2020 年 5 月 30 日 のアーカイブ

佐藤理人 20年5月30日放送



ペスト 発生

1347年10月、イタリアのシチリー島に12隻の貿易船が到着した。
積荷は毛皮と、ペストに感染した数百万匹のノミだった。

ノミはネズミに寄生すると、
その機動力を借りて瞬く間にヨーロッパ中に広がり、
2500万人もの命を奪った。

ペスト患者の皮膚はどす黒く変色したことから、

 黒死病

と恐れられた。

検疫は英語で40を意味する「quarantine」と言う。
これは感染の疑いがある人を40日間隔離したことに由来する。

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佐藤理人 20年5月30日放送



ペスト  働き方

1348年から130年以上にわたり、
ペストはイギリスで30回も流行。
人口の約半分が命を落とした。

農民の数も激減したため、
地主たちは人手不足に頭を抱えた。

結果、労働者の権利が向上。自営農家が誕生した。

さらにその多くはより人手が少ない畜産にシフト。
肉の消費が増え、食文化も贅沢に変化を遂げた。

貴族の収入が2割減ったのに対して、
労働者の年収は2倍になった。

この時代は、

 労働者の黄金時代

と呼ばれている。

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佐藤理人 20年5月30日放送



ペスト マスク

かつて世界でもっとも恐れられた病気、ペスト。
17世紀の人々はその原因を大地から出る有毒ガスだと考えた。

フランス人シャルル・ド・ロルムは、
危険な任務に当たるペスト医師のために特殊な防護服を発明した。

帽子・ガウン・手袋をつけ、
鳥のくちばしのようなマスクで顔を覆った。
くちばしには香りの強いハーブが入っており、
悪い空気から身を守ると考えられた。

ペスト医師の多くは医学の知識を持たない素人であり、
その効果を疑うこともなく命を落としたと言われている。

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佐藤理人 20年5月30日放送



ペスト 予言

「異邦人」で有名なフランスの小説家、アルベール・カミュ。
彼の「ペスト」という小説にこんな一節がある。

 災厄は自分に降りかかってきたときは
 容易に信じられない。人々はいつも無防備だ。

デマ、パニック、買い占め、検査待ちの行列、
医療崩壊、事態を軽視する役人たち。

彼はウイルスに翻弄される人間の姿を通して、
世界がいかに不条理に満ちているかを描いた。

ペストはやがて急速に弱まり、終息を迎える。
人々はすべてを忘れ、元の暮らしに戻っていく。

この騒ぎが終わったあと、私たちは何かを学んでいるだろうか。

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佐藤理人 20年5月30日放送



ペスト 解明

世界で1億6千万人もの命を奪い、
もっとも怖れられた病気、ペスト。
その恐怖に終止符を打ったのは日本人だった。

 細菌学の父 北里柴三郎

1894年、彼は政府に依頼され、
ペストの蔓延する香港を訪れた。

到着からわずか2日後の6月14日、
血液中に潜むペスト菌を世界で初めて発見する。

さらにペストはネズミから感染するという、
二千年間誰にもわからなかったことを解明。
すぐさま日本で大規模なネズミ駆除作戦を敢行した。

1927年以来、日本でペスト患者は出ていない。

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