2016 年 7 月 のアーカイブ

小林慎一 16年7月17日放送

160717-06
faeriefly717
ゲームと数学篇

人がゲームの勝率を上げるための
数学的理論はフォン・ノイマンによって確立された。
そのゲーム理論は実際の戦闘にも応用されている。

例えば、ミスターブラック、ミスターグレイ、ミスターホワイトの
3人がピストルで決闘することになった。
決闘は一人が生き残るまで行われる。

ブラックは、3回に1回しかピストルを当てることができない。
グレイは、3回に2回。ホワイトは3回に3回当てることができる。

ピストルを打つ順番は、下手な順で、ブラックからである。
ブラックは最初に誰を狙えばいいだろうか。

百発百中のホワイトを狙うか、3回に2回のグレーを狙うか。
グレーを狙い成功すると、
ホワイトは百発百中の腕前でブラックを殺すだろう。
ホワイトを狙い成功するとグレーは3回に2回の確率なため
ブラックが生き残る可能性が高まる。

しかし、もっともいい方法は、空を打つことである。
次にグレーはより危険な敵であるホワイトを狙うだろう。
ホワイトがもし生き延びてもホワイトはグレーを狙うだろう。

ブラックにとっての最善の策は、
3人による決闘の一発目打つのではなく
2人による決闘の合図をすることなのだ。

topへ

小林慎一 16年7月17日放送

160717-07
USFWS Headquarters
自然とパイ篇

円周率パイは、円の幾何学に由来する数字だ。

円周の直径に対する比率が3より少し大きいということは
古代インドやバビロニアでも知られていた。

3.14159・・・・
現在では13兆桁以上まで計算されている割り切れない数は、
科学研究の様々な局面で顔を出す。

ケンブリッジ大学教授のハンス・ヘンリック・ステルムは
いろいろな川の長さと、水源から河口までの直線距離の比を求めてみた。

その数字は、ほとんど、円周率と等しかった。

川は常に曲がろうとする。
川はカーブの外側の流れが速いため侵食が進み
川のカーブはさらに急になる。
このようにして川はどんどん曲がっていく。

しかし、川は曲がるほどにバイパスができやすくなり
バイパスができると川はまっすぐになり
取り残された部分は三日月湖になる。

カオスと秩序のせめぎ合いの数字が
3.14からつづく無理数なのだ。

topへ

小林慎一 16年7月17日放送

160717-08

スパイと数学篇

純粋数学は現実世界には応用するのは難しい分野だか
素数理論はそれができる数少ない領域である。

1977年マサチューセッツ工科大学の
ロナルド・リヴェストのチームは
暗号に関する画期的なアイデアを思いついた。

暗号用の鍵をつくる際に、素数を二つ用意し、
それを掛け合わせて大きな非素数にする。

通信文を暗号化するには、
この大きな非素数が分かっていればよい。
一方、暗号化された文を復元するするには
もとになった2つの素数を知らなければならない。

例えば、
589になる2つの素数を突き止めるのには
家庭用のパソコンで3分もかければ
素数が31と19であることが分かる。

だが、実用化されている非素数は100桁を超えるため
世界一性能のいいコンピューターを使っても数年かかる。

年に1度、暗号鍵を変更すれば、
敵のスパイはまた計算を最初からやり直さなければならない。

topへ

村山覚 16年7月16日放送

160716-01

APOLLO 11 ウォルター・クロンカイト

1969年7月。
人類は「月」を見上げていた。
そこには2人の男とテレビ中継用のカメラを搭載した
月着陸船がいた。

アポロ11号。人類初の月面着陸という
かつてないミッションを遂行するためには
科学技術の発展だけではなく、大衆の支持も不可欠だった。
なぜなら、アポロ計画には莫大な国家予算が
注ぎこまれていたからだ。

アメリカの三大放送局のひとつCBSは
142台のカメラ、1000人近いスタッフを投入し、
32時間に及ぶ特別番組「MAN ON THE MOON」を制作。
名物キャスター、ウォルター・クロンカイトが
月面での一挙手一投足をリアルタイムで伝えた。

クロンカイトの座右の銘は「完璧に至る近道はない」。
関係者ひとり一人の想いの積み重ねが、
38万6200キロという距離をこえた。

topへ

村山覚 16年7月16日放送

160716-02

APOLLO 11 ウォルター・クロンカイト

 月面着陸は、私を、興味深くも
 非常に感情的にさせた。
あの乗り物が月に着陸したとき、
 私はことばが出なかった。
本当に、私は、何も言えなかった。

CBSイブニングニュースのアンカーマン、
ウォルター・クロンカイトは
その落ち着いた語り口と
徹底的な取材に基づいた報道姿勢が評価され、
アメリカの良心、大統領よりも信頼できる男、
などと言われた大ベテランだ。

彼は宇宙を愛し、アポロ計画に賛同していた。
もちろんアポロ11号についても、
事前の入念な取材によって
数多くの言葉を準備していたはずである。

どんな時も、どんなニュースでも、
的確な言葉で流暢に話すクロンカイトが
月面着陸の直後、言葉につまった。

沈黙は、時に、なによりも雄弁だ。

topへ

藤本宗将 16年7月16日放送

160716-03

APOLLO 11 バズ・オルドリン

1969年、アポロ11号は月面に到達した。
しかしその偉業が捏造だと主張する者もいる。

そんな陰謀論者のひとりが2002年にある事件を起こした。
アポロの乗組員だったバズ・オルドリンを待ち伏せしたのだ。

男はオルドリンに対して執拗に迫り、
挑発的な言葉をぶつけた。

 聖書に手を置いて、月に行ったことは事実だと誓ってみろ!
 行ってもいないのにインタビューや著作で報酬を得るのは
 詐欺・窃盗行為だ!

さらに男は罵声を浴びせ続ける。

 臆病者!嘘つき!盗人!

そのときだった。

当時72歳とは思えない
オルドリンの強烈なパンチが男の顎に決まったのだ。

どんなときも沈着冷静を求められる宇宙飛行士だが、
このときばかりはプライドが許さなかったのだろう。

のちにオルドリンは、こんなツイートをしている。

 もしわれわれが着陸していないのなら、
 今頃ロシアがそれを暴露しているはずさ

topへ

藤本宗将 16年7月16日放送

160716-04

APOLLO 11 アームストロング一族

16世紀スコットランドに
ジョニー・アームストロングという領主がいた。
時の王より強力とまでいわれ、
イングランドとの戦いで国を守った英雄だった。

しかしその存在を疎ましく思った王は
彼を騙して呼び出し、捕えてしまう。
わずかな手勢のジョニーに対し、待ち伏せの兵士は1万人。
このときジョニーが切った啖呵が歌として伝承されている。

 王であり 君主の身分でありながら
 嘘をついたな 卑怯者
 生涯でおれが愛するのはただひとつ
 それは正直な心根だ

時は流れて1972年。
生きのびた末裔のひとりが、
この地の自由市民として迎えられた。

ニール・アームストロング。
アポロ11号の船長にして、はじめて月に立った人類。

そのときの式典では、
400年前に施行されたまま廃止されていない
こんな法律の条文が紹介された。

「この地で見つけたすべてのアームストロングを絞首刑にせよ」

それでも王の追手から逃れ、アメリカへ渡り、
ついには月までたどりついた。
この一族は、名前の通りタフらしい。

topへ

福宿桃香 16年7月16日放送

160716-05

APOLLO 11 吉田和哉

 大切なのは、ワクワクすること。
 宇宙にワクワクするなら、その道に進もうと思ったんです。

アポロ11号が叶えた人類初の月面着陸は、
日本でも生中継され、多くの人たちが見守った。
当時8歳だった吉田和哉も、そのうちの一人だ。

アポロは彼の夢になった。
大学では工学部に進んだがその気持ちは変わらず、
「宇宙ロボット」というジャンルを開拓。
自分の手がけたロボットが宇宙へ行く日を目指して、情熱を注いだ。

そして今。
吉田はもう一度違う形で、
アポロ11号に出会おうとしている。
民間の月面探査チーム「HAKUTO(ハクト)」が来年、
吉田の制作したロボット探査機を月に飛ばし、
アポロ着陸の痕跡を探す予定なのだ。

47年の時を経て、憧れに間もなく、手が届く。

topへ

田中真輝 16年7月10日放送

160710-01

義家の勇気

今日は、納豆の日。

納豆の起源には諸説あるが、有名なものに
源義家にまつわる物語がある。

義家が奥州平定のために北上した際、
馬の食料であった、ワラの俵に詰めた煮豆が
発酵し、糸を引くようになってしまった。

兵たちが捨てていた煮豆を、
まあ待て、と義家が食したところ、
十分食べられる食料であったため、
兵糧として採用した、というのが
そのストーリー。

糸を引く煮豆を
まず食した義家の勇気もさることながら、
それを食べさせられて戦った兵たちの心情は
いかばかりだっただろう。

topへ

田中真輝 16年7月10日放送

160710-02

鉢叩き

今日は、納豆の日。

古来より、人々の暮らしの中にあった納豆。
多くの歌人もその存在を歌に詠み込んでいる。

松尾芭蕉もその一人。

「納豆きる 音しばしまて 鉢叩」

鉢叩きとは師走の夜に、手に持った鉢を
叩きながら物乞いをした念仏僧のこと。

寒い夜、暖かい納豆汁を作るために
とんとんと納豆を切っていると、
チーンチーンと鉢を叩く音が聞こえて来る。

しばし手を止めて、
寒風の中、托鉢する僧の姿に想いを馳せる。
そんな芭蕉の心の温かさが
納豆汁の香りとともに、ふんわりと漂うような
一句である。

topへ


login