポーツ紙ロトの編集者、
アンリ・デグランジュが
売上げアップのために始めたレース。

それが今では世界一有名な自転車レース
「ツール・ド・フランス」となった。

動機はあくまで
単純な方がいい。

今日、8月16日は、
アンリ・デグランジュの亡くなった日。



震洋特攻隊

8月16日に亡くなった人 ~ 震洋特攻隊


ベニヤ板を接着剤で貼り合わせただけの
おもちゃのようなモーターボートを集めて
どこかの見知らぬ大人たちが「特攻隊」と呼んだ。
乗組員は人間ひとりと、爆薬250キロ。

1945年8月16日。
戦争が終わったはずの翌日に、
初めて出撃の命令が下る。

準備中、一つの船が爆発して、
111人の若者が、こっぱみじんになった。

震洋特別攻撃隊、手結基地。
東京から遠く離れた高知の海辺の小さな村で、
誰も戦争が終わったなんて教えてくれなかった。

 「国のために死ぬ覚悟はできていた。
 しかし犬死をする覚悟なんて持っているわけがない。」


生き残った男の目には今もはっきりと
真っ赤に染まる海が見える。

人間が始めた戦争なのに
人間はそれをうまく終わらせることができない。

なのにまた世界のどこかで
今にも始めようとしたりしてる。

どうして人間はそんなにも。
どうして人間はこんなにも。



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8月16日に亡くなった人 ~ エルヴィス・プレスリー


メンフィスの小さなレコーディングスタジオに
ふらりとやって来た白人の若者。
高校を卒業しトラックの運転手をしているという18歳は、
聞けば母親の誕生日に歌を贈りたいという。

黒人初の大統領が生まれるたった50年前のアメリカでは、
人種の壁ははるかに高く、
それは音楽ですら例外ではない。
黒人はブルース。
白人はカントリー。

オーナーのサム・フィリップスが
どんな歌を歌えるのかとたずねるとこう答えた。

 「僕は何でも歌えます。
僕は誰にも似ていません。」


彼の名は、
エルヴィス・プレスリー。

何かに例えようとする時点で、
それはもうロックではない。

そもそもロックなんてジャンル自体、
ロックの神様には失礼な話。

今日、8月16日は、
エルヴィス・プレスリーの
亡くなった日。



佐伯祐三

8月16日に亡くなった人 ~ 佐伯祐三


1923年。
西洋画の聖地、
パリに渡った佐伯祐三は、
狂ったように絵を描いた。

その狂気は、
画壇を鮮やかに彩るかわりに、
彼自身の心と体を黒く黒く塗りつぶしていく。

 「きっと俺はやりぬく 
 やりぬかねばおくものか
 死-病-仕事-愛-生活」


何よりも死が一番近く、
だからこそ必死で生きた。

今日、8月16日は、
佐伯祐三の亡くなった日。



ベラ・ルゴシ

8月16日に亡くなった人 ~ ベラ・ルゴシ


黒いマントと燕尾服。
オールバックに白い牙。

「魔人ドラキュラ」で一躍スターとなったベラ・ルゴシは、
その後、自ら作り上げたドラキュラ像から逃れられず、
B級俳優の烙印を押される。

彼は亡くなる直前こう言い残す。

 「埋葬するときには
 黒いマントを着せてほしい。」


最後までドラキュラでありつづけようとした彼が、
B級であるはずはない。

今日、8月16日は
ベラ・ルゴシの亡くなった日。





マーガレット・ミッチェル

8月16日に亡くなった人 ~ マーガレット・ミッチェル


自分を書くことはひどく勇気がいる。
偽善的にも偽悪的にもすぐなり下がるから。

作家、マーガレット・ミッチェルはその点、
正直すぎるほど正直に自分の人生を書いた。

「風と共に去りぬ」の主人公スカーレットは、
彼女そのもの。

結婚した男は粗暴で不埒で魅力的。
それでも昔の恋が忘れられずに傷つき別れる。

 「Tomorrow is anotherday.」

それはきっと彼女が
自分自身に言い聞かせ続けた言葉。

今日、8月16日は、
マーガレット・ミッチェルの
亡くなった日。



セルマン・ワクスマン

8月16日に亡くなった人 ~ セルマン・ワクスマン


正岡子規からショパンまで
世界中の才能を奪い続けた死の病、結核。

その特効薬を発見しノーベル賞を受賞した、
セルマン・ワクスマン。

しかし実際にこの抗生物質を発見したのは
彼の研究室にいた23歳の研究生だった。

部下の栄誉を横取りした非道な上司とみるか。
部下に資金と機会を与えた偉大な上司とみるか。

今日、8月16日は、
ワクスマンの亡くなった日。



送り火

8月16日の送り火


盆地を囲む五つの文字が
京都の空を赤く燃やす。

今夜、京都では
亡くなった人を偲ぶ、
大文字五山送り火が行われている。

今日、8月16日に亡くなった、
プレスリー、ミッチェル、佐伯祐三。

あぁ。
あなたたちの残したもののおかげで
こんなにも私たちは
泣いたり笑ったり驚いたりできます。

「人を思う」と書いて
「偲ぶ」。

さて、
あなたは今日、
誰を思いますか。

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コメント / トラックバック 2 件

  1. abeshu より:

    「大文字焼き」という表現は間違いです。
    「大文字送り火」が正しく、更には「右大文字」「左大文字」「妙法」「舟形」「鳥居形」が燈される事から、正式には「五山送り火」と呼ばれるべき行事です。
    東京ではこうした山焼きでも連想させる間違った呼び方がよく聞かれますが、とりわけ京都の、長年の伝統を継承している地元の方々に軽々に「大文字焼き」等と言うことは、実は大変な失礼に当たります。
    くれぐれもご注意下さい。

  2. 小山 より:

    ご指摘ありがとうございました。

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