名雪祐平 20年9月26日放送

prelude2000
パニック 結束

富士山は命を奪う。

1980年夏、富士山で落石事故があった。
死亡者12人、重軽傷者29人。

直径1〜2mの岩石約50個が
斜面を地響きをあげて落下。
下山中の人たちをつぎつぎとなぎ倒した。

パニックの中、無傷の親子3人がいた。
下に逃げず、逆に上の落石方向を向いた。
父親を先頭に、母親、小学三年の息子で
タテ一列。

右! 左! 叫ぶ父に合わせて、
母親と息子は左右に跳び、岩をかわしつづけた。

パニックへの冷静な判断と
結束した行動が、命を救った。


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名雪祐平 20年9月26日放送


パニック デマ

1973年、女子高生のたわいない冗談が
市民を巻き込む大騒動へ発展した。

愛知県・豊川信用金庫への就職が決まった
女子高生を、ともだちが軽い気持ちで
からかった。
「信用金庫はあぶないよ。強盗が入るから」

からかわれた女子高生が
その話を親戚に伝えると、いつのまにか
話がすり替わってしまった。
「信用金庫は、経営状態が危ない」

親戚から親戚、近所から近所、
信用金庫倒産のデマが広がってしまい、
またたく間に20億円の貯金が引き出される
パニックとなった。

きょうのtwitterに、
似たようなデマが紛れ込んでいるかも?


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名雪祐平 20年9月26日放送

nakashi
パニック 隣人

世界の新型コロナウイルスの感染者数、
約3000万人。
けれど、わたしたちはいま、
パニックに浮足立っているだろうか?

ノー。わたしたちは毅然と、希望を捨てずにいる。

春、イタリアの住人たちが窓の外に向かって
いっしょに歌い、励まし合ったように。

世界中の医師や看護師たちが、
いまも献身的な仕事を続けてくれているように。

無数の寄付があつまり、
無名のボランティアたちが行動してくれたように。

わたしたちも、だれかを思い、守っている。

これから深刻な事態があるのかもしれない。
それでもわたしたちは、
隣人を思うことを決してやめないだろう。


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澁江俊一 20年9月20日放送


最後の記憶

終戦から75年。
長い長い時が過ぎた。

戦場での壮絶な記憶を持つ経験者も、
そう遠くない将来には、
この国から一人もいなくなってしまう。
その瞬間は刻一刻と近づいている。

悲惨な戦争の記憶を
知らないことは幸せなこと。
しかし同時にとても怖いことでもある。

情報が常にアップデートされ、
毎日のニュースにさえも
デマやフェイクが忍び込む時代。

最後の記憶が失われ、
過去の過ちが
再び起こらないようにするために…
今、私たちの未来が試されている。


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澁江俊一 20年9月20日放送

Kevin M. Gill
最後の惑星

豊かな海と緑と大気を持つ
地球のような星は
この宇宙にいくつあるのだろう。

ある研究によれば
地球のある天の川銀河系だけでも
100億個ほど似ている星があるという。

たとえそれが事実だとしても、
100年足らずの寿命しかない我々が
その星にたどり着いて移住し
子孫を繁栄させることは不可能だ。

つまり紛れもなく
この広大な宇宙空間の中で
この地球こそが
生命が幸せに暮らせる
最後の星だ、ということ。

そんな貴重な星にいながら
人類はその大切さに
いつになったら気づくのだろう。


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澁江俊一 20年9月20日放送


最後の能力

火をおこしたり
われた茶碗を直したり
わらじを編んだり
1日に何キロも歩いたり…
江戸時代の人々が
当たり前のように持っていた能力で
今の私たちにできないことは、どれほどあるだろう。
侍たちの知恵を、農民や町人の技を
私たちはいくつ受け継いでいると言えるだろうか。

スマートフォンをなくしただけで
途方に暮れる私たちは、
祖先たちが、石油も電気も
ガスもインターネットもない
長い長い時代を生き延びるために
必要だったスキルのほとんどを、
失ってしまっている。

この先、自分一人では
何もできなくなった人類が
最後に守るべき能力とは、なんだろう。
今日一日、それを考えてみるのも
悪くないはずだ。


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澁江俊一 20年9月20日放送

tokyoform
最後の仕事

プロ野球選手ならば
最後の試合の最後の打席が
ヒットだったか、凡打だったか
調べればちゃんとわかる。
記憶には残らなくても
記録には残るから。

けれどその他大勢の働く人々は、
最後の1日にどんな仕事をしたか、
記録に残ることはほとんどない。

きっと最後の日の仕事に
そう大きな意味はないのだ。
有終の美を飾るのではなく
1日1日を悔いなく働いてきたかどうか。
人生の意味は、そこに隠れている。


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田中真輝 20年9月20日放送

guppiecat
最後の一頭

2003年10月10日。
キンと名付けられた日本生まれのトキの
最後の一頭が死んだ。
2012年6月24日。
ロンサム・ジョージと名付けられた
ピンタゾウガメの最後の生き残りが死んだ。 
2018年3月19日。
スーダンと名付けられたキタシロサイが死んだ。
彼は地球上最後の雄の一頭だった。
今年、世界自然保護基金は、野生動物の個体数が
過去50年で3分の2以上減少し、このスピードに
減速の兆候は見られないという報告書を公表した。
人間の営みは転がり続ける。
多くの生物の命を踏みつぶしながら。
その道のりの果てに、人間の最後の一頭は
何を思うのだろう。


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田中真輝 20年9月20日放送


最後の職業

人工知能が加速度的に進化する昨今。
将来的には現在人間がやっている多くの仕事を
AIがやることになるだろう、と予測されている。

AIに取って変わられると言われている職業は
「電話販売員」「不動産登記の審査・調査」
「手縫いの仕立て屋」など。

一方、AIに奪われずに最後まで残ると言われている
職業は「レクリエーション療法士」「整備・設置・
修理の第一線監督者」「危機管理責任者」など。

しかしAIが十分に進化すれば、最後まで残ると言われている
職業もAIが担うことは原理的には可能になっていくだろう。

本当に人間にしかできない仕事があれば、
それこそが人間らしさを象徴するものであるはずだが、
果たして、そんな仕事が残されるか、どうか。


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田中真輝 20年9月20日放送


最後のリクエスト

人間の五感の中で、
最後まで残るのは聴覚だと言われている。
たとえ意識がなくなっても、
誰かが呼びかける声に脳は反応するのだという。

だとすれば、あなたが最後の瞬間に
聞いていたい音楽は、どんな曲だろうか。

文字通り魂を鎮めるレクイエムかもしれない。
人生の折々を彩ってきたポップスかもしれない。
あるいは音楽ではなく、愛する人の笑い声。
あるいは、寄せては返す波の音。

目を閉じて耳を澄ませてみる。
人生とは、最後のリクエストにふさわしい一曲を
見つける長い旅なのかもしれない。


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