オリンピックと釣り 松岡康
ご存知だろうか?
魚釣りがかつて、
オリンピック競技だったことを。
フランス人、ピエール・ド・クーベルタンの提唱に
世界の国々が賛同し、
古代オリンピックの終焉から1500年の時を経て、
1986年に近代オリンピックがスタート。
4年後の1900年に
クーベルタンの母国フランスで開催された
第2回パリ大会で、
魚釣りが公式競技として採用された。
選手たちは2日間セーヌ河で鯉などを釣り、
その総重量で勝敗を競った。
今年8月、
2020年東京オリンピックの追加競技が発表となる。
綱引きやウェイクボードなど意外な候補もある。
どんな魅力的な競技が採用されるか、
楽しみに待とう。
2015 年 6 月 20 日 のアーカイブ
松岡康 15年6月20日放送
奥村広乃 15年6月20日放送
佐藤垢石と釣り
釣りジャーナリストの佐藤垢石(こうせき)。
釣りを中心とした随筆を多く執筆し、
戦後は雑誌「つり人」の初代編集人にもなった。
彼は、こんなことを書いている。
「釣には、嫉妬心を最も禁物とする。」
「釣の道は、人生の道と相通ふところがある。
釣に嫉妬は禁物であるやうに、人生にも嫉妬心は魔物である。」
誰かの釣った魚が大きくても、嫉んではならない。
誰かが見つけた良い釣り場を、横取りするのは美しくない。
多くのスポーツが人生に教訓を与えてくれるように、
自然と向き合う釣りも
生きていくうえで大切なことを
教えてくれるようだ。
磯部建多 15年6月20日放送
David Morimoto
開高健と釣り
「何事であれブラジル人は驚いたり、
感嘆したりするとき、「オーパ!」と言う。」
この一文から始まる、開高健の釣り紀行「オーパ!」。
大河アマゾンで開高は、
まさにオーパ!と発してしまうような魚たちと出会う。
人さえ食べるピラニア、
体重200キロにも達するピラクルー。
美しいホクロのあるトクナレ。
そして全身金色のドラド。
しなる竿。糸が擦れるリール。
釣り上げるまでの一瞬一瞬の興奮や、感動は、
まるで直接語りかけられているかのように伝わってくる。
開高の釣りに思いを馳せるたび、
中国のこんな古い諺が頭をかすめる。
「永遠に幸せになりたかったら、釣りを覚えなさい。」
澁江俊一 15年6月20日放送
ヘミングウェイと釣り
世界的名作「老人と海」を書いたヘミングウェイは
キューバを愛し、22年もの年月を過ごした。
アメリカのアイコンだった彼が
なぜキューバに長く暮らしたのか。
彼の突然の死とともに、今も残る謎である。
ヘミングウェイはキューバ革命の英雄
フィデル・カストロと一度だけ会っている。
1959年の革命直後にヘミングウェイが主催した釣り大会で
笑顔で握手を交わす2人の写真が残っている。
ヘミングウェイを愛読していたカストロ。
「誰がために鐘は鳴る」は、
ゲリラ戦を繰り返す当時の彼のバイブルだった。
アメリカに帰国したヘミングウェイは
1961年に猟銃自殺を遂げる。
同じ年にアメリカはキューバと国交を断絶する。
「老人と海」はハッピーエンドではない。
死闘の末に釣った巨大なカジキは、
サメの群れに食われてしまう。
キューバとアメリカ。
愛した2つの国の未来は、
ヘミングウェイの目に、どう見えていたのだろう。