古居利康 12年10月14日放送



もうひとりのわたし 津島修治の場合

津島修治が「太宰治」になるにあたっては、
紆余曲折、幾春秋あった。

旧制弘前高校にいたころから、
同人誌に小説を書いていた。
「辻島衆二」という、
本名とほぼ同じ音をもつ名前を用いたかと
思えば、「比賀志英郎」になったり、
「小菅銀吉」という、掏摸の親玉じみた
名前もなぜか使った。

「太宰治」という筆名は、
『列車』という短編で初めて登場する。

この「太宰治」の由来が、
諸説ふんぷんあって、定説いまだ定まらない。

いわく、京大教授でフランス文学者、
太宰施門に由来するのではないか。
いやいや、太宰府天満宮からさ。
あのね、弘前高校の同級生に太宰友次郎、
ってやつがいてね・・。

ここだけの話、津島修治って、
「ツ」と「シ」と「ジ」でできているから、
東北訛りが出やすいんだ。
「ツスマスンズ」・・。
などと言い出す者もあらわれ、
ドイツ語で現存在を意味する
「ダーザイン」だの、ダダイズムの駄洒落だの、
どうも人騒がせなことになるのも、
太宰らしいといえば、らしいのかもしれない。

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