大友美有紀 13年5月5日放送



「父と息子」中原中也

近代詩人・中原中也は、
人並みはずれた子煩悩だった。
長男を2歳で亡くした時、
悲しみのあまり屋根を歩き回った。

 窓から暗い月夜を見ていると
 瓦屋根のうえに白蛇が横たわっていて
 それが確かにこどもを奪ったヤツなので、
 踏み殺そうと思って屋根へ上った。

その1年後、
中也の通夜の席で、11ヶ月の次男が、
カステラを手でつかんでもみくちゃにしてしまった。
それを見た客がこんどは杯を持たせてみると
次男は小さな手でそれを受け取り、
生前の中也そっくりの手つきで杯を持った。
弔問客は、どっと笑い、悲しみの涙を絞った。

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