erinc salor
気になるあの人 ボビー・マクファレン
音楽家はふつう、観客に音楽を聞かせる。
けれどここに、観客の音楽を聞く音楽家がいる。
ジャンルを超えた
音楽を創造しつづけるアメリカの音楽家、
ボビー・マクファレン。
ある日、オーケストラを指揮していた彼は
突然、観客のほうに振り向くと
指揮棒をあげ、こう言った。
みんなアヴェ・マリアを習ったことはあるよね?
振り下ろされる指揮棒。
あちこちから、かすかな歌声が起こる。
とまどいがちだった歌は、
重なり合うことで自信に満ちた音楽へと変わっていった。
音を響かせあう楽しさが、そこにあった。
聞く側と、聞かせる側。
ボビーはそんなジャンルさえ、飛び越える。
2015 年 3 月 28 日 のアーカイブ
中村直史 15年3月28日放送
中村直史 15年3月28日放送
Sugawara / yuma
気になるあの人 宮井和夫
サメやカツオ、それにタコ。
カラフルな姿で車体からあふれんばかりに描かれている。
こんなタクシーが走る街は、きっとほかにない。
発案したのは、
気仙沼観光タクシーの宮井和夫(みやい かずお)社長。
震災後の灰色の街を明るくしたかった。
街歩く人を、ちょっとでも楽しい気持ちにさせたかった。
苦しい思いをした地域。
だからこそ、世界一幸せになる権利もあると思うんです。
宮井さんの語る希望は、
未来ではなく「今ここ」という現実の時間の中にある。
三國菜恵 15年3月28日放送
Kikasz
気になるあの人 武田双雲
井上陽水ほど記憶から消すことが難しいアーティストはいない。
大河ドラマ『天地人』の題字などを手掛けた書道家・武田双雲は語る。
学生時代に陽水の『夢の中へ』を聴いて、
本当に夢の中へひきこまれるような声に衝撃を受けた。
双雲は、陽水に向けて書を贈ったことがある。
それは、あでやかの「艶」という字。
何千とある漢字の中で、もう、これしか思い浮かばなかったそうだ。
三國菜恵 15年3月28日放送
microwalrus
気になるあの人 岡崎京子
いつも一人の女の子のことを書こうと思っている。
漫画家・岡崎京子の信条。
彼女はストーリーラインを考えるのではなく、
一人の女の子を想像することから描きはじめる。
その子の好きな花は何か。トラウマは何か。
許せるものと許せないものは何か。
想像の先に生まれた一人の女の子。
紙の上で動き出して、漫画になる。
三國菜恵 15年3月28日放送
気になるあの人/池谷裕二(いけがやゆうじ)
ある日、学術学会で発表の舞台に立ったとき。
会場の女性が全員美人に見えた。
脳科学者・池谷裕二の奇妙な経験。
人前での発表は緊張するから、
脳がそのドキドキを恋と勘違いしたらしい。
いわゆる、「吊り橋効果」というやつだ。
彼は思った。
脳ってホント、カワイイ。憎めないヤツ。
三島邦彦 15年3月28日放送
trialsanderrors
気になるあの人 フィシェ兄弟
19世紀のパリ。
小さな芝居小屋にかける劇の台本書きを
生業にしている兄弟がいた。
兄の名はマックス、弟の名はアレックス。
貧しさから抜け出すため、
その文才と暇な時間を活かし、恋文の代筆業を始めた。
恋文作家フィシェ兄弟。
彼らのもとには、
忙しい紳士、文才のない男たちからの依頼が
次々と舞い込み、一躍大もうけ。
やがてパリの一角には恋文の代筆業者が
軒を連ね、恋文横町と呼ばれた。
彼らは、数多くの依頼に素早く対応するため、
恋文の定型文を用意した。
たとえば、毎日手紙を求める女性たちに向けに作った、
曜日別の書き出しと結びの言葉の一覧表が残っている。
月曜の手紙の書き出しは、
うるわしの君よ
火曜の手紙の書き出しは、
小さな小さなお人形さん
パリの街を舞台に、
彼らが描く恋愛劇は、
来る日も来る日も繰り返された。
三島邦彦 15年3月28日放送
IbaGeo
気になるあの人/岡倉天心
岡倉天心。
ボストン美術館東洋部門部長をつとめるなど、
日本美術を世界に広める活動に生涯をかけた。
彼には、インドを訪れた時に知り合った女流詩人と
交わした30通を超える手紙が残っている。
これは、晩年の天心が送った手紙。
私は終日、浜辺に座し、逆巻く海を見つめています
いつの日か、海霧の中からあなたが立ちあがるかもしれないと思いながら。
天心がこの世を去った後も、
遠い海の向こうから、
天心の健康を案じる手紙が届き続けたという。
三島邦彦 15年3月28日放送
気になるあの人 鉄血宰相ビスマルク
その強烈な名前は、
歴史の教科書でも異彩を放つ。
鉄血宰相ビスマルク。
死後、彼が書いた多くの手紙が発見された。
これはその中の一節。
それにしても私をこの手紙と同封させるか、
郵便袋のなかの郵送物として一緒に飛んで行けるといいんだがね。
教科書に載っていない鉄血宰相の素顔。
それはユーモアあふれるロマンチストだったのかもしれない。